猫と美術少年
編集しなおしました。やっぱ、パソコンが一番使いやすいです(笑)
サイトはその後しばらく絵を描いた後、教室に残っているみんなより少し早く帰宅し、二階の自分の部屋のベッドに突っ伏していた。
自分と他の部員との明らかな実力差。どうやってあと一週間ちょっとでこれを埋めろと言うのか。
ぼんやりと現実逃避をしていると窓の外からニャー、と猫の鳴き声がした。サイトはベッドから立ち上がると窓のカーテンを引いた。するとベランダに一匹の飼い猫がちょこん、と座っていた。サイトは子供の頃から動物が好きだったので窓を開けるとその可愛らしい動物の体を抱きかかえようとした。しかし猫は体をよじり、サイトの手の甲に思い切り噛み付いた。
いてっ、と声を挙げると猫はふにゃー、と叫びながらベランダから飛び出していってしまった。
サイトはベランダから猫の行方を見送ると歯形の残る手を見つめながらなんだ、アイツと独り言を呟いた。
ひりひりする手で窓を閉めサイトは机の上に座り今日部室で起こった事を回想した。舞というエキセントリックな先輩にあった事、神崎が自分よりはるかに絵にたいして知識があること、大和の絵の具一色で描かれた絵。うちの部活、個性の強いヤツが集まり過ぎだろ。もしかして全道で一番レベルが高い美術部なのではないだろうか。サイトは条一郎が廊下で言った言葉を思いだしていた。
「そんなに気にすることはない、すぐに諦めがつく。」彼は他人事のように自分の実力のなさを悟った口ぶりで言っていた気がした。
普通に考えて中学、いやもっと以前から絵を描いていた人間と高校から始めた人間が同じ条件で絵を描き始めたらどっちがいい評価を得られるか決まっている。でもサイトは入部してまだ数日。諦めるのはまだ早い、と感じていた。
キャリアは違うかもしれないが同じ高校生、一生懸命努力すればみんなにも追いつけるのでは、とポジティブに考えることにした。
今日は初めてだったけど本格的に水彩画を描いた。先週末は木炭でデッサンをした。日に日に技術が上達していっている、と思いたい。
サイトはテレビをつけ、絵のテーマをそろそろ決めなくてはな、と再放送のドラマを見ながら思った。