二階
二階の様子は一階とがらりと趣きを変え、簡素であり、実用的である。
二間四方ほどの部屋に、どっしりとした紫檀の仕事机が置かれ、その向こうに一人の南蛮人の男が座っている。
年齢はよく判らない。
ひどく年老いているようであり、あるいは若者の域を脱したばかりの年頃に見える。
がっしりとした肩幅、四角い顔。あるかないか判らないほどの細い眉をしている。
その目は多くのものを見、また多くの秘密を抱えているようである。
階段を登ってくる荒々しい足音に、男は微かに顔を上げた。聞こえる足音には怒りが籠められている。
部屋の扉が開かれ、先ほどの南蛮人の女が姿を表した。
かつかつと革靴の踵の音を響かせ、女は男の仕事机の前に立ち止まり、直立した。
さっと右手を挙げ、挙手の礼をする。
「銀河帝国監察宇宙軍惑星開発局解析課所属、松田玲子大尉であります! 本日、当該惑星への任官を命ぜられ、出頭いたしました!」
男は軽く手を挙げ、答礼を返した。
「わたしが駐在先任の吉村啓介中佐である。楽にしたまえ」
直立した松田玲子大尉と名乗った女は軽く足を開き、両手を後ろに回した。
吉村啓介中佐と名乗った男は、そんな松田大尉の様子に苦笑した。
「楽にしたまえ、と言ったんだ。まあ、そこの椅子にかけなさい」
吉村中佐に促され、松田大尉は素直に従う。しかし椅子のぎりぎりに腰を降ろし、両足をきちんと揃えるところは几帳面な性格が出ている。
中佐は両肘を机の上につけ、両手を顎のところで組み合わせ口を開く。
「君がわざわざ、ここまで派遣されたということは、解析課の結論が出たと判断していいのだな? わたしの報告はどう評価されたんだね?」