表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/73

河童の唄

 長老の言葉どおり、水虎の像の双つの目が開いている。それまではただの石に刻まれた目の形の窪みだったのが、今ではかっと見開かれた両目が、いやに生々しく宙を睨んでいた。


 水虎さまの像の頭部に人影が見えた。河童の一人が指を挙げ、叫んだ。


「あれは……三郎太では御座いませぬか?」

 その言葉に長老は小手を挙げ、目を細めた。

「うむ、確かに三郎太のようじゃ。あんなところで何をしておるのじゃ?」


 頭部の上から三郎太は集まってきた河童を見下ろし、叫んだ。


「河童淵の河童たちよ! 今こそ、お前たちの使命を果たす時が来た! さあ、水虎の像の前へ集まるのだ!」

 三郎太の叫び声は普段とは違い、轟くようで威厳に満ちている。三郎太の命令に、河童たちはふらふらと誘われるように集まってくる。


 長老は三郎太を見上げ、叫び返した。


「三郎太、何を言っているのじゃ? 我らの使命とは、なんじゃ?」

 三郎太の目と長老の目が合った。三郎太は大きく両手を開き、叫んだ。


「河童たち、唄え!」



 ──牟──ん……!



 水虎さまの像から低く大きな【水話】が響き渡る。その瞬間、総ての河童は動きを止めた。目が虚ろになり、口が開く。



 ──牟──ん……!



 水虎の発した【水話】と同じ音を出す。長老もまた、皆と同じように口を開け、発していた。

 全員の【水話】が重なり合い、滝に反射して一つになる。


 と、水虎の両目が光り出した。


 河童たちは忘我の状態にある。ただ精一杯の力で水虎の【水話】に合わせ、ひたすら声を張り上げている。


 水虎の両目は、さらに輝きを増した。

 両目から発した光は、真っ直ぐ苦楽魔くらまを照らしている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ