変装
大尉は顔を上げた。
「その前に、この変装を解いてもよろしいですか?」
中佐が頷くと、大尉は頭の後ろに手をやり、ばさりと金髪の鬘をむしりとった。金髪の下からは短い黒髪が現れる。
顔を俯け、指先で目の装着色瞳を取ると、黒い瞳が剥き出しになった。大尉は目を瞬かせ、ちょっと滲んだ涙を拭った。
「なんでこのような変装をしなくてはならないんです?」
「我々はこの惑星では南蛮人ということになっているからな。一応、ここの現地人の常識に従うことになっている。まあ、我慢してくれ。それより報告を聞きたい」
松田大尉は頷き、口を開いた。
「結論は明確です。明らかに、この惑星には外部からの干渉が認められます。この惑星の本来の発達以外に、外部からの干渉により、この惑星の政治状況は加速されております! ここに心理歴史学部からの計算結果がまとめられております」
大尉は衣服の隠しから一本の記憶薄片を取り出し、机の表面に置いた。
中佐は、さも忌まわしいものを見るように記憶薄片を睨みつけると、溜息をついて取り上げ、手元の窪みにそれを嵌めこむ。
引き出しを開くと、そこにはずらりと小さな把桿が並んでいた。中佐はその一つを弾くように倒す。
と、背後の壁が輝き、そこに窓が開くと画面が現れる。画面には様々な図表と、細かな書き込みの計算式があった。
中佐は立ち上がり、食い入るように画面を見つめた。