命令
はっ、と顔を上げる。
「そうか!」
叫ぶと、急ぎ足になって会議を抜け出し、御所の角々で立哨している検非違使に近づいた。
「これ、そのほう……」
義明の呼びかけに検非違使はぐいっと顔を向けた。
奇怪な面を被っている。面の双つの目がぐりぐりと動いて義明の動きを追っている。その異様な姿に義明は一瞬、たじろいだがそれでもごくりと唾を飲み込み、話しかけた。
「これを見てたもれ」
義明は画面をしめした。検非違使は無言で画面に見入った。
「この小僧を連行せよ! 名前は、時太郎。信太屋敷に現れた。よいか、この小僧が時姫の息子なのじゃ。こ奴を召し取れば、時姫に【御門】が欲しがるものを差し出すことができるかもしれぬ。これは【御門】のご命令であるぞ!」
検非違使は頷き、身動きした。
くるりと背を向け、立ち去っていく。どういう連絡があったのか、その検非違使の周りに他の検非違使たちが続々と集合し、無言のまま移動していった。
【御門】の命令というのが効いたのだ。それ以外では、検非違使は公卿の命令に従うことは、まず絶対ない。
検非違使を見送った義明は大股にその場を離れ、ある場所を目指していた。
行き先は、時姫の囚われている牢である。