表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/73

尋問

 はらりと時姫の長い髪が額から目にかけて垂れ下がる。それを指で掻き上げ、時姫は顔を上げた。


(時太郎! 生きていた!)


 喜びが湧き上がる。あの時、三郎太に託してその後は別れ別れになったのだが、こうして元気な姿を見ることができた。目元の痣、間違いない。


 ──時姫……


 深々とした【御門】の声が時姫の頭の中で響き渡る。

 びくりと時姫は肩を震わせた。


 ──【鍵】を渡せ……余には、あれが必要なのだ……


 時姫は目を閉じた。心気を凝らし、息を整える。「聞こえ」の力を蘇らせる。

 辺りに満ちる【御舟】の〝声〟が時姫の心に触れる。時姫はその〝声〟に身を委ねる。

 

 ──無駄だ……いくら【御舟】の〝声〟に耳を澄まそうと、【御舟】は、そちに応えてはくれぬぞ。

 それより余に【鍵】を渡すのだ!

 

 執拗に【御門】は時姫に命令している。時姫は無視している。

 ここに連れられてからというもの、執拗に【御門】は時姫に【鍵】を渡すように命令する。だが、時姫は一度たりとも返答したことは無い。


 ──くくく……


【御門】がわらったようだ。


 ──お前の息子、時太郎と言うのか……


 時姫は顔色を変えなかった──つもりだったが、動揺は隠せない。【御門】の気配が、舌なめずりしそうなものに変化した。


 ──今、検非違使たちが信太屋敷に向かっておる。捕えるのも、時間の問題だな。お前の息子なら【聞こえ】の力も持っておろう……。【鍵】の在り処も、息子に聞けば判るかもしれぬな……


 時姫は両目を開いた。

「時太郎は、何も知りませぬ! 無駄なことです!」


 ──おや、ここに連れられて初めて口を利いたな。やはり息子は大事と見える……。

 言え! 【鍵】は何処にある?


 時姫は強く目を閉じた。身を固くして必死に溢れてくる悲痛な思いに耐えている。

【御門】は、それからも執拗な尋問を続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ