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上昇
【御舟】は上昇を開始した。
ごごごご──と辺りに重低音の轟音が響き渡り、からからから、と御所の瓦が風に吹き飛ばされるように舞い上がる。
わさわさわさと木立が揺れ、木の葉が空へと吸い込まれた。【御舟】が飛び立つための重力制御が、あたりの引力を負の値にしているためだ。
ついに【御舟】が地面から離れた!
すらりとした紡錘形の塔が上昇し、四枚の羽根の先にある重力制御装置の下部から中性徴子が放射され、青白い智連瘤の光が発せられる。
ぴかっ!
雲海に稲光が閃光を発する。
重力制御装置による局所的な引力減衰が、大気を上昇させる。その結果、局部的な低気圧を引き起こしため、季節外れの雷雲が発生したのだ。
がらがらがら……
ぴしゃんっ!
強烈な雷光が強烈に【御舟】の外板を炙る。無論、【御舟】はそのような打撃にも構わず上昇する。
うお~お~お~ん……
その姿を見て【御門】が哀しげな声を上げた。その手から【御舟】がすり抜ける事態を察したのだ。
【御門】は、じんわりと身体を捻じ曲げ、それまで接近していた破槌城から御所へと戻り始めた。
が、間に合うのか?