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第36話:本当の強者(1)※三人称視点※


※三人称視点※


 ガリオン・エリアザード辺境伯が、皇帝エルダリオ・サウラスの命を受けて、赤竜を討伐するために皇帝直轄領に3人の竜騎士を派遣してから1ヶ月が経った。


「これだけの時間を掛けて、まだ赤竜の尻尾すら掴めないとはどういうことだ?」


 ガリオンの次男オルランドは、全く成果が上がっていない現状に苛立つ。皇帝直轄領に来てから、オルランドたちは一度も赤竜に遭遇していない。


「オルランド様、落ち着いて下さい。オルランド様の雄姿に、赤竜が恐れをなして。姿を現わさないのでしょう」


 今回派遣された3人の中で、唯一成竜クラスの竜騎士であるトール・イルバラが苦笑する。


「オルランド兄さん、トールの言う通りです。3人の竜騎士が相手では勝てないと思って、赤竜は逃げ出したんでしょう!」


 三男のスレインが調子を合わせるが、オルランドは不機嫌なままだ。


「スレイン、おまえは事の重大さが理解できていないようだな。我々が時間を浪費すれば、皇帝陛下の父上に対する評価は下がる。俺たちは父上の顔に泥を塗ることになるんだぞ?」


 本当のことを言えば、オルランドは父親のガリオンが、皇帝の評価を軽視していることに気づいている。オルランドが意識しているのは、自分に対するガリオンの評価だけだ。

 しかし、こうでも言わなければ、家督争いを諦めたスレインには響かないと思い、敢えて皇帝の名前を使ったのだ。


「勿論、俺も父上の顔に泥をつもりはありません。ですが赤竜が現れない以上、打つ手はありませんよ」


 スレインは言葉を取り繕いながら、内心では赤竜が現れないことに安堵していた。

 皇帝直轄領の村を襲った赤竜は、目撃情報から最低でも成竜クラス。村人の証言を鵜呑みにすれば、成竜としても平均を超える大きさだ。


 竜の姿となった竜人も同じだが、竜は100年ほどで成竜なる。さらに年齢を重ねる度に身体が大きくなり、その力も魔力も増す。

 まだ20代に過ぎないスレインやオルランドでは、成竜が相手では全く太刀打ちできない。


 それが解っていながら、父親のガリオンが自分たちを派遣したことに、スレインは疑問を懐いている。

 父親のガリオンの性格を考えれば、敢えてそうした(・・・・・・・)理由も想像できる。だが臆病なスレインはその可能性を考えないようにしていた。


「オルランド様、スレイン様、そろそろ日が暮れます。村に戻りましょう」


 トール・イルバラは主であるガリオンの命令で、2人の息子と一緒に行動している。だが正直に言えば、トールにとってオルランドとスレインは邪魔な荷物に過ぎない。


 そろそろ200歳となるトールの同世代には、すでに竜騎士団の中隊長を務める者もいる。それに比べてトールは小隊長でもない只の竜騎士だ。


 それでもトールは個人としての戦闘能力に関しては、同世代の誰にも負けない自信がある。だから今回自ら志願して、実質的に自分1人だけで赤竜を討伐する任務を受けたのだ。


 ガリオンがトールを選んだ理由が、トール死んでも大した損害がないと判断したからだということは解っている。ガリオンという男は、ここにいる3人の誰にも期待していない。だからこそトールは任務を成功させて、現状を打開したかった。


 このように3人は三者三様の思惑を懐きながら、赤竜に襲われた村に滞在している。

 その村は皇帝直轄領の中では、ヴァルダーク帝国との国境に最も近く、次も襲われる可能性が高いと考えたからだ。


 勿論、周辺地域の探索も続けている。しかし赤竜が現れた痕跡すら、この村以外に発見できない。だから成竜のトールすら、油断していたのだろう。


「よう! 随分と早いご帰還だな。赤竜が活動するのが、昼間とは限らないぜ」


 村に戻った3人の前に現れたのは赤い髪の若い男。一見すると人間のようだが、金色の瞳が人間ではないことを物語っている。


「貴様は……何者だ?」


「何だよ、その間抜けな発言は。まだ気づかないのか? 俺が、おまえたちが探している赤竜様だぜ!」


 高度な知性を持つ神外の存在である竜は、人の姿に化けることができる。

 だがトールたちが赤い髪の男を竜と思わなかったのは、男から強い魔力を感じなかったからだ。


「おい、貴様……その発言、冗談では済まないぞ!」


 オルランドが剣に手を掛ける。余程のことがない限り、竜人が人間相手に『竜化』することはない。


「冗談じゃ済まさないって、どうするつもりだよ? これを殺すってか? たかが竜人のおまえに、本当の竜である俺を殺せる筈がねえだろう」


「貴様、まだ言うか……ならば竜の力を見せてみろ!」


オルランドは剣を抜くなり、一撃を放つ。人間を殺すことに躊躇(ためら)いはない。竜人にとって人間は自分たちが支配する種族で。使役する代わりに、保護しているが。自分に逆らう人間を生かしておく理由はない。


 オルランドは、赤い髪の男の首を切り飛ばすつもりだった。しかし剣が当たる直前、男が纏う魔力に弾かれる。


「ひでえことをしやがる。俺が人間だったら死んでいたぜ」


 オルランドは咄嗟に『竜化』する。だが竜の姿になった瞬間、巨大な首を切り落とされた。


「ガキの竜人相手じゃ、人間に化けたままで十分だな」


 オルランドの首を切り落としたのは灼熱の焔の剣。赤い髪の男が魔力を具現化したモノだ。


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