ラウラちゃんと兄さん
最近、ラウラちゃんの気分が沈み気味なでさ。心配なんだ。
僕が学校や畑であった楽しい話をすると笑ってくれるけど、心の奥の方はどこか遠くにあって、残念だけど僕には届かなくて…。
ラウラちゃんが笑うと、ふわっと雰囲気が柔らかくなって、僕は大好きなんだよ。
心の底から笑うとき、どんなふうになるんだろう。
「ママ、ラウラちゃん、まだほとんど食べてなかったよ」
「あら、そう…。ありがとね、アム。あとで様子見に行ってみるわ。さぁ、あんたはそろそろ歯を磨いて寝る支度する時間よ」
心配する僕の頭をくしゃくしゃっとなでて、ママは微笑んだ。
ママの温かい手は、いつも僕らの心を励まして明るくしてくれる。
顔を見合わせてにっこりしてると、家の表に馬が入ってくる音ががした。
「マートン!!兄さんだ!!」
駆け寄った窓越しの暗闇の中に、大好きな兄さんの馬が見えた。
僕はもう、兄さんが家へ入ってくるのを待てなくて、外へ飛び出していった。
「兄さん!!」
馬小屋の扉を閉めている兄さんの背中に飛びつく。
「おお?アム。まだ起きてたのか。元気にしてたか?」
ちゃんと僕を落とさずにおんぶして、兄さんは大きな手で抱きつく僕の頭をなでてくれた。
「元気だよ!でも、ラウラちゃんが元気ないんだ。今日はご飯もほとんど食べてないよ…」
「…そうか。心配だな。そうやっていつも気にかけてんだな。お前は優しいな、アム。えらいぞ」
戸口のところでにもつ荷物と一緒に僕をお僕を下ろした兄さんに、ぎゅっと抱きつく。
「マートン、お帰りなさい。まぁ長い間大変だったわね。ご苦労様。シチューあっためる温めるわね」
後ろからママが来て、2人は僕を挟んでただいまと労いのキスをした。
「支度ができるまで、お風呂に入ってなさい。アム、あんたは寝る支度よ」
「そうさせてもらうよ。行くぞ、アム」
その夜、僕がトイレに起きたとき、ラウラちゃんのいる部屋からシチューの香りと、話し声がした。
何を話してるのか分からなかったけど、兄さんの声は優しくて、ラウラちゃんはきっと大丈夫だと思った。