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 重い空気だ。焚き火を囲うと賑やかになるものなのに、今夜だけは静まり返っている。

 例外は、二人だけ。


「んー、美味い」


 火の光を浴びているせいか、温かい笑みに見える容姿端麗の王子二人は、ご機嫌な様子で食べていく。

 約束通り、私が作ったシチューをたいらげていった。

 他の皆はというと、少し距離を置いて、双子王子を警戒しているようだ。

 ぜんっぜん、仲間といった風には見えない。

 当の本人達はさして気にした様子はなく、私のそばを陣取り、私にだけ話しかけた。

 懐柔には、成功したのかな。いまいちわからなくて、私も警戒した。


「ラメリー、今日も添い寝してい?」


 ロキがいきなり言い出したので、私は口に入れた人参を吹き出しかける。

 レムネー以外が、ギョッとした目を向けてきた。


「ね、ねね、寝具が、寝具が二人分しかなかったからっ!」


 慌ててしまったけれど、少し考えればわかってくれるはず。


「自分の寝具があるでしょ!」

「今夜は冷え込むし」

「ラメリー、あったかいし」


 双子王子は他の反応なんて微塵も見えていない様子で、ケロッと言う。すると、にやりと意地悪な笑みを浮かべた。


「続きをしようぜ?」


 またもや、意味深な発言。


「誤解を招くことを言わないのっ」

「誤解? ククッ」

「その通りなのに」


 そう言って、ロキとロクは自分の唇をペロリと舐めた。


「いい加減にしないと、怒るわよ」


 口元を引きつらせる。


「また揺りかご作る」

「一緒に寝ようぜ?」


 にっこりと、まだ誘ってくる二人。

 緑の魔法の揺りかごは、魅力的だけれど、警戒心が高まるので私は睨み付けながら身を引く。

 二人は迫ろうとしたけれど、そこで私の身体が持ち上げられて引き離された。メラマヴロだ。


「クロロキ殿下、クロロク殿下。おふざけが過ぎれば、私がお相手します」


 メラマヴロが間に入り、王子相手に言い放った。威圧的で、今にも捩じ伏せてしまいそうだ。


「あ?」

「騎士のくせに」

「誰に向かって言っているんだよ」


 そんなメラマヴロの声に動じることなく、双子王子は睨み上げた。


「私は国王陛下の命で、ラメリーの護衛をしております。例えクロロキ殿下とクロロク殿下であろうとも……先程の争いでラメリーに傷がつこうならば、その腕を切り落としていました」


 メラマヴロは躊躇なく、言い放つ。


「容赦はしないことを、お忘れなく」


 剣を握り締めて、メラマヴロはまた威圧的な声で双子王子に告げた。

 メラマヴロの実力をよく知っているようで、双子王子は睨みつつも身を引く。

 おお、メラマヴロ、すごい。かっこいい……。

 メラマヴロのおかげで、双子王子のお誘いは終わり、安心して眠れた。



 夢を見る。また琥珀色のドラゴンが私に寄り添っていた。私の目の前に、あの猫が歩いている。音もなく、気配もない。けれども、私には見えている。

 深緑色の猫は、財布のようなものをくわえた。この世界に革の財布なんてないから、革のブックカバーに見える。それはなんだろう。

 気になった私は、目を開いた。そこにいたのは、メラマヴロ。私の方を向いて眠っているメラマヴロだ。

 いつもは一人分、空けて眠っていた。私の方が寝返ってメラマヴロに近付いてしまったらしい。

 メラマヴロが目を開いたら、見惚れてしまいかねないので、慎重に寝返りを打って離れる。

 メラマヴロは些細な物音にさえ、反応しそうなタイプ。ゆっくりゆっくりと離れたあと、私は起き上がる。

 まだ薄暗い日の出前。

 朝仕度を済ませてしまおうと私は、近くにある池まで行って、顔を洗った。

 そこに座り込んで、三つ編みをほどいてブラシを通す。


「おはようございます、ラメリー」

「あ、おはよう。ジオス」


 声をかけて驚いたけれど、後ろから歩み寄るジオスに挨拶を返した。

 ジオスも隣で顔を洗う。水も滴る水の民の王子様だ。朝から、麗しい人。


「よかったら、僕がとかしますよ」


 ジオスは柔らかく微笑むと、私の手からブラシを取った。取り返す気は起きず、そのままとかしてもらうことにする。


「ラメリーが髪をおろした姿……初めて見ます。美しい髪だ」


 横から私の髪を手に取るジオスが褒めてくれるけれど、ジオスの方が綺麗だと思う。


「……あなたが怒る姿も、初めてみました」

「うっ……みっともない姿を見せてしまい、申し訳ないです」

「謝ることはありませんよ」


 怒り狂ったところを見られたかと思うと、恥ずかしすぎる。俯くと、ジオスは笑った。


「ただ……。ラメリー、一晩過ごした時に話したことを覚えておりますか?」

「ああ……あの」

「しぃ……」


 答えようとしたら、ジオスの指が唇に押し当てられる。


「彼らは弱味に関して耳がいい……。どうか、僕の弱味を口にしないでください」


 そっと、耳に囁くものだから固まる。頭の中で、その言葉の意味を考えることに意識を集中した。

 彼ら、とは双子王子。ずいぶん離れているのだから、聞こえるはずないと思う。

 ジオスが口にしてほしくないのは、崖から落ちて身を庇った私に八つ当たりしたこと。あの時私は、ジオスを叱るほど優しくないと言い返した。


「彼らのことは……怒るのですね……」

「優しさじゃないよ。嫌なことを言われて、爆発しちゃっただけ……」

「……彼らのために、怒っているように見えましたよ」

「そうかな?」


 悪魔な双子を捩じ伏せることだけが頭にあったのに、ジオスは私を買い被りすぎ。


「……妬けてしまいます」

「え? 怒られたいってことなの?」

「そうとも言いますが……遠慮がないということが羨ましいです。僕には、遠慮しているでしょう?」

「そう……? 王子様相手に、髪をとかしてもらうのは、遠慮なしだと思うけれど」


 王子様に対する接し方じゃない時点で、遠慮はないと思う。


「……大丈夫ですか?」


 そこでジオスが、私の顔を覗き込んだ。


「なにがですか?」

「元気がないですし、合流してから……一度も執筆している姿を見ていません」


 指摘されてしまい、私は顔を歪ませる。エクドラの執筆どころか、報告書も書いていない。


「書けない……というか、書きたく……ない……」



 書きたくない。そう口にしてしまうのは、嫌だった。認めてしまいたくなかった。だから、膝を抱えて顔を伏せる。


「……どうしたのですか?」


 ジオスは手を止めると、髪を撫で付けて顔を上げさせようとすた。でも、私は顔を上げられない。泣いてしまいそうだったからだ。


「……クロロに、無神経なことを言われたのですね? あなたのことですから、物語に関することですね」


 見事に言い当てるものだから、堪えた涙が溢れそうになり、私は両手で顔を覆った。

 すると、昨日のようにアクアマリンのような香りに包まれる。ジオスの腕の中。


「じ、ジオス?」

「ゆっくりでいいです……話してください」


 急かさずに、待ってくれている。戸惑うけれど、ジオスの優しさにじわりと涙が込み上がる。


「……傷付く、こと、言われたら……その物語に触れる度に、思い出して……嫌な気分になるから……離れようとしちゃって……逃げちゃうの」


 詰まりながらも、涙声で言う。

 たぶんきっと、逃げてしまうのは愛が足りないんだ。だから、葛藤をする。それに時間がかかってしまい、膝を抱えて俯く。


「……一体、あの二人はなんと言ったのですか?」


 価値がないのだと言われた。あまりにも酷い言葉。口にするなんて出来なくて、涙が溢れた。

 震える肩を、ジオスがきつく抱き締めたその時。

 ジオスが池の中に落ちた。

 私も落ちかけたけれど、太い蔦が私のお腹に絡み付いてしっかり支えられている。

 緑の魔法。双子王子の仕業だとすぐに理解した。


「それはちゃんと責任とるからさぁ」

「こんな奴に泣きつくなよ。ラメリー」


 腕を持たれて立たせられる。

 私は凍り付いた。水も滴る水の民の王子様は、冷たい眼差しで双子王子を睨んでいるからだ。

 たちまち、彼を濡らす水滴が、左の掌に集まり、球体が出来上がった。


「酷い言葉を放って、傷付けたくせに……身勝手ですね」

「慰めるふりして抱き締めてんじゃねーよ」

「ふりではありません。その手を放しなさい」

「あ? さもないと、水鉄砲を撃つとでも言うのか?」

「先に仕掛けたのはそっちです」


 一触即発。

 ジオスの手に持つ球体は、爆弾と同じ。双子王子だっていつでも魔法を仕掛けられる。恐ろしい空気。


「やめなさい、二人とも。怒るわよ」


 双子王子が悪いと私はまだ涙目で睨み付ける。そして腕を振り払って、放してもらった。


「ジオス、大丈夫っわ!?」


 ジオスを池から引き上げようと手を差し出したのに、指先が触れただけで掴みそびれた。双子王子が引っ張ったからだ。


「こら!! ロキ! ロク!」


 今度は声を上げる。二人に関して、沸騰点が低くなった。

 何故か二人に嬉しそうに目を輝かせる。その原因は、ロキとロクの顔を見ながら名前を呼んだからだろうか。


「本当にわかってないね! 人を怒らせるのは止めなさい!」

「ラメリー」


 向き合って叱りつけようとしたら、ロキとロクが顔を近付けてきた。

 にんやり、と企んだ笑みに、私は身を引く。


「いいのかよ?」

「ジオスに、あの小説バラされても」

「っ……!」


 囁かれたそれに、私は固まってしまった。

 ジオスを連想してしまう魔法使いとの恋愛小説。日記に挟んだそれを読まなかったはずなのに。まさか、寝ている間に読んだのか。


「じゃあ話しちゃおう」

「いやあぁあっ!」


 双子王子が声を重ねて、ジオスの方に一歩踏み出した。

 私は悲鳴を上げながら、二人の腕を抱き締めて引き離す。


「! どうしたのですか? ラメリー」

「なな、なんでもないよ! ご、ごめんね! 私のせいで」


 ジオスから距離を取りつつ、私が代わりに謝る。


「はぁ……弱味を握られたのですね。彼らの手です。やはり、ともに行動はできませんね」


 またすぐに把握したジオスは、肩を竦めながら池から出た。


「みーつあーみーのー」

「ひやあっ! 大丈夫だから、ジオス!」


 ジオス似の青い三つ編みの魔法使いのことを言いかける双子王子の腕を引っ張り、ジオスが更に離れる。

 ジオスは怪訝に二人を睨みながらも、追わないでくれた。


「三つ編みにするんだろ?」

「ほら、座れ」


 双子王子に肩を押されたかと思えば、ポスンと柔らかいものに座らされる。キノコの椅子だ。


「君達は本当に懲りない子だね……」

「おいおい、そう簡単には変わらないぜ」

「でも、傷付けたお詫びはするから」


 ケロッと言い切る双子王子は、私の髪を手に取る。


「ごめんな」


 私の顔を覗き込んで謝った。眉毛を下げて、私を上目使いで見つめる。

 まぁ、確かに。コロッと更生するわけがない。その悪癖をゆっくりと直させないといけないだろう。


「悪いことをしない心掛けをしてください」

「はぁい」

「……もう」


 子どもみたいな返事をする二人に、ため息をつく。そのまま、髪を整えてもらうことにする。

 ふと、気付けば、一人が後ろで三つ編みをしていた。片割れがいなくなっている。


「ラメリーは、いつも身近な男との恋愛小説書いてるの? それとも、実体験?」


 ふぅ、と左耳に息を吹き掛けられた。

 震え上がった私は、逃げようとしたけれど、髪が握られている。後ろにいるのは、間違いなくロキだ。


「なぁんか、リアルだったな。ジオスに実際にやられたわけ? 本棚に押し付けられたり」


 ロキは熱っぽい声で囁き続ける。


「――とろけるようなキス、したのか?」


 ぞわぞわする。唇が近すぎて、逃げたい。でもしっかり掴まれていて、逃げられなかった。

 逃げられないなら、ロキの顔を押し退けるまで。


「想像だし、ジオスに思えるのは偶然!」

「ふぅん。……想像でここまで書けちゃうのか、すごいな」


 あっさり離れて、三つ編みを続けた。


「誉め言葉? 皮肉?」

「褒めてるし。ラメリーを傷付けるようなことは言わない……と思う」

「気持ちだけ断言しておいてよ……」


 そこは断言してほしい。


「ラメリーの地雷はちゃんとわかった。踏まないようにする。ラメリーもオレの地雷を踏むなよ」

「……生意気」

「王子に向かって、ラメリーこそ生意気」

「私は歳上だよ」

「オレは王子だぜ」


 クツクツ、とロキは笑う。その声を聞いていると、上手くやっていけそうにも思える。でも、今は私だけ。

 さっきのように、ジオスと喧嘩になる。私が上手く取り持たないとね。


「ラメリー」


 声を弾ませて、ロクが戻ってきた。手にはガーベラに似た赤い花。耳のそばに三つ編みを編み込んだそこに、ロクは差し入れた。

 やっぱり、花を髪に差し込むことが好きなのは、ロクだ。


「どこかに咲いてたの?」

「いや、咲かせた」

「どこ行ってたの?」

「んー、野暮用」


 花を咲かせるくらいこの場でできるだろうに、どこに行っていたのやら。

 ロクは、にっこーと悪戯っ子な笑みで返す。


「ラメリーの本、発売してるんだろう?」

「街に着いたら教えてくれよ、買って読む」

「いいよ……荷物増やすだけだもの」

「読んでもないくせにって、怒ったじゃん」

「読め、とは言ってないわ」


 読んでも嫌なことを言われそうで、教えたくないのだけれど。

 露骨に顔に出てしまったのか、ロクは笑みを深めると両手で私の頬を包んだ。


「読ませて?」


 そう無邪気に笑いかける。


「んー……君達が、いい子に見えると不気味」

「悪戯してほしいならするけど?」

「結構です」


 ロキがまた左耳に囁こうとするから、押し退けた。


「ラメリーの作品、読破してやるから」

「全部で三作よな」


 ロクとロキが言ったことに、私は目を瞬く。


「なんで三作あるって知ってるの?」

「出版している長編と、二作の恋愛小説だろう?」

「……一作目のことは話してないよね?」

「読んだ」

「? あれは陛下が持っているはずよ」


 青い髪の魔法使いは三作品目。長編のエクドラは二作品目。最初はメラマヴロとの日々をモデルにした恋愛小説。

 タイトルは、口付け。

 エクドラの一冊目を渡した時に、それも王様の手に渡った。王様しか読んでいない。


「……」


 ロキとロクは目を丸めて顔を合わせると、にやりと笑みを深めた。悪戯っ子な笑み。


「なに?」

「べっつにー」


 声を重ねて、二人は笑う。

 いい子そうな時よりも、不気味だ。絶対によからぬことを考えているに違いない。


「ラメリー……問題ありませんか?」

「大丈夫」


 そこで、メラマヴロが歩み寄ってきた。双子王子を牽制する眼差しを向けている。

 二人はそんなもの痛くも痒くもない様子で、ただ不敵な笑みを浮かべたまま離れていく。その視線は、メラマヴロに向けられていた。

 尻尾をフリフリと揺らして、悪戯の好機を待っているような猫みたいな二人だ。

 ……悪戯しないように、見張らなくちゃ。



 街に行くまで、誰も双子王子に話し掛けなかった。双子王子は私にしか声をかけず、他を目にも留めない。

 メラマヴロが私に触れることを許さなかったから、妙なことはされていない。

 ジオスは睨むような冷ややかな視線を、ずっと双子王子に向けていた。

 ポルとロサは双子王子を大きく避けている。レムネーは、普段通り。

 レーガは私をちらちらと気にしては、なんとかなるさと言いたげな笑みを向けてきた。

 街に着くと直ぐ様、本屋に行って私の本はどれかとせがまれる。渋々タイトルを答えた。

 それを見ていた本屋の店員さんが真っ赤な顔をして「ファンです」と言ってくれる。

 私は舞い上がってしまい、沈んだ気分が吹っ飛んだ。にまにまと、口元が緩む。

 宿をとって、その食堂に居座っても、にやけっぱなし。


「……よかった。昨日からあまり笑顔にならなかったから、心配だったのです」

「ん? そうだった?」


 メラマヴロに言われて、私は首を傾げた。普通だと思っていたのに、想像以上にダメージを受けていたように見えたみたい。心配かけて申し訳ない。


「僕もファンなのですがね……」


 テーブルに頬杖をついて、ジオスが言い出す。


「知ってるけど……」

「……反応が違いますよね」


 ジオスはむくれたような表情をする。

 店員さんと反応が違うことが気に入らないのかな。


「いや、顔見知りだと気遣いも含まれるから……ファンと新しく出会うのはまた別の嬉しさが」

「僕は顔見知り程度のファン?」

「いやぁ、そうじゃなくて」

「気遣いではありませんよ。僕の称賛を信じていないのですか?」

「いやいや、そんなことっ」


 ご機嫌斜めのジオスに答える度に、ご機嫌を損ねているように思えた。

 むくれた顔は可愛い。なんて考えている場合じゃなかった。


「エクドラが出版されて反応が怖くても、ジオスの励ましのおかげで支えられていたよ? 感謝している」


 ジオスの支えには感謝しているということを伝える。

 わかってくれたみたいで、ジオスはそっと微笑みを返してくれた。

 よかった、いつものジオスの優しい王子様微笑だ。

 安心した矢先に、テーブルがドンと叩かれたので、驚いて震え上がった。ロキとロクだ。


「ラメリー、読み聞かせて」

「はい?」


 腕を掴まれていて立たされた。今、妙なことを言われた気がする。


「エクドラを読んでよ」


 絶句した。

 自分の作品を読み上げろ!? それなんていう拷問!?


「絶対に嫌ぁ!!」


 どこかに連れていかれそうになって叫ぶと、メラマヴロが間に割って入ってくれた。

 た、助かった。胸を撫で下ろす。でも、安心しているのも束の間。

 何故かロキとロクが笑みを浮かべた。そしてメラマヴロの鎧に手をついて、押し退ける。ぐいぐいと、三人は食堂の隅っこに行った。

 ロキとロクがなにかを囁いたらしく、メラマヴロが驚きで目を見開く。


「――バラすぞ」


 ロクのその声は聞こえた。

 二人が戻ってきてまた私の腕を掴むと、メラマヴロは動けないように立ち尽くす。


「メラ?」

「っ……」


 昨日は腕を切り落とすとまで言った彼が、双子王子に手が出せないみたい。顔色が悪い。

 まさか、私のように弱味を握られてしまったのか。


「あ、いいの、メラ。大丈夫よ」

「ラメリー……」


 真面目なメラマヴロは、葛藤をしているようで苦しそう。私に申し訳なさそうだったから、私は精一杯の笑みを返す。

 攻撃体制のジオスとレーガにも大丈夫だと笑みで伝える。

 私が犠牲になれば丸く収まるから……。


「次メラを脅したら、エレクドラーロを召喚して凪ぎ払ってもらうからね!!」

「はぁい」


 双子王子に怒鳴りながらも、私は連行された。




20150929

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