金策大作戦
iPhoneから更新してみました。
ノマ部長の入部にあたってのオリエンテーションを受けた後、サイトはひとり、美術部の教室を後にした。
なにもやることが無いのに残っていては他の生徒に迷惑がかかるのでは、と思ったからだ。
サイトは心地よい潮風に吹かれながら詠進先輩が描いた通学路をくだり、バス停で帰りのバスを待ちながら今日新たに生まれた問題をどうやって解決するかを考え出した。
絵を描くにはお金がかかる、という事である。ノマ部長の話によると油絵を描くための道具が一式揃った初心者セットが大体一万五千円。その後使っていった絵の具を個別に補充していくと一般的な20号という大きさのキャンバスで四千円は必要になってくるそうだ。今の自分にそんな大金が払えるわけがない。
サイトはバスに乗り込むと窓際の席に座り、カバンからPSPを取り出して帰りの時間をゲームのレベル上げをして潰すことにした。
しばらくゲームをやりながらサイトは思った。思えば大和に邪魔されてCDを買えなかった腹いせでたいして欲しくもないゲーム機を買ってしまったのだ。サイトは少し後悔した。その後、サイトの頭に妙案が生まれた。
「そうだ、このPSPを売って金にすればいんじゃね?本体とソフトを売ったら大体一万五千円くらいになる!そうだ!その手があったか!」
サイトが普通に話すぐらいの大きさで自分の心境を口にしたため、前の方に一人で座っていた他の学校の女子生徒が気持ちわるそうにサイトを見た。が、そんな事は本人は気にしなかった。
サイトはゲームショップが近くにある次の停車場で降りることを決めた。しかし、長谷川病院通過しやす、と運転手がいうとバスは道路沿いにあるゲームショップを通り過ぎた。サイトは自分が手に持っているPSPを売ってしまう、という事が名残惜しかった。来月には大手メーカーのアクションゲームがリリースされる。それにお金が出来た時に買い直すのは面倒だ。
そんなトンデモ理論で自分をムリヤリ納得させた。
サイトは窓に額をこすりながらこの窮地に立ち向かわなければならないという現状に溜息をつき、うなだれ始めた。