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騒音

 藤原義明は時太郎たちを連れ、ぎくしゃくと【御舟】へ向かって進んでいく。時太郎から「母親の時姫の居る場所を案内せよ」と命令されたからだ。

 強張った足取りで進みながら、義明はなぜ自分がこう唯々諾々と時太郎の命令に従うのだろうと考えていた。考えても、操り木偶人形と化したかのように足は勝手に動いて、大極殿への渡り廊下を歩いている。


 辺りは森閑として、人気ひとけが一切ない。いったい検非違使どもは、なにをしているのか?


 ちら、と義明は背後の三人を振り返った。

 ぞくり、と背筋が凍る。


 三人はまったくの無表情。その目は、何も映していない。あの目! あの目が義明の一挙手一投足を、じっと見つめている。


「ここじゃ……この先に【御舟】がある……そちの母親──時姫は──【御舟】に囚われておるのじゃ」


 言い終え、義明は媚びたような笑いを浮かべた。膝を曲げ、腰を落とし、時太郎の顔を見上げる。


「であるから、もう麻呂には用がないでおじゃろう? な、これからおぬしたち、勝手に──」

 時太郎は無言で義明の側を通り抜けた。まるで一顧だにしない。それを見送り、義明は「ふーっ」と溜息をついた。


 どっと音を立てて、背中に汗が噴き出すのを感じる。全身が冷や汗で滝に打たれたようになり、こちこちに緊張していた。

 時太郎たち三人が曲がり角に消えるのを確認して、ようやく義明は身を起こした。


 うおおーん……!


 聞きなれない騒音に、義明はぎくりと背後を振り返る。


 なんじゃ、あの音は?

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