言葉
異様な衝撃に、時太郎は「はっ」と口を開いた。全身がある力に捉えられ、押さえつけられている。
苦痛は無かった。ただ全身の細胞の一つ一つが分解され、再構成されるような感覚を味わっている。
自分は今や、別なものに変えられている!
奇妙なほど平静な気分である。恐怖も無かった。あるのは純粋な驚愕の感情のみだった。
全身は指一本たりとも動かせないが、目だけはなんとか動く。時太郎は横目でお花と翔一を見た。
二人とも同じように金縛りに全身が硬直しているようだ。自分と同じような気分でいるのか、と時太郎は思う。
その時間は一瞬のようでもあり、また永遠に近い刻限が経過したようでもあった。
気付いたときには管狐の〝処置〟は終わっていた。
用心深く時太郎は寝台から起き上がる。腹帯はすでに寝台の中に収容されていた。
「ご気分は?」
管狐の質問に、お花は首をかしげた。
「いいみたい……なんだか頭がすっきりした感じ……」
お花は思わず手で口を押さえた。
「あたし、管狐の言葉が判る!」
翔一が叫んだ。
「わたくしもです! 管狐の言葉を理解できるのは、時太郎さんだけのはず……」
「今や、そうでは御座いません。お花さま、翔一さまも、わたくしめの言葉を聞き取ることができるようになりました」