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詰問

 大極殿に向かう義明の足取りは重い。


 できることなら、時姫の息子の時太郎を捕えてから【御門】には面会したかった。今、上総ノ介が大勢力でもって御所に圧力を懸け、公卿の特権である【御門】への面会を無理やり勝ち取ろうとなど、言上するのは義明にとって自殺行為としか思えない。


 それでも程なく、義明はいつもの【御門】との面会に使う部屋に来ていた。部屋の中はしん、と静まり返り、無闇に広い。

 中央近くに膝を折って座り込むと、すぐ【御門】の詰問が頭の中に響く。


 ──!


 はっ、と義明は額を床に摩り付けた。【御門】の言葉は、はっきりしたものではない。むしろ連想に近い。その連想から義明は【御門】の質問を推測するのである。

「聞こえ」の力を持つ信太一族なら、まとまった言葉として【御門】の言葉を聞き取ることができる。だが、ただの公卿である義明には、これが精一杯のところだ。


 がくがくと震えながら義明は言葉を押し出した。


「た、唯今、緒方上総ノ介が多数の二輪車、および浮かぶ城にて、御所に攻め寄せ来たっております! 上総ノ介は我ら公卿のみが有する【御門】との直接の面会を求めております。このままでは我ら、上総ノ介の要求を受け入れるしかありませぬ! ど、どうか【御門】には、よろしくご賢察のほどを……」


 ──&%$#*¥!


【御門】の凄まじい怒りが押し寄せ、義明は床に腹這いになった。義明の脳に電流のような衝撃が爆発する。

【御門】との謁見は、並みの人間である公卿にとっては地獄の責め苦に等しい。驚愕に、義明は顔を上げた。


「なんと仰せです? 【御門】おん自ら、お出ましにならると仰るので……」


 義明は、おろおろと立ち上がった。

 信じられない思いに、口がぽかんと開いていた。


「【御門】が外へ出る……まさか! いったい、何が起きたというのだ……?」

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