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 さて、それから丸一日。

 結局昨日だけで適当な範囲を耕してみて、それっぽくなった所に市場で買ってきた種を埋めた。

 そして畑を耕すには、やはりシャベルのコマンドが活躍した。


 と言うのもシャベルの固有コマンド[掘る]をそのまま使うと、ディグという…武技?が発動する。

 突き刺した地面を中心に10センチ×10センチ×10センチ程の土をめくる技だ。

 一つだけでは微妙だが…重ねて掘るをコマンド枠に放り込むと、少しずつ効果範囲が拡大していく。

 今使える五枠全てに放り込んでみたら…大体各20センチ程度まで広がった。


 これだけで畑を耕すのはちょっと骨が折れたが…土魔法を用いての耐久回復も兼ねているので別のツールを作って作業するわけにもいかなかったしな。

 地道にコマンドを駆使してやっていた。

 つか、どこの店に行っても農具なんて置いてないっていう…

 目下自作するしか入手する手立てが無い訳だ。

 農家プレイの不遇さをここに説きたい。

 なんて事を愚痴りたくなりながら耐久力に注意しつつ、土魔法と探知で使える土魔法の基本コマンド『ダウジング』を使って作業を進めていった。


 この魔技、名前の通り地中にある石ころを一定時間探せるって魔法だ。

 非常に畑仕事と相性が良かったな。

 土の中にゴロゴロとした石が混じっていたら根菜は形が悪くなって駄目だろうし…

 なんて素人判断で石ころを見つけてはその都度掘り返してを繰り返していたら、いつの間にか土魔法も5まで上がった。

 おまけにそれなりの大きさの石も手に入ったから、今日にでも何か作ってみる事にする。


 で、話は変わるが…特定の魔法って土魔法で正解だったみたいだ。

 シャベルの固有コマンドを使っていても徐々に回復していき、今のところ耐久は200近くまで回復した。

 これだけ回復していくのであればもう数日で耐久の心配はなくなるだろう。



 それで植えた作物だが、取り敢えず簡単に初心者向けって事でフツカダイコン、ハヤイモ、ファストマトっていう成長の早い種の野菜を育ててみることにした。

 これらはどれも生育期間がゲーム内でほぼ二日のものだ。

 リアルの一日で二日分の時間が流れるから…実質一日だな。

 …と言う訳で既に収穫期間が訪れている訳だ。

 本日は早速、収穫作業から入っていくとする。


 と言っても簡単だ。

 トマトはそのままもぎ取ればいいし、根菜二種は土を掘ればいい。

 根菜はディグでやってもいいが…乱用して傷つけるのは避けたいしな。

 今回はコマンドを使わずに収穫してみる事にした。



 ・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・


 ・・・・・・


 ・・・



「メケメケメケメケメケメケ」

「トゥ!へァー!!」

「ヘイタイショー!ヤッテルカイ!」

「カウンダウン…8…7…」

「クッ!コロセ!」

「カミヨ、ワレニスクイヲ…」

「ドナドナドーナードーナー」



 今日は素晴らしい日だった。

 太陽はその光で祝福し、鳥は歌い、花は舞う。

 そして何故か、俺の収穫した野菜達は唐突に喋り始めた。


 そう…収穫が終わった作物を放り込んだ籠の中では、野菜達が自分の鮮度をアピールしようと必死になって何かを呟いている。

 どうして…こうなったんだ!?

 つーかなんで急にこいつらは喋りだしたんだ!?

 このゲームの野菜は喋るものなのか…?



「チキチキチキチキチキチキ」

「ンモウ!ヤメルンダ!」

「ヘイラッシャイ!ナンニイタシヤショウ!」

「サンバイアイスクリーム!」

「ワタシニランボウスルキデショ!リョウリミタイニ!リョウリミタイニ!」

「イノリマショウ…カミニ、セカイニ…」

「ドナードドドーナーナーナー」



 一応、鑑定してみるか…



・マンドラダイコン レア度4

 何らかの理由により多大な生命力をその身に内包したダイコン。

 生命力を得すぎて言葉まで発するようになったが、知能は低い。

 その生命力故か食べると体に活力が漲ってくる。

 生命力が減ってくると話さなくなり、只のダイコンと化す。

 早めに食べてあげよう。



・マンドラポテト レア度4

 何らかの理由により多大な生命力をその身に内包したポテト。

 生命力を得すぎて言葉まで発するようになったが、知能は低い。

 その生命力故か食べると体に活力が漲ってくる。

 生命力が減ってくると話さなくなり、只のポテトと化す。

 尚、生育過程で毒を持った個体は言葉の端々にも毒を持つ様になる。

 早めに食べてあげよう。



・トマトーク レア度4

 何らかの理由により多大な生命力を得て、その実に内包したトマト。

 生命力を得すぎてその実は言葉を話すが、知能は低い。

 その生命力故か食べると体に活力が漲ってくる。

 生命力が減ってくると話さなくなり、只のトマトと化す。

 早めに食べてあげよう。



 どうやらこの世界、菜食主義者は生きられなさそうだな。

 野菜にも知能が宿ってるって証明されちまったしな。

 …ってそういう事はどうでもいいんだ!

 問題はなんで生命力を持ちすぎたか、だ。

 心当たりがあるとすれば…この土地がそれだけ肥沃だったか、土魔法にそういう効果があるか…




 はたまた肥料がわりに愚者の堅骨を骨粉して蒔いたのがまずかったか…




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