僕達の失敗
サブタイは適当につけてます。
はぁー、今日は最悪の高校生活スタートになってしまった。
ベッドの上でサイトはうなだれながら今日一日のことを思い出した。
ドジったのは席を間違えただけではない、問題はその後だ。
本当の席に座ってしばらくすると始業のチャイムが鳴り担任の寺田先生が入ってきた。
2時間目の社会の授業は彼のうけもちらしい。日直が始業のあいさつをしてから
先生は口を開いた。
「今日は授業を始める前にみんなにお知らせがある。ちょっときて」
そういうとサイトは席を立ち教卓の前へ歩き出した。これは書類を書いている時に
寺田先生とサイトで打ち合わせていた事だった。
「斉藤君は今日が初登校ということで不安もあるだろう。私が授業の始めに君を呼ぶから自己紹介で話す事なにか考えておくように」
サイトはまえもって皆の前で自己紹介することもあるだろうと考え、あらかじめ大体何をいうか考えていた。
緊張で少し足がすくんだが、さっきのミスをカバーするためにいっちょかましたれ、というような気持ちになっていた。
歩いている際に少し笑い声が聞こえたが、俺の発言でこいつらを黙らしてやる、と思いながら先生の横に立つと先生が話を切り出した。
「えー斉藤君は入学前の病気により、入院を余儀なくされみんなより1週間遅れて入学することになりました。」
クラスが少しざわめいた。先生は続けた。
「えーみんなより高校スタートが遅れたわけだが今日から同じクラスメイトになるわけだからみんなで仲良くやっていって
もらいたい。それでは本人、自己紹介。」
寺田先生がほれ、というようなしぐさでサイトを促したがサイトはえっ、いうようなそぶりを見せた。
計算どおりだ。少し動揺した雰囲気をだした後に、カッコよく話しだしたらギャップで女の子達はくい付くだろう。
そしたら入学早々いろんな期待が広がるよね、とニヤケたい気持ちを抑えながらサイトはクラス中をみつめた。
真剣に話を聞こうとしている女子、ぼーっと口を開けて見つめてるヤツ、ニヤニヤと笑いながらサイトを見ているヤンキー
のような生徒。色々なタイプの人間がここにはいる。最後に中央のだいわとかいうマッシュルームカットのアイツを見つめた。
含み笑いを押し殺したような顔をこちらに向けている。だめだ、コイツとは仲良くできそうにはないわ。
よし、と自分に言い聞かせながらサイトは一歩前に出て大きく息を吸い込んだ。
だれかがちいさく咳をしたような気がしたが気にしなかった。
「山浦中学から来た斉藤才斗です。名前の由来は2回繰り返すことでいいことがあると、名づけた父が言っていました。
好きな四文字熟語は唯我独尊。特技はスポーツ。何か質問のある人いますか?」
決まった。自己紹介の最後に相手に自分の事を聞くことで印象をこちらに惹きつける効果がある、と
昔観たテレビのドキュメントで言っていたような気がしたのをサイトは前の日に思い出していた。
これのために前の日眠れないくらいに練習したのだ。女の子の評価もバッチリだろう。
しばらく、教室がざわついたがやがてひとりの小太りの生徒が手を挙げた。はい、どうぞとサイトは手をその生徒に差し向けた。
彼はすこしだけ緊張した面持ちで切り出した。
「え~まず名前の由来なんですけど、2回繰り返すというのはサイトウを、ていうことでよろしいでしょうか~」
クラスメイトが意味を理解してぶっ、と笑った。名前を笑われるのは不謹慎だ、この小太り○ね、とサイトは気分が悪くなった。
笑いが収まる前に前の方にいた女子が手を挙げながら質問してきた。
「入学前に入院してたって言いましたがなんの病気で入院してたんですか?」
これには興味津々というような感じでみんなサイトを見つめた。
サイトは答えづらそうにしていたが先生がちらと時計を見たので答えるしかなかった。
「あの...盲腸です...」
みんなが?というような顔を浮かべた。後ろのヤンキーがニヤケながら聞いた。
「ちょっと質問。手術はやったの?」
「はい...やりました...」
サイトが細々とした声で言うと笑いながらヤンキーは言った。
「俺の知り合いが盲腸やったことがあるんだけど~全部剃っちゃうんだよね、毛。そうだよね?」
ヤンキーが下半身を指差しながらね?、ね?と聞いてきたのでクラスは爆笑に包まれた。隅の方のかわいい女の子も
口に手をあてながら笑っている。サイトは恥ずかしくてこの場から逃げたくなった。
先生がこれ、授業をはじめる、というふうにみんなをたしなめたのでそれ以上サイトはみんなから質問されることはなかった。
余計な事言うんじゃなかった。思い出してサイトは毛布を被りベッドの上をのた打ち回った。




