プロローグ 陰の薄いアイドル、爆誕!?
新作です(*'▽')まさかのローファン×女主人公。
しかも、異能モノときたもんだ。
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――人知を超えた『異能』と呼ばれる力が、当たり前になった近未来。
世界各国が軍事転用を考える中、日本ではその力が独自の文化を生み出していた。その名も『異能系アイドル』といい、不思議な力を使ってファンを虜にする少女たちである。
そう日本だけだが、世はまさに――大アイドル時代!!
そんな中で、今日もとある異能系アイドルのライブが開催されるのだった。
――
――――
――――――
『みんなぁ! 今日はきてくれてありがとう!!』
アタシは最前列で、ステージに立つ一人の女の子を見つめている。
手にサイリウムを持ちながら、早く彼女の歌が聴きたいと胸が躍っていた。そしていよいよ音楽が流れ始め、ステージ上の女の子がマイクを手に叫ぶのだ。
『思いっきり、楽しんでいってね!!』
沸き起こる大歓声。
アタシもその例に漏れず、興奮のあまりに叫び返していた。
初めてのライブ。その圧倒的な雰囲気にアタシもこうなりたいと思うのは、ごく自然なことのように思えた。だからこの時、アタシは決意する。
「アタシもいつか、トップアイドルになるんだ……!」――と。
◆
――それから、数年後。
「それなのに、なんでアタシに目覚めた異能は『陰』なのよぉ!?」
自宅のリビングにて、もう何回目か分からない『不合格通知』を手に。
思い切りうな垂れながら、アタシこと朱鷺坂スズメは己の素質のなさを嘆いていた。それというのも自身に目覚めた異能が完全なまでに、アイドルとして致命的な弱点を持っていたから。
思春期に差し掛かり、アタシに目覚めた異能は『陰』だった。
どのような力であるかは、その名の通りである。この異能によってアタシは、何をしても目立たない存在になってしまうのだ。
たとえば今回のオーディションだって、最終面接で最後まで名前を呼ばれなかったり。そんなことが、日常茶飯事のように発生するのだった。
「うううううううう! どうしたら、アイドルになれるのよぉ!?」
アイドルになるには、あまりに重すぎるハンデに頭を抱えるアタシ。
しかし、いつまでも下を向いているわけにもいかなかった。今回が駄目でも、いつかどんな奇跡が起こって合格するか分からない。
とにかく前向きに、アタシはスマホで新しいオーディションを検索した。
すると偶然、直近で開催されるものを見つける。
「スターダスト・エージェンシー? 聞いたことないけど、どんな事務所だろ」
そう思って調べてみると、割と最近になって設立された事務所らしい。
所属タレントも少ないみたいで、あまり注目もされていない。これはもしかしたら、狙い目なのではないだろうか。アタシはそう考えて、即座にオーディションへエントリーした。
そして、すぐに当日に備えて諸々の準備を始めるのだ。
「今度こそ、絶対にアイドルになるんだ……!」
意気込みは十分。
アタシは万全の状態を以て、オーディション当日を迎えるのだった。
――
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「やあ、いらっしゃい諸君! 僕の名前は月影亮介、このスターダスト・エージェンシーの社長だよ! この日をこちらも楽しみにしていたんだ! 肩の力を抜いてくれたまえ?」
面接に現れたのは、とても陽気な四十代くらいのダンディな男性。
自らを事務所社長と名乗った彼――月影さんは、手入れのされた髭に、屋内だというのに派手な帽子とサングラスを着用していた。服装もとてもラフなもので、しかし見事なまでに着こなしている。いわゆるイケオジというやつで、大人の男性の魅力が漂っていた。
そんな月影さんに促されて、アタシを含めた三人の志望者は席に着く。
そして順番に、名前を確認されていく流れなのだけど――。
「んん? んんんんんんん!?」
真ん中に座っていたアタシの履歴書を凝視しながら。
月影さんは突然に、それとこちらを交互に見比べ始めるのだった。まさに全身を舐めるように、というのはこのことか。ここまで注目されたのは初めてのことなので、緊張すると同時にちょっとした恐怖心を抱いてしまった。
そして、しばしの沈黙があってから。
彼はさっきまでの軽妙な口調から一転し、静かな声で話し始めた。
「えー、朱鷺坂スズメくん。キミは、どうしてアイドルを目指したのかな?」
「は、はい……!」
面接で初めての質問だ。
アタシは思わず声が震えるのを必死に抑えて、必死に答える。
「こ、こんなアタシでも、輝くステージに立ちたいと思ったからです!」
「……なるほど。見たところ、キミの異能はアイドル向きではないようだが。たとえ困難が待ち受けていると分かっていても、キミはそのステージを目指すのかな?」
「それ、は――」
分かっていた。
ここが、きっと運命の分岐点。
この質問にどう答えるかで、アタシの未来は大きく変わる。だから――。
「それでも、です。アタシは幼い頃に、初めてライブを生で見ました」
「………………」
黙ったまま、こちらを見据える月影さんに怯むことなく。
「その時の感動は、いまでも忘れていません。そしていつかきっと、どんなハンデを持っていても輝けるって、伝えたいから……!」
心に湧き上がってくる言葉をそのまま、彼に向かってぶつけるのだった。
「アタシは絶対に、輝くステージの真ん中に立ちます! そして、同じような悩みを抱えている子たちの光のような存在に、なってみせたいんです!!」――と。
そうだ。そうだった。
アタシはこれまで、幾度も挫折してきた。
この異能を得てからというもの、マトモに名前を呼ばれることもない。友達はおろか、毎日話すような相手も学校にはいなかった。
それだとしても、いつかはきっと表舞台に立てるのだ。
そのことを証明するために、アタシはアイドルになりたい。
「……ふむ、なるほどね」
その気持ちが、届いたかどうか。
アタシは緊張の面持ちで、月影さんのことを見つめた。すると、
「いやはや、素晴らしいね。間違いなく、キミにはアイドルの素質があるよ」
「え…………?」
彼は拍手をしながら、こちらを称える。
そして、何度も頷きつつ宣言した。
「今日の合格者は、キミに決まりだ。――朱鷺坂スズメくん」
その瞬間アタシの目からは、ぼろぼろと大粒の涙がこぼれる。
オーディションに落ち続けること十数回、ついに努力が実った瞬間だった。
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