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時姫

 窮屈な廊下を歩き、義明はようやく時姫のいる場所へと辿り着いた。


 円形の台の上に、時姫の姿があった。時姫は静かに端座し、目を閉じている。


 あいかわらず美しい……。

 密かに義明は賛嘆していた。


 時姫がここへ連れてこられて十数年が経つが、その頃の娘盛りのまま、まるで年を重ねていないようである。しっとりとした白い肌、豊かな黒髪。卵形の頤に、瞑った瞼から長い睫が頬に影を落としている。


 ごくりと唾を飲み込み、義明は語りかけた。


「時姫殿……藤原義明で御座る。麻呂の言葉が聞こえているであろう。目を開けよ」


 義明の声に、時姫の瞼がゆっくりと開いた。

 双つの瞳が真っ直ぐ義明を見つめる。

 思わず義明は内心、たじろぎを覚えていた。時姫の瞳を覗き込むと、いつもそうだ。真っ黒で、底が知れないぬれぬれとした黒い瞳は、義明の総てを見透かすようであった。


「時姫殿、そちには息子がおるな?」


 微かに時姫の唇が開く。両目は一杯に見開かれている。その様子に、義明は力づけられた。

「名前は時太郎。どうじゃ、図星じゃろう」

「どこで、その名前を!」


 初めて時姫は言葉を発した。義明は、にんまりとした笑いが頬に浮かぶのを感じた。


「どこでもよい。麻呂はそちの息子がどこにいるか、知っておるぞ。これを見い」

 移動行動電話の画面を開き、差し出す。画面を見入る時姫の頬が赤く染まった。


「この小僧の両目にある痣、間違いなく信太一族のしるしじゃな。そちの父親の信太従三位も、そうじゃった。信太一族の男には例外なく、この徴が現れるのじゃったな?」

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