コカコーラを飲みながら
省エネのためiPhoneから投稿です。
金曜日の放課後、一年生部員達は自分の絵を仕上げるためほとんど会話もないまま日が暮れるまで絵を書き続けいた。
松野が描いていた油絵をひと段落させ、ふー、と息を吐き出すと他の部員を見渡して言った。
「ちょっと休憩がてら一階の自販機に行ってくるけど何か飲む人?」
松野が珍しくみんなの為に買い出しに行くと言うので神崎があんぐりと口を開けていたが、しばらくして「俺、CCレモンね!」と小銭を渡し、笑いながら言った。大和も「コーヒー…ブラックで…」と言い、松野に120円を渡した。条一郎は絵の前で腕を組みながら考え事をしていたが、神崎と大和の様子を見て「俺はミルクティーで」と言った。神崎が「その顔でミルクティーかよっ」と冷やかした。条一郎から小銭を受け取ると松野が声をかけ辛そうな態度でサイトに言った。
「サイト、うまくいってなくて焦るのはわかるけどちょっと休憩したほうが良いよ。ひとりじゃ持ちきれないから一緒にいこう?」
サイトは松野にそう言われるとゆっくりとノートから顔をあげた。詠進先輩に新しい絵の描き方を教えてもらったのだが今のサイトにはどうやっても先輩のような鮮やかな水彩画を描くことが出来なかった。大きなため息をつくと言った。
「自分なりに頑張ってやってるんだけど、ちょっとうまくいかなくてさ…気晴らしついでについて行ってやっか。」
サイトがぐるんぐるんと腕を回すと他の部員達がほっとした表情を浮かべた。大和が「俺も…一緒に行く」と言い、松野、サイト、大和の三人は美術部の外に出た。階段を降りながらサイトは言った。
「なんか、俺のせいで部室の空気悪くしてごめんな。」
大和が気にしなくていいよ、と言い松野もうなづいた。
しばらくして松野が語り始めた。
「僕も中学時代はうまく絵が描けなくてまわりにあたったことがあったなあ。ゴミ箱蹴飛ばしたり。」
「…ふーん」
「でも美術の先生がすごく良くしてくれて良風は自分の思うように絵を描いたらいい、って言われてずいぶん救われた気がしたなぁ。ねぇ、聞いてる?」
聞いてるかと聞かれサイトはふっと我に帰った。大和が顔を覗きこんで言った。
「少し自分の世界にこもり過ぎなんだと思う。もっと自分を出していった方がいいよ…」
大和がフフっと笑うとお前が言うな、とサイトは大和の頭を小突いた。三人は自販機でそれぞれ五人分ジュースを買った。
期限まで後一週間だ。それまでになんとか感覚を掴まなきゃな。サイトは階段で2人と談笑しながら、コーラのタブをあけながらそんな事を考えていた。