【御門】の最後
【御門】は身体を細長く引き伸ばした。一本の綱のようになって、【御舟】へと追いすがる。
するすると細長い指先が宙を飛び、遂に先端が【御舟】に達した!
その時……
ばし──んっ!
龍が降臨したかのような強大な電光が【御舟】を貫いた! 【御舟】に接していた【御門】の全体が、一本の電流の棒のように真っ白に燃え上がる。【御門】のもう一端が地面に接していたため、避雷針となって電流が走ったのだ。
ぎゃあ~あ~あ~ん……!
長々と【御門】は絶叫した。
【御門】の身体の極小構成単位の反復部分集合が、強烈な電流により、構造を維持することが不可能になった。
おりから吹き付ける強風を浴びて【御門】の身体は、ばらばらに散っていく。【御門】の最後であった。
【御舟】は、まるでそんな騒ぎを知らぬように上昇を続けていく。
やがてその姿が雲に消えていった。
よろり、と時太郎は身を起こし、空を見上げた。
睡眠瓦斯の効果が切れたのだ。
「母さん……」
時太郎は呟いた。
ふらふらと時太郎に藤四郎が近寄ってくる。ほっと溜息をつく。
「やれやれ……どうやら助かったようじゃ。しかし【御舟】が空を飛ぶとは、信じられぬ……。しかし時太郎、そちはいったい、御所でなにを……?」
時太郎は藤四郎の饒舌を煩く感じた。しかし何も言う気力もなく、ただ力なく項垂れる。