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オタク、叫ぶ

一年生部員がぞろぞろと教室に入ってくると舞先輩はブツブツと男に対する文句を言っていた。先輩の機嫌の悪さを感じ取り、


後から入ってきた部員達は大体なにが起こったのか普段の舞先輩から想像することが出来た。しかし、絵の発表会の締め切りが迫って


いるため部員達は改めて舞先輩にお疲れ様です、と言うとそれぞれ絵を描く準備にとりかかることにした。


サイトはまだ疲れるようなことはしてないわよ、と訳のわからない事を口走っている先輩の前を横切り、準備室に行こうとしている


神崎の肩に手を掛けてこう言った。


「ともちゃん、今日から水彩画の描き方について勉強させてもらいやす。どうかお手柔らかによろしく。」


神崎はなれなれしく絡んできたサイトの手を払いのけると思い出したように言った。


「そういえばサイト、自分のロッカーの場所、知らなかったよね。部長から鍵を預かってるから教えるよ。」


えっ、自分のロッカーまで用意してもらってるの?サイトは大路地先生が絵の具を自由に使わせてくれることなど


この部活に対してありがたさを感じていた。神崎や他の1年生部員と準備室に入ると広さ6畳ほどの大きさで、中から舞先輩が


付けている甘ったるい香水の臭いがした。さっきまでここであんなことが...そういう妄想をサイトが膨らましていると、


神崎がここがサイトのロッカーね、とドアが若干へこんだ汚れた縦長のロッカーを指差した。サイトがうぇ、と言いながら


良く見ると「サイトー」と書かれた札が付けられていた。まぁ用意してもらっただけありがたいとしよう。神崎はロッカーの鍵を


サイトに渡すと自分のロッカーから水彩画セットとノートを取り出した。サイトは水彩画の描き方を彼から教えてもらうべく


準備室のドアを開き、どぞ、と神崎を先にお通しした。大和がどさくさに紛れて一緒に通ろうとしたので、思い切りドアをしめてやった。


気をとりなおして再びドアを開くと舞先輩が携帯片手に誰かに電話をしているようだった。机の上で足を組みながら通話をする彼女は


ふとももがほとんど丸見えの状態だった。条一郎がニヤッと口元を緩めると大和がこれ、と条一郎の視界を遮った。


松野が我慢できない、と言った様子で叫んだ。


「先輩、絵を描かないで遊んでるんだったら出て行ってくださいよ!僕ら来週の発表会のために急いで絵を描かなきゃならないんです。


やる気のある人間に迷惑をかけないでくださいよ!」


舞先輩は少し驚いた表情を浮かべたが、そこは修羅場をたくさんくぐって来た余裕か、何よムキになっちゃって、と言い残すと


ごめんね~と再び電話で話しをしながら部室を出て行った。はあはあと息を切らしている松野に条一郎が言った。


「まっつん、いまのは少し言い過ぎだったんじゃないか。」


大和もうんうん、とうなづいた。神崎が水彩画用のバケツに水を汲みながら「ああいう女は怒らすと怖えぇぞ~」といったが


かまうもんか、と油絵の道具が入った木箱をどか、と机の上に置いた。サイトは見よう見まねで水彩セットから水を入れる容器


を取り出し、神崎の横で水を汲み始めた。

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