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回想~火消し~

 少佐はゆっくりと頷いた。


「成る程……。殖民計画には、よくある話です。誰でも例外なく自分だけの楽園パラダイスを持ちたがる。しかし記憶装置に自ら埋没するという手段は初耳ですね。それで、わたくしの役目は?」


「殖民船には、どれも帝国科学院により、安全装置セイフティ・コントライバンスが組み込まれている。

 一人の……あるいは少数の不法な独裁を防ぐためのものだが、幅広い冗長性が与えられ、独自の判断で機構を構成することができるようになっている。この星の場合、それは先ほど見せた河童や、天狗に組み込まれていた。

 しかし船を支配する擬似人格は、それらの安全機構を無力化している。なんとか【御門】の支配力を無効にし、殖民船から引き離さなければならない。前段階として、この星の地方豪族に働きかけ、社会の段階を強制的に中世から近世へと発展させる工作が実行中だ」


 少佐は腕組みをして、首を横に振った。


「しかし……それは禁じられているのでは? 殖民惑星への政治干渉にあたりますが」


 画面に再び大佐が現れた。顔には苦渋の表情が見える。


「そうだ。この工作を惑星開発局の連中が知ったら、黙ってはいないだろう。しかし【御門】と呼ばれる独裁者が殖民星を勝手にしている現状も、決して許されることではない。だから工作は秘密に行われなければならないのだ。先発の工作員には〝火付け〟の役目を負っている。君には〝火消し〟の役をして貰いたい」


 少佐の声に、皮肉が混じる。


火付マッチけと火消ポンプし、というわけですな。火消しとなって現地に溶け込む任務は、自らの記憶を封印し、完全に現地人に成り切る必要がある……」


 そこで少佐の言葉は跡絶えた。再び口を開いたとき、口調は切迫していた。


「ちょっと待ってください! さっき安全機構は河童という生き物が負っていると説明されましたよね?」


 大佐の目が光った。


「そうだ、君は現地で河童となって生活しなければならない。帝国科学院の医療担当官が、君の身体を、河童に変身させてくれる処置をしてくれる」

 にやりと笑いかけて言い添える。


「河童に変身しなければならないが、生殖腺には手をつけんから心配するな!」

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