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ASAREN

英語のタイトルですが特に意味はありません。

あされん!というタイトルにするのがちょっと嫌だったかな^^;


次の日の朝、サイトは「朝練」に参加するため普通の生徒より早く学校の校門をくぐった。


詠進先輩の「風たちぬ通学路」をちらっと視界の隅で見つめると5階に続く階段をはぁはぁと、息を切らしながら登った。


さすがの北海道といえども6月の半ばに入り、少しずつ夏の香りが漂ってくるのを感じていた。現時点でこれだけ汗をかいて


階段を登っていたら夏の大会時にはどうなってしまうのか。サイトは学校にクーラーが付かないかな、などとあまり現実的ではない


空想を思い浮かべながら美術室のドアを開けた。


教室の中にはいつもの服装の松野、そして昨日は風邪で学校を休んだ条一郎がいた。サイトは2人に挨拶をし、昨日描いた絵を取りに


準備室へ向かった。昨日感じた「足りないもの」がなんなのか検証するためだ。ロッカーから絵を取り出し準備室の


ドアを開けると入り口の手前で描いていた条一郎の絵が目に入った。


昨日教室の隅に置いてあった時より色が多く塗られているため、結構朝早く来て描き始めていたようだった。顔にマスクを着け、


ときおり咳込みながらも条一郎は時間がもったいない、という感じでキャンバスに筆をのっけていた。やる気がなくなったのでは、


と心配していた松野もとりあえず一安心だろう。サイトは席に座り自分の絵を手に取りじっくりとその絵を眺めた。


横書きの水彩で描かれた猫の絵はなにかインパクトに欠けているような、きれいにまとまりすぎているような、淡白な印象を自分の絵


からサイトは感じた。それよりも絵が全体的にベコッ、と内側に反り返っているのが気に入らなかった。


神崎に言われたように最初に水塗りをしなかったのが原因なのだが、絵を観てもらう時にこれでは失礼だろう、とサイトは感じた。


サイトは決心したように立ち上がりもう一枚カバンから画用紙を取り出した。せっかく描いた絵だけれど仕方が無い。


もう一度始めから描き始めるのだ。サイトが水彩セットの容器に水を汲んでいると松野が話しかけてきた。


「サイト、水塗りをするんだったら、湿らせた画用紙を画板にテープで固定すれば絵が反り返らなくて済むよ。


ちょっと教えてあげるから今回からそうすればいいよ。」


そういうと松野は筆とパレットを置き、部室の棚からデッサンなどを描く時に画用紙の下に敷く画板を持ってきてくれた。


サイトは容器を持ちながらありがとう、というと松野はおもむろにサイトの画用紙を画板の中央に置き、肌色のテープで


画用紙のフチを留め始めた。まるで動物医師が動かないように動物の手足を固定するような感じでテープを貼り終わると松野が言った。


「このテープはマスキングテープ、ていってこうやって絵を固定したり、隣の色と塗る色が交じり合うのを防ぐために使うんだ。


最初にこれをやっておけば絵を描いてる途中でも画用紙が反り返らないから便利だよ。」


それだけいうと松野は自分の火山の絵の前に戻った。サイトは松野の背中にありがとう、と再び言うと、画板に留められた画用紙に


筆で水を塗っていった。その絵が乾く前に教室の棚に置きっぱなしだった神崎が使っているコットンを拝借し、絵の水分をすこし


吸い取ってやった。勝手に使った事を放課後に神崎に詫びておこう。そんなことを考えているうちに始業のチャイムが鳴り始めた為


3人は急いで絵を片付け始めた。



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