先輩現る
すいません。2度同じ文章を続けて貼付けてしまったので修正しました。気をつけます^^;
2人がまだ言い争いをしていると部室のドアが開いた。メガネをかけた茶髪の生徒がこちらをみながら
にこやかに部室に入ってくる。サイト以外の3人が立ち上がるとお疲れさまです、と声をそろえて言った。
メガネの彼もおつかれさん、と返した。どうやら大和たちの先輩のようだ。
大和がサイトを紹介するとにこやかにその生徒も自己紹介をした。
「俺は3年の三上。別に年上だからって気をつかわなくていいよ~絵の世界はみんな平等じゃん?
俺が卒業していった後はよろしく頼むよ。」
サイトがまだ入部するとは決めてません、と言うとチャラい感じのする先輩はふぅんという表情を浮かべながら
手に持っていた携帯電話を開いた。誰かにメールを打とうとしているらしい。
松野がよし、先輩と見学者が来たことだしそろそろ描くか、と言い出し腕まくりをした。
奥の準備室から背の高い三角形の木枠を持ってくると隅にあったあのムンクのような絵を大事そうに抱えだしたので
サイトは驚きながら言った。
「え?その絵、もしかして松野...君が描いた絵だったの?」
木枠に絵を置いた後、その絵を見ながら誇らしげに松野は言った。
「まだ描きかけだけどね。高校生活一発目の油絵だけど良く描けてると自分でも思うんだ。」
サイトはこのなんだか分からないちっぽけとも言えるこの学生がこんな芸術的な空気を出せる絵を描いたとは
ぜんぜん、まったく思えなかった。人は意外な才能があるもんだなぁと関心していると携帯をいじっている三上先輩が言った。
「詠進のヤツ、すこし遅れてくるって。進路のこととか色々あるみたい。部長に伝えてくれっていわれちったよ。」
詠進の名が出てサイトは少し気が張ったが、そういえば部長って、と尋ねると神崎と大和が顔を見合わせて笑った。
「きっと...サイトも気に入る先輩だと思うよ」
大和がニヤケながら言った。こいつ、いつのまに俺のことを名前で呼ぶようになったんだ。サイトは憤慨しながら
絵を描こうとしている松野の動きを見続けていた。
松野が木箱の中から汚れたパレットと何本かの筆を取り出し絵を描こうとした瞬間、部室のドアが勢い良く開いた。
「みなさん、こにゃにゃちわ~元気ぃ~?」
そう言いながら背の低い女の生徒が入ってきた。サイトはあっけに取られていたが他の1年生はお疲れさまです、と声の主に答えた。
三上もこにゃにゃちわ、と小さな声で答えた。
「あれ、もうよしぷー絵描こうとしてるー...そこの彼は?」
女学生が首をかしげながらサイトの方を見たのでサイトはすこしドキっとしてしまった。
大和が昨日詠進先輩と話していたヤツです、と答えるとあぁ~と手を叩いて言った。
「あなたが詠進の言ってたサイトーサイト君?変わった名前ー。私は佐々木ノマ。この部活の部長だよー。」
サイトがえぇ!?と声を上げたので大和と神崎が予想どおり、という顔をした。
佐々木先輩がえー、何そのリアクション、と口を膨らませていった。
こんな可愛い部長がいるなんてこんなイケてないメンツからは考えられなかった。サイトは違った意味でこの部活に
興味が沸いてきた。女の子がいたら部活をやるモチベーションも違ってくるだろう。
少しデレデレしながら部長と話しているとまた部室のドアが開いた。真打登場。伊達詠進の登場である。
1年生がお疲れ様です、というと三上と佐々木部長も詠進に声をかけた。
サイトもゆるんだ顔を直し、すこし緊張しながら詠進に向かってぺこりと頭を下げた。
詠進がサイトを見るなり真っ先に声を掛けた。
「サイト君。昨日は気分を悪くさせてしまってごめんね。」
サイトは昨日の突き刺さるような厳しい視線をした詠進ではなく、なごやかな表情を浮かべながら
謝罪してくる詠進に驚いて何といっていいかわからなかった。サイトの態度を察して詠進は続けた。
「実はちょっとカマをかけていたんだよ。」
サイトがえ、と言うとさらに続けた。
「君が絵に対してどれだけの愛情をもっているかテストしたかった。なんていったら嘘くさいかな。」
詠進が笑いながらいうとノマ部長が口を出した。
「詠進はちょっと変わった所があるから本気にしないほうがいいよー。さぁ夏の大会に向けて、みんな絵の技術をあげるのだー。」
とおかしな号令がかかると三上と、絵を描いている松野以外の1年生が準備室の方へぞろぞろ歩き出した。
いまいち状況が飲み込めないサイトに対して詠進はこんなことを言い出した。
「そうだ、サイト君。キミをモデルにしてデッサンをしてみてもいいかな?
ちょうどモデルを探していたところなんだ。」
サイトはうえ?と声にならない音をだしたが、この詠進という男の本心は一体なんなのか突き詰めようと思い、
その要望を受け入れた。絵を描く準備が整い、サイトは詠進に言われたとおりやや横向きにイスに腰掛けた。