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第26話:混じりモノ ※三人称視点※

※三人称視点※ 


「これは……どういうことだ?」


 部下たちを引き連れて『螺旋(らせん)迷宮』下層部の最下層を訪れた狐の獣人。ゴーダリア王国軍憲兵隊中佐のライラ・オルカスは、半ば崩壊した床を眺める。


 ダンジョンの崩壊は深層部まで続いており、床にできた大穴がどこまで続いているか見当もつかない。


「貴様たちはここで待機していろ。私は下を見て来る」


「ですか、ライラ中佐……深層部の魔物は大変危険です。そこに1人で行かれるなど……」


 心配そうな顔をする部下をライラは鼻で笑う。


「貴様、私を誰だと思っている? 深層部の魔物とて私の敵ではない」


 ライラはそう言うなり、大穴の中に飛び降りる。


 壁を蹴ることで速度を殺しながら、ライラは大穴の中を降りて行く。その深さはライラが予想していたよりもさらに深かった。


 そして遂に底に辿り着くと、そこは『螺旋迷宮』深層部の最下層。つまり『螺旋迷宮』ラスボスがいる階層だった。

 しかしラスボスの姿はなく、階層の床と天井だけではなく、壁まで全て破壊されている。


「つまりダンジョンの崩壊は、ラスボスを倒した者の仕業ということか?」


 ライラは警戒心を強める。自分に同じことができるだろうか?


「これは直ぐに手を打つ必要があるな。シャルロワ閣下が後れを取るとは思わないが……このような者を放置するのは危険過ぎる」


 ライラは降りて来たときと同じように、壁を蹴りながら大穴を駆け上がって行った。


※ ※ ※ ※


「魔物の暴走は収まりましたが、『螺旋迷宮』の深層部は完全に崩壊。床と天井が破壊されており、とても人が立ち入れる状態ではありません。

 ダンジョンの自然治癒能力により修復されるまでに、少なくとも数週間は掛かるものと思われます」


 ライラは城に戻ると、主であるフェンリルのシャルロワ・エスカトレーゼ伯爵の前に跪いて報告する。


「深層部が完全崩壊だと……それは貴様が言っていたグレイという人間の仕業なのか?」


「証拠はありません。ですが『螺旋迷宮』にラスボスの姿はなく、何者かが倒したものと思われます。そして魔物の暴走が発生した際に、最後に『螺旋迷宮』から出て来たのは、グレイとクリフというグレイに同行する人間のF級ハンター、そしてA級ハンターパーティー『野獣の剣』の4人です」


 ダンジョンの魔物はダンジョンが生み出したモノであり、自分の生命の源であるダンジョンを魔物が破壊するとは考えられない。


「クリフという人間の素性は不明ですが、F級ハンターながら実力はB級以上という程度(・・)の存在です。

 A級ハンターパーティー『野獣の剣』の4人の素性は把握しております。何れも実力のあるハンターですが所詮はA級に過ぎず、ダンジョンの深層部に挑める実力ではありません。ましてやダンジョンを崩壊させる力があるとは……

 これまで実力を隠していた可能性がゼロではありまんが、わざわざ隠す理由があるとも思えません」


「そうなると……やはりグレイという者が混じりモノ(・・・・・)である可能性が高いということか」


 混じりモノとは『亜神種』が人間や獣人との間に作った子供と、その子孫のことを言う。通常の人間や獣人と比べて、混じりモノは遥かに強い力を持っている。


「ライラ、貴様に同じことができるか?」


 シャルロワはライラ自身が考えていたことと同じ質問をする。


「やろうと思えば、できないことではありませんが……シャルロワ閣下の所有物である『螺旋迷宮』を破壊するなど、言語道断です」


 論点を()り替えた自覚はあるが、ライラはグレイに激しい怒りを覚えていた。


 ダンジョンは資源の宝庫だ。ダンジョンの魔物を倒すと手に入る魔石は、魔道具を動かすためのエネルギーとして使わる。魔物の素材は魔道具を作る材料になる。


 『螺旋迷宮』は迷宮都市トレドの太守であるシャルロワの所有物だ。魔石や魔物の素材を回収するのはハンターだが、ハンターズギルドが買い取り、市場に流通させることで、シャルロワは利益を得ている。


 深層部を探索できるS級ハンターが、ほとんどいない現状を考えても、ダンジョンを破壊することは、ライラの主であるシャルロワが利益を得ること妨害する行為だ。


「つまりグレイという者は、私に喧嘩を売っているのか?」


 シャルロワは面白がるように笑う。たとえグレイが混じりモノだとしても、『亜神種』であるフェンリルのシャルロワに喧嘩を売るなど自殺行為だ。


 やはり背後で他の『亜神種』が支配する国が動いており、グレイは諜報員として何かを画策していると考えるのが妥当なところだろう。


「シャルロワ閣下、グレイの件は私にお任せください。グレイの目的と背後にいる者の存在を、必ずや暴き出して御覧にいれます」


 ライラの琥珀色の瞳は、殺意の光を宿していた。


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