大極殿
義明は御所の奥深く、ひっそりと静まり返った一角にある大極殿に来ていた。
上総ノ介による二輪車揃えの喧騒は、ここには届かない。
大極殿の大屋根の向こうに【御舟】のすらりとした形が夜空を切り裂くように聳えている。
義明は大極殿を通り抜け、【御舟】へ続く渡り廊下をひそひそと歩いた。
行き止まりが【御舟】内部へ通じる入口になっている。すべすべとした【御舟】の壁に、四角い入口が口を開けていた。入口には警備のため、検非違使が立っている。
その側をすり抜け、義明は内部へと踏み込む。
壁にはちかちか、ぴかぴかと様々な色合いの明かりが瞬いている。【御舟】の内部は、大極殿とも御所の他の場所ともまったく違う構造になっている。
木材でも石材でもなく、金属でも焼き物でもない奇妙な素材でできていて、それらには無数の釦や、把手がついていた。
あたりには検非違使がうろうろしていて、時折ちらほら壁の機械を眺めたり、幾つかの釦を押したりしている。
それらに義明が手を触れようとしただけで、有無を言わさず放り出されることになるだろう。【御舟】内部の機械は検非違使のみが操作できるのである。




