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プロローグ 創国の英雄譚

 以前書いていた小説も完結してないのに、性懲りもなくまた書き始めてしまいました……。この小説はある曲を聴いている時に思いついたので、転用まではいかないにしても聞いたことのあるような言い回しが出てくるかもしれないので、タグに二次創作をつけさせていただいてます。

 内容はよくある英雄譚なので、多分大丈夫なはずです。

 子供の背丈ほどしかない桜の木が、か細い数本の枝一杯に花を咲かせいた。容易く手折られてしまいそうな枝に精一杯花を咲かせている桜は儚く、しかし確かに見る者の目を奪う美しさを持ち、力強い生の鼓動を主張しながら咲き誇っていた。

 見る者の心を奪い魅了する魔性の魅力を持ちながら、容易く触れてはならぬと思わせる清らかな桜は、何処か目の前の若き王子に似ていると、青年はぼんやりと思う。

 そんな中、祖国を奪われた若き王子は青年に言った。


「私は軍国に奪われた我が国を取り返したいのだ。四季豊かで、美しい桜を見上げ過ごしたあの温かな日々を。優しく美しい我が祖国を。その為には力が、仲間が必要なのだ。高潔で崇高な精神を持ち、誰よりも強い仲間が。だからどうか、頼む。私に、その剣を、力を、貸してくれまいか」


 若き王子はそう語ると、所詮農民生まれのしがない平民である青年に頭を下げた。本来ならば、言葉を交わすどころか顔を見る事さえ叶わないだろう高貴な身分を持つ若き王子の必死の懇願に青年は己の心が喜びに湧くのを感じた。

 そして、青年は決意する。

 必ずや、この若き王子の祖国を取り戻し、もう一度あの美しい桜並木を見せてやろうと。

 青年は地に膝をつけて己に懇願する王子の前にゆっくりと跪く。そして、同じ高さにある艶やかな新緑の瞳を見つめ、昔一度だけ見た騎士の礼を真似た。


「王子様。―――― いえ、我が王よ。財も名声も身寄りも無く、この剣以外何も持たない私ですが、貴方の御身はこの私の命に換えてもお守りします。そして、貴方の御命が終わる最後の時まで共に戦い、共に生きると剣とこの桜に誓います。この世の誰よりも優しく、美しい心を持つ我が王よ。私は、私の全てに誓って、貴方にとって最高の騎士になる!」


 不格好な騎士の礼を取りながら、青年は高らかに己が王に告げて剣を差し出す。そして、若き王子はその艶やかな新緑を潤ませながら青年が差し出した剣を受け取ると、その剣で青年の肩にそっと乗せた。

 無言のまま、若き王が己の騎士に剣を返した瞬間、二人の頭上に桜の花びらが舞い落ちる。二人と同じ位の高さしかない桜の花びらが、意思を持ち祝福しているかのように風に乗って誕生したばかりの若き王と騎士の頭上から降り注いだ。


 この出逢いこそが、後の【創国の国父】と呼ばれた賢王と【英雄騎士】と呼ばれた男を生み出した瞬間だった。








 そして、五年後。

 二人は蔓延る盗賊団を壊滅させ、悪しき竜を倒し、美しい隣国の姫君を助け出し、身分を越えた多くの仲間を得る。そして、かつての祖国を蹂躙せんとする者共を追い出し、新たな祖国を創りだした。

 平民だった青年は王に乞われて正式な騎士となり【創国の英雄】と呼ばれ、再建された祖国の王座に就いた若き王は【創国の国父】と慕われ、歴史に名を残す賢王として英雄と共に語り継がれて行くことになる。


 【創国の国父】の戴冠式と【創国の英雄】の任命式は出会った時よりもずっと大きくなった満開の桜の木の下で、多くの仲間と民に見守られ厳かに行われた。

 王城も無い、ご馳走も無い、王冠さえ無い、豪華とは言い難い式だったが、人々は王と騎士を讃え、新しく生まれ変わった祖国の名を叫び、生きる喜びに湧いた。 




 その際の逸話だが、任命式の最中、王は栄誉しか与えてやれない騎士に気持ちだけでも、と言って「栄光」「名声」「名誉」「光栄」「華のある人生」といった花言葉を持つノウゼンカズラの花を贈った。


「その功に相応しい褒美を出したいところだが、何しろまだ城も無いからな。褒美はもう少し待って欲しい。その代りと言っては何だが、英雄に相応しいこの花を感謝の気持ちを込めてお前に送ろう。ここまで来られたのも、全てお前のお蔭だ。礼を言う」


 そしてその時、ノウゼンカズラを贈られた平民だった騎士は王となった親友に言った。


「―――― いいえ。全ては貴方のその美しき心故のこと。全てを失ったにもかかわらず、国を、民を想い一人で立ち上がった貴方だったからこそ、私は騎士になろうと決めたのです。誰よりも美しい心を持つ我が王よ。国父となられる貴方には、この世界の誰よりもこの桜の花が相応しい」


 そう言って城も王座も王冠も無い王の頭上に、騎士は桜の花で編んだ王冠を乗せた。

 この時贈られた【英雄騎士】からの秘密の贈り物に、若き王は大変喜んだそうだ。




 この逸話が元となり、キルシュ国では戴冠式の際には王城に咲く桜の花で編んだ王冠を使うのが習わしとなっており、国が栄えた今でも王家は未だに王冠を持たない。

 そして桜の花はキルシュ国、ひいては王家を表すものとなったのだ。                         


                          【創国の英雄譚番外編 賢王と英雄のその後】


 まだまだ未熟な文章の上、二~三話は中々話が進まないので読んだ感じがごちゃごちゃするかもしれません。

 頑張って書いていくので、主人公が入学する辺りまでは温かく見守っていただけると幸いです。

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