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―9


 まるで、戦争。魔物討伐一行は、初めての苦戦を強いられていた。先日の生き残りと別の巣の捜索をしていた私達を、魔物達は待ち構えて襲撃したのだ。右を向いても、左を向いても、後ろを向いても、魔物がいる。その中で前衛のレーガとレムネーとジオスが戦う。あまりにも敵が多すぎた。

 俊敏なレーガも攻撃を避けては、魔物にぶつかってしまっては攻撃を食らう。構え直す暇も場所もないほど、数えきれないほどの魔物がいて、まさに群れ。レムネーはスペースを確保しようとしたが、ひしめく魔物を押し退けることがやったの様子だ。レーガとレムネーは協力して背中を守り合うけれど、明らかに不利だった。

 ジオスはまた一人で戦っている。水の魔法を駆使して、攻撃を仕掛けて切りつけるけれど、魔物の攻撃を食らう方が多かった。前も後ろもわからなくなるような戦いだろう。見ているだけの私も、混乱してしまいそうだ。

 後衛のポルとロサと私とメラマヴロは、背を守るために崖を背にした。ポルは援護が出来ずにいる。レーガ達は攻撃を避けるために動き回っているから、遠距離魔法を放てない。レーガ達が遠距離魔法のために魔物から離れれば、崖の私達に向かってきてしまう可能性がある。だから、混沌とした中で戦い続けていた。倒しても倒しても、ダメージは多く受けてはまた戦う。


「うおおおっ!!」


 レムネーが盾になって魔物達を引き付けた隙に、レーガが光の剣の魔法を発動させる。レーガを守るように宙に三つの光の刃が現れ、剣とともに魔物に突き刺す。ボロボロでもレーガは四匹の魔物を仕留めた。それでも、まだいる。魔物の死体だらけのそこは、足場が不安定だ。休憩すらも出来ない。またレムネーが盾になっている間に、レーガは魔法を使おうとしたが。横から魔物がレーガを殴り付けた。腕で歩行するその魔物の太過ぎる腕で殴られたレーガは、地面に叩き付けられたきり動かない。


「レーガ!! ぐっ!」


 ジオスがレーガに気を取られてしまい、背中に魔物の刃を食らった。魔物は容赦なくレーガに向かう。


「ポル!」


 咄嗟に私はポルの背中を押した。飛び出したポルは、呪文を唱えてレーガの前に鋭利な岩を突き出させて壁を作る。


「ロサ、早く治癒を! ポル、レムネーの援護も!」


 ロサの背中も押して叫ぶ。出発前に魔力のない私を守るようにと言われていたけれど、今はそんなこと気にしている場合じゃない。レーガの治癒が優先だ。

 ポルはレーガの前に立ち、岩の壁を強化しながらレムネーの前にも壁を作る。這い上がろうとする魔物を、レムネーは真っ二つにした。ロサはレーガの治癒を始める。相当の深傷で時間がかかっているようだ。

 ジオスに目をやると、防戦一方状態。多くの魔物になぶられている。ポルの壁にいけば、体勢を整えられるのに。ジオスは戦う。


「メラ。ジオスを助けて」

「……」

「私なら大丈夫でしょ!」


 私から離れないメラマヴロは躊躇するけれど、私なら大丈夫。後ろは崖、前は壁。壁からは随分離れているから、魔物の手は及ばない。ここから離れなければ、私は安全だ。レムネーもポルも目の前で手一杯。ジオスを助けられるのは、メラマヴロだけ。メラマヴロは一度頷くと、素早くジオスの元へ。メラマヴロの剣が、魔物の首をはねる。目を狙って動きを鈍らせた。

 ジオスはその場に崩れ落ちるかのように、膝をつく。地面に剣を突き刺して、唇を動かす姿から、長い呪文を唱えている。青い光が舞い始めたけれど、無防備なジオスに丸い身体の魔物が突進した。飛ばされて崖に落ちてしまうと焦り、私は駆けて受け止める。


「ジオス! ジオス!」


 腕で支えたけれど、ジオスはもう気を失っている。私の手が真っ赤になった。背中の出血が酷い。レーガが終わったら、すぐにロサに治癒してもらわなくては。

 メラマヴロに目をやる。メラマヴロは私に強く頷いてみせると、戦い続けた。ジオス側の魔物はメラマヴロが引き付けてくれるけれど、長引けば深傷を追う。そっちに壁を作ってほしいとポルに言おうとしたけれど、ポルの壁が崩れた。レーガを殴り飛ばした大きな腕の魔物が、地面まで叩き割る。その亀裂が私の元まできたかと思えば、その場が崩壊した。崖から、落ちる。頭が理解した瞬間に、ジオスを押し退けようとしたけれど、手遅れだ。ジオスと一緒に落ちてしまう。ジオスの身体を片腕で抱き締めて、二人の体重でナイフを深く突き刺した。それを握って落下を防いだ。でも私がいつまでも男一人を持って宙ぶらりんでいられるわけがない。片腕では支えきれなくなりズルリと落ちたけれど、なんとか袖ごと手首を握り締める。


「ジオ、ス……ッ」


 まだ気を失っている。私一人なら這い上がれるけれど。お願い、今だけ起きて。魔法を使ってほしい。戦闘中のメラマヴロ達の助けは期待できない。落ちたことにも気付いていないかもしれない。

 私にできることはなんだ。私に使える魔法は、エレクドラーロの召喚のみ。でも、昨日魔力を使い果たしてしまい、今使えるほど魔力が回復したかどうかもわからない。下に目をやれば、森だ。高さはビルの十階だろうか。私一人なら絶壁を滑り降りて死ぬことだけは避けられそうだけど、ジオスには無理だ。落ちればジオスは確実に助からない。腕が軋む。引きちぎれそう。戦闘が終わるまで粘るなんて、私には出来ない。ジオスも目を覚ませない。出来ることはなんだ。

 刹那で考えが巡ったあと、私は賭けに出た。ナイフから手を離して、絶壁を蹴ってジオスを抱き締める。念じた途端にドラゴンが現れた。昨日の半分のサイズ。でも地上に降りるだけなら十分。翼を一振りして落下を減速するエレクドラーロが、持つことを祈った。でもエレクドラーロの身体が透けて、琥珀色の光を貫通したあとは地面が迫る。ぶつかってしまう。ジオスを庇ってきつく抱き締める。次の瞬間、私の意識が途切れた。



 目を開いたら、最悪な気分。もう一度気を失いたかったけれど、都合よくいかない。横たわった身体が動かなかった。錨を抱えているかのように身体は重い。吐きそうな気持ち悪さが渦巻く。草を擂り潰した香りがするせいか。ずいぶん長く気を失っていたようで、森の上の空は真っ黒く見えた。目の前には焚き火。その向こうに膝を抱えて顔を伏せたジオスが見えた。どうしたのかと確認のために起き上がろうとしたけれど、痛みが走って動けない。どこが痛いのかは、わからない。


「動かない方がいい」


 パチンと火が弾く音の向こうから、ジオスの声。


「応急措置はしましたが、ロサの治癒が必要です。動かないでください。メラマヴロにどやされるのは僕です」


 首も動かせない。でもブラウスの左袖は破かれていることはわかった。気を失う前に左肩から地面に激突したことを思い出して納得する。たぶん、ジオスが薬草で痛みを取り除いて手当てしてくれたのだろう。反対側に目をやれば、絶壁。焚き火の明かりは届かなくて、見上げると怪物が聳えているようにも見える。メラマヴロ達がここに降りる術はないだろうから、遠回りをして合流しようとしている最中だろう。私達は待っていればいい。なんとか生存できて、ホッと息をつく。


「背中の怪我は? 大丈夫ですか?」


 ジオスはボロボロのまま。上着は脱いでいて、露出した色白の腕も赤い線がちらほら見えた。束ねている美しい青い髪も、乱れている。背中の手当てなんて出来ないだろう。起き上がって手当てしなくてはと思ったのに、顔を上げたジオスがギラリと睨んだ。久しぶりのジオスの睨みにたじろぐ。気持ちだけ。


「戦えない上に動くことも出来ないくせに、他人の心配ですか? 戦ってもいないのにあなたの方が負傷している、全く余計なことをしてくれたっ。二度とでしゃばらないでくださいっ!」


 徐々に声を上げて怒ったジオスに、ギョッとしてしまう。


「ご、ごめんなさい……」


 ジオスが怒鳴るほど怒らせてしまった。反省して謝罪をする。確かに指示までして、でしゃばり過ぎた。私は足手まといの報告係。余計なことをしちゃだめね。


「……何故、謝るのですか?」


 綺麗な顔を歪めたまま睨むジオスの言葉に、私はわからなくなる。怒ったなら、謝罪を求めていたのではないの。


「私が……でしゃばってしまったから」

「あなたはバカですか! 理不尽に怒りをぶつけられているとわかっていないのですか!?」

「……」


 また怒鳴るジオスに、私は目を見開く。


「命を救ってやったのは自分だと言い返せばいいじゃないか! 礼を言えと何故言い返さない!?」


 ジオスが何故こんなにも怒鳴るのか、よくわからなかった。でも返す言葉は浮かんできたので、それを言うことにする。


「それを言うほど、私は優しくない」

「っ!」


 ジオスは肩を震わせた。たぶん、これは酷い言葉なのかもしれない。でも優しくないのは、本当のことだから。


「あなたが間違っていると教えるほど、優しい人間ではないし、怪我で動けないなら尚更。わかっているなら怒鳴ることは止めてください。誰でも好きではないでしょ」


 言い終えたあと、罪悪感に襲われる。今のはあまりにも冷たく言い過ぎた。この世界に来て、こんな声は初めて出しただろう。

 背けてしまった目を戻せば、ジオスは辛そうに自分の髪を握り絞めて俯いていた。なんだか泣いてしまいそうで、私は罪悪感に押し潰されそう。


「……申し訳ありませんっ……僕はただっ……救われることに、なれていなくて……」


 弱々しく告げられた言葉も、私にはよくわからない。そのまま黙り込んでしまって、顔も見えなくなった。罪悪感で窒息してしまいそうな私から、話し掛けてみる。


「……手当てを、ありがとうございます」


 ジオスはまたビクリと震えたけれど、顔を上げないし、返事もしてくれない。また居心地の悪い沈黙。ジオスになにか事情があるとは察することは出来るけど、よく知らないから迂闊なことが言えない。ジオスについて知っているのは、レーガの幼馴染みだと言うこと。ジオスのためにレーガは剣を振るって生きてきたこと。


「他の会話、しますか?」


 ジオスは黙っていたいのか、それとも他の会話をしてまぎらわせたいのか。訊ねてみれば、漸く顔を上げて返事をしてくれた。はい、と。


「昨日聞いたんです。レーガはあなたのために剣を振るって生きてきたと。その話を聞いてもいいですか?」

「……あまり、僕の口から話していいものではないです」


 ジオスは焚き火を見つめる。なにかを思い出しているような瞳だった。


「ですが……機会があれば呆気なく話すでしょう、レーガのことだ。あなたのことも、ずいぶんと気に入っていますしね」


 次に呆気なく告げられたことに、私は驚いてしまう。


「レーガは元奴隷です」


 ジオスは、続けた。


「一部の地域では現在も奴隷を売買されていますが、十五年前は酷いものでした。五歳のレーガを解放したのは僕です。それ以来、忠誠を僕に誓い、互いに剣の腕を磨いて育ってきました」


 それが、ジオスとレーガの絆。この世界にも奴隷制度があったことは、すごく残念でならない。レーガはそんな過去を持っているのに、無垢に笑う。前向きに生きて、胸を張っている。だからこそだったのだろうか。自分が主役だと思って生きろ、と言ったのは。


「我々は敵が誰かもわからない場所で育ちました。僕が背中を預けられるのは、レーガだけ。……そういう生活をしていたから……」


 救われることになれていない。だから、ジオスは一人で戦う。レーガだけを信じて剣を振るう。他は疑う。疑心が拭えない。それはジオスの鎧だろう。生きていくには必要な鎧。

 どんな場所なのか、情報が足りなくて想像もできないけれど、ジオスの顔には苦痛が浮かんでいた。でも、自嘲気味に吹き出す。


「なのに、レーガは手放しで人を信用する。信用をしない僕よりも、レーガの方がリーダーに向いていると判断をしました。人間は何故、こうも順応能力が高いのですか? あなたも、この世界に来てまだ半年だというのに、不自由なく言葉を使い、人間の国王陛下に報告書を送っているなんて……」


 ジオスが笑うから、私も笑う。


「言葉を覚えたのは一ヶ月です」

「なんです? 一ヶ月? 一ヶ月でどうやって……」

「塔の部屋にこもって、専念しただけです。陛下に説明と感謝を伝えるために、必要でしたから。物語を書きながらだと尚更覚えが早くて……楽しかったですよ」


 ジオスが驚きながらも感心してくれるから、ちょっと嬉しくなった。それとメラマヴロから学んだことを思い出し笑いをする。


「秘宝エレクドラーロに選ばれるだけはありますね……」


 首を左右に振りながら、ジオスはため息のように呟く。


「こんな過酷な旅に送り出され、忌み嫌われようが笑みを保ち、泣くこともなく弱音を吐くこともなく……僕に怒りをぶつけられようとも毅然としている……。僕はあなたを盗人と疑っていたのに……救うなんて」

「ああ、それは身体が自然と動いて」


 冗談を言ったら、ジオスは私を丸めた目で見た。なにか地雷を踏んでしまったのだろうか。不安になった。でも、ジオスは吹いて笑い出す。初めて、目の前で見たジオスの笑顔。綺麗な顔立ちだけあって、魅力的だ。


「幼い頃、レーガも同じことを言って僕を何度助けたことやら……」


 レーガにしか向けない柔らかな笑み。レーガは本当に、心が強い人だ。きっと幼い頃から、笑顔は変わっていないのだろう。思い浮かべると、口元が緩む。


「ラメリー」


 ジオスに名前を呼ばれたのは、初めてだった。


「身を呈して救ってくれたあなたに、心から感謝を申し上げます」


 腕をついて頭を下げる姿は、まるで騎士のよう。


「……ジオスは、優雅ですね。私だっていつも守られているのですから、そんな頭を下げないでください。仲間じゃないですか」


 優美に見えたのは顔立ちと姿勢と身なりかと思ったけれど、言葉も仕草も気品がある。


「……あなたは……」


 ジオスは不思議そうに目を細めた。


「……我々、一行のことをなにも知らされなかったのですか?」

「……はい。私と歳が近い若者であり、優れた者……とだけ。陛下は私が知ったものや見たものを書いてほしいと仰ったので、たぶん先入観を抱かないように、ですかね」


 一行のことを知ったのは、この旅に加わってからだ。レーガは二十歳、ロサは二十二歳、ポルは二十三歳、私より年上のジオスは二十五歳、レムネーが二十八歳。メラマヴロは二十七歳。皆の年齢に意識が向いたけれど、焚き火に枝を入れるジオスに戻す。


「……では、あと二人いることは、知らないのですか?」

「え? 一行の仲間が、他にもいるのですか?」

「……行動をともにしない者を、仲間と呼べるかどうか……」


 焚き火に消されてしまいそうなほどの声を漏らす。ジオスの綺麗な顔に、嫌悪が浮かんだ。気がする。瞼が重くなってきてしまう。


「知らなくとも助けた、か。……怒鳴ったことも、お詫びします。……どうか、陛下には報告しないでください」


 クス、とジオスは私に笑いかけた。私も吹き出したら、痛みが走ってしまい呻いてしまう。すると、ジオスは布を持って私の元に来た。


「崖から落ちたら、ジオスと打ち解けたと報告します」


 笑って震えることを我慢して言えば、私の横でジオスはまたクスッと笑う。布の中には薬草があるようで、鼻にツンときて私はしかめる。ジオスは痛み止めを追加してくれたみたいだ。


「……月水草(つきみずそう)、ですか?」


 図鑑で見たことを覚えている。月光を浴びて成長する植物だ。痛みを取り除いてくれる。


「おや……この薬草はあなたの世界にも? それとも言葉とともにこの世界の植物まで覚えたのですか?」

「今書いている物語に活用するためにちょっと図鑑を見ただけです。紙に触れるのが好きで……」


 魅力的なジオスの笑みを見上げるのは、負傷した甲斐があるほど素敵だ。怪我のせいか、夢心地。何でも話してしまいそう。それはジオスも同じかもしれない。こんなに話したのは初めて。こんなに近付いたのも初めて。まさかこんな穏やかに話せる時がくるなんて。もしかして、夢かもしれない。


「眠ってください。レーガ達は無事で、日が沈む前に上でしつこいほど叫んでいました。夜明けにはあちらが見付けるでしょう」


 そう言えば、皆の無事を勝手に確信していた。改めて無事だと聞いて、気が緩む。私の手当てはジオスがしてくれたけれど、ジオスの方は大丈夫だろうか。出血が酷かったはず。また訪ねる前に、ゆっくりと、ゆっくりと私は眠りに落ちた。

 感覚的にはすぐに、目を覚ます。焚き火が弾ける音のせい。ジオスは私の左の斜め上にいて、片膝を抱えて座って眠っている。私の左肩はまだ動かない。右腕を上げれば、左が痛んだけれど、ジオスに触れようと伸ばした。でも、パシンと掴まれて拒まれる。痛みが走って顔が歪む。


「……すみません」


 鋭い眼差しが消えて、ジオスは私の右手を地面に置いた。


「あなたの怪我は?」

「もう血は止まりました、ご心配なく」

「……そう」


 互いに囁くような声で話す。ジオスの怪我は大丈夫。


「横になったら?」

「いいえ……見張りが必要ですから……」


 危険はあると警戒してくれている。戦いのダメージも残っているから、休みたいはずなのに、申し訳ない。そう思いながら、また目を閉じた。

 次に目を開いた時、薬草よりも煙の匂いが鼻に届く。焚き火を見ようとしたら、ジオスがそこにいた。焚き火の明かりがないから、消えたのだろう。ジオスはまた気を失って倒れてしまったのかと思った。右手を伸ばして触れてみると、青白い頬は冷たい。でも息は正常に感じた。焚き火は起こせないけれど、私の上に被さった上着を痛みをグッと堪えて、慎重にジオスの肩にかける。呻く代わりに、深く息を吐く。元の楽の姿勢に戻って、やっと気付いた。ジオスの顔が青白く見えた原因は、夜空。満天の星空、では足りない。隙間がないほど、星がたくさん輝いている。ラピスラズリー色で、淡く淡く照らしていた。


「あなたは、優しい……」


 囁き声が、私の耳に吹きかかる。横目で見たけれど、ジオスは目を開いていない。青い髪に包まれた美しい寝顔。この星空と、どっちを見つめるべきだろうか。迷ったけれど、瞼が落ちるまで、ジオスを見つめて眠りに落ちた。




20150818

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