15
さて、それから10分。
アスティが平静を取り戻すまでに掛かった時間だ。
どうやら彼女、一度ツボに入ったらいつまでも笑っているような人みたいだ。
俺の中で彼女のランクが下がったことは言うまでもない。
そんなような事を、笑われすぎて荒み始めた心で考えて過ごしていた。
「こうして武器の性能を見ると優秀だけど…やっぱ見た目のインパクトがね?」
「まぁ…いいですけど」
「いや~ごめんって!」
アスティはちょっと不機嫌そうに答える俺をなだめる様に軽く謝りながら、防具選びを再開する。
「それで、ファーマー君の要望に合う防具だけど…」
「ファルマです!」
反射的に声を荒らげて訂正する。
名前が似てるって事での冗談だろうけど、否定しないと今後農家呼ばわりされそうだ。
シャベルを持って否定しても説得力はないけど…一応な?
「あ、ごめん…」
「え…いえ…」
えっと、ガチの奴…?
普通に間違えた感じで謝られると…結構傷つくんだが…
「えっと、それで…とにかくこれなんかどうだろう?」
なんて落ち込んでいる暇もなく、割と強引な話題転換の末、ワンセットの防具が差し出される。
「えっと、鑑定してみても?」
「性能を見るなら、値札から確認出来るよ?」
「あれ?あぁ本当だ」
確かに値札からこの防具の詳細が確認できる様になっている。
確かに一々防具を選ぶにしても防具の性能が分からないんじゃ鑑定が必須になるわな。
商品にこういうシステムがあるのも納得だ。
・フォレストワスプアーマー レア度3 作成評価9
カテゴリ:鎧
基本防御性能:41
耐久:570/570
特殊能力:状態異常軽減Ⅱ:毒・麻痺
状態異常悪化Ⅲ:魅了
スタミナ消費軽減Ⅰ
空を飛ぶ中型の蜂の素材を用いた鎧。
軽量の素材を用いているお陰で非常に動きやすい。
作成者の腕により、防御性能と素材の持ち味の両立がなされている。
…何ということでしょう。
防御性能がたったの2しか無い初心者用ジャケットと比べて、20倍の防御性能になるではありませんか。
性能の高さだけではありません。
各種パーツにも工夫が凝らされており、機能性とデザイン性が調和した一品になっております。
特に胸当て部分はいくつもの甲殻を貼り合わせて蜂の顔が表現されており、匠のこだわりがうんぬんかんぬん…
自分の劇的なビフォーアフターをイメージしながらそんな事を考える。
で、そして気になるお値段はなんときっちり7万ミルス。
ぶっちゃけて、超欲しいな。
しかし、問題はある…
「う~ん…似合うか…?」
こう、どこか乱暴そうなデザインと言うか…攻撃的な印象を受ける鎧である。
周囲には俺が鎧に着られてる様な印象を与えそうだ。
「ワイルドな感じとか、危険を感じるデザインは君にピッタリだと思うよ?」
とか考えていたら、横からアスティさんのアドバイス。
俺、一体どういう風に見られているんだろうか…?
ちょっと聞いてみたいような、聞いてみたくないような…