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叢雲

 空気が湿り、空を凄まじい勢いで真っ黒な雲が流れていく。髪の毛が重い。雨になるのかも知れぬ。

 じっと御所の方向を見つめる木本藤四郎は、苛々と次の事態に無意識に身構えていた。


 なにか起きる……。


 それは、確信であった。

 気懸かりなのは、検非違使とともに御所へ消えた時太郎のことだった。あの時ちらりと見た時太郎の表情が、どうにも忘れられない。目を合わせた瞬間、藤四郎の背筋が氷柱を入れられたように冷たくなったのを感じていた。


 ぴくり、と藤四郎は目を上げた。


 御所の大極殿の大屋根の向こうの【御舟】と呼ばれる塔から、じわりと黒い叢雲のようなのが湧き出していた。


「【御門】が──! 外へお出ましになった──!」


 それは、絶叫であった。御所のどこからか叫んでいるようであった。


「なに? 【御門】が?」


 思わず藤四郎は一歩前へ出た。

 目を細め、じわじわと動いている黒雲を見つめる。

 あれが【御門】だと?


 微かに周囲を取り巻いている武者たちが身じろぎをして、装具がかちゃかちゃと小さく音を立てた。

 ずるり、と雲は、まるで生き物のように大極殿の屋根を滑り落ちてくる。と、その動きが急に早まり、するするとした水のような動きになった。


 藤四郎の胸に、戦慄が走った。


 あれは敵だ!

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