事件簿その2
「よし、みんな、出動だ。」
ボスの掛け声で、ミンファ、シード、ソレラの三人は、腰を上げた。今日中に犯人を挙げなくてはならない。
昨日、また中学一年生の美紀ちゃんが、暗い顔をして帰ってきた。何かあったようだ。
ふたたび、われらの出番だ。われらは、シードと一緒に美紀ちゃんの夢の中へと侵入し、原因の究明を行った。
「美紀ちゃん、どうしたんだい?」ボスが尋ねる。
『妖精さんたち、来てくれたのね。あのね。』
原因は、筆箱の中の壊れた定規だった。昼の給食が終わり、五時間目の国語の準備をして、机の上に置いていたペンケースの中にあったお気に入りの定規が、ノートをとろうとシャープペンを取り出そうとしたら割れてしまっていたのだ。
この定規、くるっと回して伸ばすと長くなる優れものなのに。
『誰がこんなことをしたのかしら?これ、いじめなの?私、何かいじめられるようなこと、したの?クラスの子かしら。それとも先輩?男の子?女の子?』疑問は、次々にわいてくるけど、われらは、答えることができない。
「絶対、犯人を見つけてあげるからな。明日まで、まってておくれ。」ボスが約束した。
早朝、われらドレミファ探偵団は会合を行った。方針は決まった。まずは、聞き込みだ。
「行ってきまーす!!」
美紀ちゃんが出かけた。自転車登校も板につき、軽々と学校に向かう。自転車小屋に自転車を停めて、
「おはよーっ」友達と元気にあいさつを交わしながら、校舎に向かっていく。
昼休みの教室。美紀ちゃんは、今、図書室に行っている。われらは、美紀ちゃんの机がよく見える位置で張り込みをした。
「おい、やめろよ。勝手に人のペンケースいじるの。また、壊れるぞ。」
おや?怪しい会話が。どうやら、こいつらが犯人だな。犯人は挙がったが、どうやってこいつらをサツに訴えればいいのだ?
妖精にできることは限られている。美紀ちゃん、安心しろ。犯人は、見つけたぞ。後は、この子についていって説教と説得だ。夢の中で、よーく言い聞かせてやった。
『人のものを勝手に構うんじゃないぞ。』
『誰かに迷惑をかけたときは、きちんと謝るものだ。誰がやったかわからないと、世界中が敵になるんだからな。』
「ごめんね。壊すつもりはなかったの。ちょっと見たかっただけだったのに、私バカじからで。弁償させて。」
「ううん、いいよ。このままでも使えるから。いじめじゃないってわかって、ほっとした。言ってくれてありがとう。」
次の日、この子は、美紀ちゃんにちゃんと謝った。美紀ちゃんは、許してあげた。新しい定規、もらって当然なんだけどなあ。二日後、夢の中で、事件の経緯を説明した。
一件、落着。これからも、しっかり見守っているからな!