最終話
十二人目の犠牲者はボクではなくて横下蜜絵だったことにボクは困惑した。
信じられない出来事だった。彼女はこの世界を自由に作りかえられる小説家で漫画家で映画監督で絵本作家で神なのだ。
彼女がおそわれるということはあり得ないのだ。あり得ないのだ!
蜜絵のくちから目から耳から鼻から穴という穴から緑色の紐が飛び出している。
ロイコクロディウム 「死んだのは茂津善三です。あたいは生きておりました。油断大敵。ぜったい来るでしょ、あたいの出番。酸っぱい魅力ね。それではさようなら」
さようなら、だと? 主人格を失った蜜絵の肉体はどうなるのだろう。メリヤの言葉を信じるならば、思い当たることはひとつ。
ボクは、突進した。
ロイ…………………………め上げ………をとめ…。………………。………亀裂が走…、暗……………くちを……た。……はブラ………ール………。す…て…呑…………………。…間の小片が次……吸…………れて行…。…ク…抗…た。……に…抗し…。それ…も、肉…………く精神……………………く。意…………く。視……ぼやけ…。…………、…死の抵抗……な…く、……の魂…………ら離れてし………。
首を切られ横たわる禿げたおっさんがいる。腐りかけた猫の死体が三つ。食べかけのナポリタンにはカビが生えている。握られている血まみれの包丁を汚いテーブルの上に置き、ボクはくさいバスルームへ移動した。
手を洗い、鏡を覗きこむ。
虎刈りの頭。大きな眼に小さなくちと鼻。その鼻の穴から、緑色の紐が飛び出している。ボクはそれを引っ張った。ずるずると、ずるずると、長い紐を引っ張る。出てくる。延々と伸びる。
七、八メートルはあろうかという紐をすべて引き抜いたとき、それを足元に叩きつけ、おもいっきり踏みつぶした。
ダイニングへ戻り、テーブルの前に腰をおろす。その瞬間、とてつもない孤独感にさいなまれた。震える小さな身体を短い腕で抱き、ボクは、泣いた。待ちうける未来は、わずかな光も射さない。
震えることしか出来ず、眼は自然とテーブルの上の赤く光る刃物に移動する。手を伸ばしかけたとき、このどうすることも出来ない苦しみを和らげる方法を、ボクは思いついた。
「あれ……ここは?」
黒山メリヤは、カビ臭く、死臭ただよう暗い部屋を、見渡した。
了
途中、投稿できなくてすみませんでした。諸事情により、しばらくお休みさせてもらいます。
執筆をやめるわけではないので、いずれまた、お会いしましょう。
応援、ありがとうございました。




