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敵
ちょこちょこと三人の真ん中に立った管狐は上目遣いになって話しかけてきた。
「時太郎さまの【聞こえ】の力、翔一さまの分析力、そして、お花さまの【水話】。この三つが合わさって、一つの力となります。今まではばらばらで御座いましたが、最早そうではありません」
三人は管狐の周りに集まった。おたがいの顔を見つめあう。
と、三人の床が持ち上がる。この地下にやってきたのと同じような仕掛けがあるらしい。
天井がぱくりと割れた。空が見える。夜空だが、夜明け前らしく、地平線近くが明るい。
三人はそのまま外へと持ち上げられていく。
時太郎は空を見上げた。
月が双つ、出ている。
その瞬間、時太郎はこの世界に迫っているという危機を悟っていた。
お花と翔一もさっとお互いの顔を見合わせる。三人が同時に悟ったのだ。
現在、三人は一つの意識に結ばれていた。
時太郎が〝声〟を聞き、翔一が分析する。そしてお花が〝声〟を発するのだ。今や、三人で統合三位一体意識に変貌していた。
管狐が叫んだ。
「お気をつけ下さい! 敵で御座います」
検非違使が周りを取り囲んでいた。