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ドキドキ入部試験

他の1年生部員がサイトの発言にそれはそうだな、という反応を示した。しばらく考えた後、神崎がこう言った。


「そうだなぁ、とりあえずノマ部長と顧問の先生に相談してみ?なんとかなるかもしれないぞ。」


大和もそうだね、という感じでうなづいた。そういえばここの顧問の先生は誰なのか、神崎に尋ねた。


「あぁ、美術の授業を担当している大路地先生(おおろじせんせい)だよ。みたらすぐ分かると思う。」


サイトは大路地先生といわれてもピンと来なかった。たしかに週に一度ある美術の授業にはサイトも参加しているが


授業の内容がビデオで美術の歴史を学ぼう、と言った感じのものでどんな先生だったか思い出せなかった。


条一郎がほら、あの身なりの良い貴婦人だよ、と言っていたがそんな先生この学校にいったけ、という感じだった。


他の部員達が絵の準備をする様子をサイトは後ろの方のイスに座り眺めていた。松野と神崎は昨日と同じように


となりあって絵を描いていた。ときおりくだらないことで言い争いをしていたが険悪なものではなく、


この2人、仲良しなんだなぁと傍からみてサイトは思った。


大和と条一郎は真ん中の席で条一郎が持ってきたカタログの写真をみながらどんな絵を描こうか決めているようだった。


本人の話によると、条一郎もサイトと同じく美術未経験者だそうで、始めて描く油絵をどんなものにするか吟味しているのだろう。


神崎も大和に誘われて入部したと言っていたので美術部は未経験なのかもしれない。しかし彼は隣のアーティスティックな


絵を描く松野の絵を「暗い」と言って非難している。彼の手元の画用紙にはどんな絵が描かれているのだろう。


みんなが思い思いに絵に取り組んでるとドアが開きこにゃにゃちわ~、とノマ部長が入ってきた。


前の2人組みも口げんかをやめ、おつかれさまです、と1年生部員達が言った。やる事のないサイトが言った。


「部長、俺昨日入ったばかりで道具もないし、絵も描いた事がないんでどうすればいいのかわからないんです。」


そういうとノマ部長はにゃるほど、といい、思いついたように勢い良くこう言った。


「あ!サイト君まだこの部活の三か条聞いてないよね?じゃあ部長であるわたしがこの部活に対するルールを教えてしんぜよう~。」


サイトは「うえ?」と驚いた。三か条?そんなこと大和からも聞いてねぇぞ?なんかすごい厳しいルールがあったらどうしよう。


ノマ部長は真ん中の席に座っていた大和と条一郎に席をずれるよう促すと、サイトを席に座らせ、対面するようにイスを持ってきて


座った。サイトは神妙な面持ちでノマ部長の第一声を待った。


サイトがごくり、とつばを飲み込むと、ノマ部長がおほん、と咳払いをしながら言った。


「サイト君、この美術部に入った動機は?」


サイトはいつもふざけてる感じの先輩がまともな質問を聞いたので、かしこまってこう答えた。


「僕はこの学校に入ってからやりたいことが見つからなくてどうしていいか焦ってました。


時には学校をサボってみたり、大和に当たってみたり。でも玄関先に飾ってある詠進先輩の絵を観た時思ったんです。


俺もこういう人を感動させるような絵を描いてみたいって。それが入部の理由です。」


前の方で絵を描いていた2人が急にまじめな話をノマとサイトが始めたのであぜんとした表情で見つめていた。


大和もうんうん、とうなづいていた。条一郎は少し気まずそうにカタログの写真に目を通していた。


サイトの動機を聞いたあとノマ部長は一呼吸置いて大きな声で言った。


「はい、斉藤サイト君、美術部の入部試験合格~」


サイトはふぇ?と声を出した。なにがなんだかわからない。ノマ部長が続けた。


「いや~大学の推薦が近づいててね、3年生は毎日面接の練習やってるの。だからその癖がでちゃった。」


サイトはそうだったのか、と気が付くと急にマジメに入部動機を語りだしたのが少し恥ずかしくなった。


大和にいたってはまだうんうん、となにかにうなづいている。ノマ部長が仕切り直し、と言わんばかりに席を立ち上がり、


黒板の方に向かった。途中でスカートが机の角に引っかかり、少しだけパンツが見えたのでサイトは心のなかでラッキーと声を挙げた。


ノマ部長が恥ずかしそうに振り返るとまたおほん、と咳払いをしながら言った。


「これからしおさい美術部、SeaSideArtClubの活動内容を言うから良く聞いててね。一度しかいわないよ?」


ノマ部長から「しーさいどあーとくらぶ」という聞きなれない名詞が出てきたのでえ?といった感じだったが


一度しか言わない活動内容を話すそうなので、サイトはYシャツの胸からメモ帳と筆箱からペンを取り出した。


サイトの準備ができたのを確認するとノマ部長は黒板にチョークを叩きつけるような強さでおおきな文字を書いていった。

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