ボスの思い出ふぁいる2
今から、約100年前。大正時代。『かんとう』で大きな地震があった次の年。デモクラシーが起こっているとかなんとか、物知りの妖精がちょっと寄って話していったころ。この家は、やっぱり農家だった。子供たちは大きくなり、もう妖精とは話ができなくなっていた。
通りかかった魚のしっぽをした妖精がふらっとこの家に寄っていた。
「おいら、シード。よろしく。」
『あのね、お姉ちゃん、ゆかこね、小学校で困っていることがあるの。』
『え、ゆかこが相談なんて、珍しいね。どうしたの?』
『ううん。やっぱり、いい。』
「あれ、君のところの女の子?何で困っているんだろう。」
「もう、わしとは話せなくなったから、どうしようもないんだよ。」
「夢の中で話せばいいじゃないか。今晩行ってみよう。」とシード。
「そんなことできる妖精に初めて会ったよ。わしもいっしょに行けるのかい?」
「もちろんさ。」
「ゆかこちゃん、ひさしぶりだね。わしのこと覚えているかい?」
『わあ、お庭の妖精さんだ。このお魚の妖精さんは、おともだち?』
「そうだよ。ゆかこちゃんが、困ってるから、お話を聞きに来たんだよ。」
『あのね、ゆかこ書き取り百点のごほうびに、父さんに買ってもらった赤鉛筆とられちゃったの。』
「だれに?」
『ゆうたろうくん。わたし、ろうか側の席だから、窓から手を伸ばして、走って持って行っちゃったの。あわてておいかけたけど、おいつけなかったの。お昼休みに、お友達のおふみちゃんについてきてもらって、ゆうたろうくんに返してって言ったら、次郎くんにあげたっていうの。』
「それから?」
『次郎くんに聞いたら、あの赤鉛筆お前のか。って言って、たもとを探して、あれ?ないや、ごめん。っていって、いっちゃったの。どうしようもなくて、困っているの。』
うーん。それは、困った。
一応、その次郎君てやつにあたってみるしかないか。次郎は、隣村の村長の息子だそうだ。大きな家なので、すぐに分かった。
「おい、赤鉛筆どこで落としたか覚えていないか?」
『昼休み、校庭走り回って遊んでたから、多分校庭のどっか。』
校庭は、すごく広かった。とても、見つかりそうもない
『大切な赤鉛筆なの?』と次郎が聞いた。
「そうだ。書き取りで百点取ったごほうびにゆかこちゃんが父さんに買ってもらったんだ。」
「そうか。」
次に日の昼休み、突然、次郎が叫んだ。
「おーい!!昨日校庭で、赤鉛筆落としたんだ!!探してくれ!!」
子どもたちは、一斉に赤鉛筆捜索隊になった。日ごろから誰とも仲良くしていた次郎は、友達がいっぱいだった。赤鉛筆は10分後に見つかった。
ゆかこちゃんは、十年後に、次郎のお嫁さんになった。今は、ゆかこちゃんのひひ孫が、隣村で暮らしている。