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使命
夜明けの光の中、三郎太は河童淵の住処から外へ出た。
なぜか胸騒ぎに襲われている。
──来よ……
頭の中で水虎さまの〝声〟が響く。
──来たれ……お前の使命を果たす時が満ちた……
ふらふらと、どうにも三郎太の足取りは頼りない。なんだか夢の中にいる気分である。
気がつくと三郎太は、水虎さまの前へ辿り着いていた。
巨大な水虎さまの像が三郎太を見下ろしている。再び水虎の〝声〟が響いた。
──三郎太、そちは長きにわたり、おのれの正体を自分からも隠してきた。
が、もうその必要は、一切ない。さあ、本来の自分に戻るのだ!
水虎の足下にぽっかりと穴が開く。三郎太はその中へ姿を消した。