行列
「ねえ、見に行かない? 面白そうだわ」
お花がはしゃいだ声を上げた。
時太郎たちは二輪車の列に近づいた。行列を見物しているのか、道路の両側に物見高い人々が口をあんぐり開け、時折ちらほら通りすぎる武者の旗指物を指さしている。
「おうおう、あれは島村右近どのの旗指物じゃ! あそこに通られるのは緒方上総ノ介殿の右腕の鹿田馬ノ介殿の列じゃ! まったく勇壮そのものじゃのう……」
大声を上げているのは行商人らしい四十がらみの小男だった。貧相な顔つきで、口許にまばらに髭が生え、突き出した前歯が、どことなく鼠のような印象を与える。
その周りに、男の話を聞きに数名の男女が集まって、しきりに行商人の声に頷いている。
二輪車の列がようやく途切れたころ、列の殿軍に、ずしりずしりと重々しい足音を響かせ、傀儡の列が姿を表す。こちらは旗指物は立ててはいないが、傀儡の胴体に家紋が描かれている。
最後に、信じられないほど巨大な傀儡が続いた。その傀儡に比べれば、人間はまるで豆粒に見えるほど巨大だった。巨大な傀儡の胸には緒方家の家紋である九曜星が描かれている。
先ほどの行商人も、その傀儡には驚いたようだった。
「超弩級人型傀儡じゃ! あんなものも上総ノ介殿はお持ちになっておられるのか」