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「1年生全員そろったな」

ひさしぶりの更新です。

サイトは次の日、前の席に座っている大和健に自分が持っていったノートを返すことにした。


持っていった動機を話すとややこしい事になりそうだったので、帰りに落ちてたから拾ったと嘘をついてそのノートを大和に手渡した。


大和は少し納得がいかない表情で首を傾げながらありがとうと言うとサイトに尋ねた。


「中身、見た?」


「いや、別に。興味ねぇから見てねぇよ。」


サイトが言うと大和がノートをめくりながらほんとにぃ?と言った顔をしたのでこらえ切れなくなって言った。


「お前なんでそんな気持ち悪い絵描いてんの?まじで将来犯罪とか起こしてもしらねぇかんな。」


大和がサイトにそう言われると、やっぱ見たんだ、とちいさな声で言ったがその後気持ち悪くフフっと笑った。


コイツの笑い方にも少し慣れてきた。サイトはノートを見てしまったことが少し後ろめたくなったので


半分フォローするつもりでこう言った。


「でもりんごの絵とか、すげえ上手くかけてんじゃん。ペン一本で描いてるとは思えねぇよ。」


サイトは「上手くかけてんじゃん」と言ったあたりから大和が褒められてうれしい、と言った表情を


歯茎をみせながら浮かべたのでこれ以上コイツのことを褒めるのはやめようと思った。大和は言った。


「今日の部活...でるよね?昨日入部したばっかりで...まだ紹介してない人もいるから...」


サイトはうん、出るよというと大和がやはりフフっと笑ったのですこし気持ちが萎えたが


少しでもはやく美術部に馴染んでみんなを納得させられる絵を描きたいと思っていた。



一日の授業が終わり、サイトと大和の2人は階段を昇り5階の美術室を目指した。


途中でノマ部長と出会ったが、彼女は理科室の掃除があるから少し遅れると言っていた。あいかわらずプリチーな先輩だ。


女の子と話した余韻でにやにやしながら部室のドアを開けると、長身で猫背の生徒が教室の端の方にふらっとした感じで立っていた。


どうやらこの部屋の掃除を担当している生徒ではないようだ。


強面の生徒がゆっくりとこちらの方をみると、大和が「あ、条一郎。」と声を出した。


条一郎と呼ばれた生徒はこっちを見て満面の笑みで微笑んだ。


サイトは面識のないこの生徒がなぜ笑みを浮かべているのかが分からなかったが、大和が「サイトの事を


条一郎に教えたんだよ。」というような事を小声で言った。大和の言い分によると彼は昨日部活に出席しなかった


部員であるらしかった。サイトが状況を理解すると自己紹介を始めた。


「俺は昨日からこの部活に入ることになった斉藤サイト。よろしく。」


そう言うと条一郎という生徒も自己紹介をした。


「俺はまっつんと同じクラスの2組の高城条一郎たかしろじょういちろう。こちらこそよろしく。」


サイトがこちらこそ、と言うと条一郎は握手を求めてきた。それに応じるとおもむろに彼は言った。


「盲腸、やったばかりなんだって?」


意外な質問に少し意表をつかれたがサイトはうん、とうなづくと条一郎は言った。


「俺も中2の時に盲腸の手術を経験した。だから術後のお前の気持ちはよく分かる。」


サイトはやっとこの病気の後のつらさを分かってくれる理解者が出来た気がして、条一郎とハグをした。


あとから入ってきた松野と神崎がうおっと声を挙げたので、ちがうちがう、笑いながら弁解した。


気を取り直した神崎が、これで1年生全員そろったなと言ったので同学年の美術部員はここにいる5人であるようだった。


松野がよし、絵を描く準備をはじめようと言って準備室の方へ歩いていった。サイトは、あ、俺どうすればいいんだろ、


と声を出した。絵を描くための道具を何ももっていなかったからである。


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