生き返りました
私、笹川南は確かに死んだはずでした。
死因は至ってシンプル。
信号無視のトラックに衝突されて、帰らぬ人となったのです。全身に激痛を感じながら、あ、これ、駄目だな、と思った直後に意識がブラックアウトしましたから、死んだ…はずです。
……そのはずなのに、此処は一体何処でしょう。
白い壁に赤いレンガを乗せた可愛らしいお家が立ち並び、歩く人は金髪、茶髪と、明らかに日本じゃありません。
勿論、天国でも無いでしょう。
「此処は一体何処でしょう」
今度は口に出して言ってみました。
当たり前ですが私の問いに答えてくれる人などいません。隣を通りすぎたおばさんが、不思議な顔をしました。
いや、私も不思議ですから。
通りすぎていく人達が話しているのは日本語。でも、街の名前が書いてあるであろう看板の文字は私の全く知らないもの。
どうせなら、文字も日本語にして欲しかったです。やれやれ。
「第2の人生ってことですかねー」
「その通りっ!」
「わっ!!な、何ですかー!?」
独り言に返ってきたのは女の子の声。
「もしかして神様ですか?」
女の子の発言から推察したことを、おずおずと訊ねると、
「いかにも!お前のいた世界の神である」
と、自信満々に答えられました。自分よりも年下(見た目)の女の子にお前と言われるのには、違和感しかありませんが、神様ですし怒らせたら危険でしょう。
沈黙は金、雄弁は銀です。
「にしても、お前は言わないのだな」
ぽつりと神様が呟きます。私は、その発言の意味が分からず、素直に訊きました。
「何を、ですか」
「元の世界に帰してくれだとか、言わないのだな、と思ってな」
私はその言葉に驚きで目を瞬かせました。
「だって、神様が私をこの世界に連れてきたんでしょう?」
私の言葉に、神様は驚いたようでした。大きな目を更に大きく見開いて、口もポカンと開いています。
「やはり、私が見込んだ奴だ!面白い!!」
「自分でやったことに何言ってんですか」
「そんなことを言ったのはお前が初めてだ!!」
「人の話を聞いて下さい」
「お前に旅の仲間を授けよう」
「旅するのは決定事項なんですね」
ことごとく私の発言を無視する神様に、私も少しキレそうです。
「旅が終わればお前を元の世界に帰そう!」
「死体に戻れってことですか」
「いや、意識不明の重態で死んではいない」
怒りなど吹っ飛びました。
「旅が終われば、お前の体も回復してるだろ。それじゃ、南。死なないように頑張れよ」
1番最初の職業選択に、お前の運命がかかっていると言っても変わらんからな。
そう言って神様は、私が瞬きしている間に消えてしまいました。
ていうか。
「頑張らなきゃ死んでしまうような世界に送るなよ」
私、笹川南は死んでなんていませんでした(意識不明の重態だけど)。
そして、異世界で旅をしないといけなくなったようです。