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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
六両

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72/341

#72

恐らく、タルタロス鉱山のこの崩落事故で色々と崩れて繋がったのだろう。


「ここは…?」


洞窟に空いていた穴を抜けた先でスフェーンはそこに映る光景に少し目を疑った。


「何だ、これは…」


エーテルが無いので本当は何も見えない暗闇だが、スフェーンの視界にはモノクロではあるがそこに何があるのかは薄らと見えていた。

するとルシエルが言う。


『ここは付近の記録にも残されていない場所です』


途中で放棄されたような様子の巨大な掘削機械を前にスフェーンは唖然となっていた。


『但し推測ですが、ここは嘗て大災害以前の統治機構が建築を進めていた場所と推測されます』

「なるほど…」


ルシエルの推測にスフェーンも何となく賛同できた。なにせタルタロス鉱山の近くには廃棄された宇宙港が存在している。

大災害以前の施設が地下にあっても何ら違和感は無かった。


「って事は…」

『はい、この先に向かえば地上に繋がる出口がある可能性があります』


建設途中のこの施設が放棄されたと言う可能性は高く、おまけに風も吹いている。このまま進めば何かしらの施設に繋がるだろうと予測していた。


『現在、外気温は三六度。活動可能です』

「それにしちゃあ酸素濃度が低すぎるがな」


そう言い測定して出た酸素濃度のパーセンテージに苦笑するスフェーン。通常の人間であれば酸欠に陥っているような状況だ。


『現在、酸素を体内にて自動精製を行なっています。大気中成分と同じ配合でスフェーンの体内器官に酸素を巡回中です』

「おかげで喉が渇いているよ…死ぬほどな」


酸素100%と言うのも体にとってはとても危険なもので、長時間高純度の酸素を吸い続けると俗に酸素中毒と呼ばれる状態に陥る。


『不足する酸素は体内水分の分解により補填しています』

「俺の体は化学プラントか何かかよ…」


そんな事を溢すと、地面が微かに揺れ始めた。


「ん?」


その振動は大きくなり、更に轟音まで耳に入ってくると後ろのさっきまでいた坑道が崩落していた。


「っ!やっば!!」


それを見て慌てて逃げるスフェーン。崩落した坑道はスフェーンの入ってきた通路を完全に塞ぎ、放置された建設機械は完全に押し潰されていた。


「あちゃ〜…」


崩落して塞がった坑道を見てスフェーンはため息を吐いた。


「退路が絶たれたな…」

『先に進みますか?』

「あぁ、それしか無いだろ」


崩れた坑道を背にスフェーンは大きな筒状のシールドトンネルを進む。

セグメントで壁は固定され、先ほどの建設機械以外は不気味なほど何も無かった。


「長いトンネルだ…」

『現在の方角ですと、この先は放棄された宇宙港に繋がります』

「宇宙港か…」


行った事ない場所だが、何かしらはありそうだと勘ぐるとスフェーンの足元に建設途中で終わっている線路が見え始めた。


「地下トンネルか…」

『恐らく開拓時代に作られたものでしょう』


そんなトンネルを進むこと数時間、スフェーンの目の前に広がる大きな空間に出た。


「ここは…」

『現在位置の測定をします。スフェーン、風の流れに従って外に出られますか?』

「はいはい、探してみますよ…」


そこでモノクロで映る視界を頼りに少し彷徨うと、外に繋がりそうな階段を見つけた。


「えぇ…これ登るのか?」


永遠と続く階段を見上げて少しゲンナリとなりつつも登って行く。


「まじ服欲しい…」


今までずっとマッパなので、何か体を隠すものが欲しい。


「イチジクの葉でも探すか?」


リアルに失楽園のような状態なので少し苦笑しながら階段を登る。


そして階段を上り切った先で鍵の掛かったドアを内側から開ける。

電源が落ちていてもアナログのおかげでドアは開き、そこでは何かの制御室に入った。


「電源は…」


そこで色々と物色すると、そこでロッカーの中に一着の作業着が入っていた。


「おぉ〜、服だ」


紺色のナッパ服はスフェーンが着ると腕や足がダボダボで子供が大人のスーツを着たような姿になっていた。


「ははは…こりゃヒデェ」


服を着て、改めて自分が大きく様変わりしている事実に笑うしかないこの状況。鏡でもあればしっかりと自分の姿を見ることができるのだろうが…。


『スフェーン、制御盤に手を当ててください』

「ここの地図を仕入れるのか?」

『そうです』


そしてルシエルの指示に従い、着替えた彼女は制御室のパネルを見て電源を探すとそこでそれらしき場所に指先の形状を変えて差し込んだ。


「ははは…」


なんて事だと思いつつも、それができる事実苦笑しているとルシエルが伝える。


『システムに侵入、復旧完了まで約二分』

「はいはい」


機械に指を突っ込んだ状態で少し待つと、制御室に灯りがつく。


『非常用発電装置始動。システムを一時的に復旧しました』

「そうか…」


機械から指を抜き、改めて明かりのついた下を見るとそこは巨大な空間に何本も敷かれた線路、積み上がった資材や列車がそのまま放置されていた。


「まじかよ…」


これには流石にスフェーンも唖然となっていると、ルシエルがこの施設の情報と座標を伝えた。


『ここは放棄されたストリボーグ旧宇宙港近くの大陸横断真空列車の建設予定地だったようです』

「真空列車ね…」


恐らく、着の身着のまま逃げ出したのだろう。埃すらほぼ溜まらない状態で百年単位で放置されたこの施設は、資材がこの時代ではあり得ないほど残っていた。


「…」


そして電源が回復した事ではっきりと分かる部屋の状態、そこにはある一つのコピー紙が残されていた。


『独立行政法人惑星開発機構より惑星開発機構全職員に通達』


そのコピー紙には続けてこう書かれていた。


『惑星トラオムにて企業間の不穏な動きあり。全職員は一週間後より順次退去せよ』


これだけだ、そして裏面を見ると酸化して色の変わったボールペンのインクで言付けのように一文が綴られていた。


『戻ったら復旧作業するぞ!』


これを書いた人間は二度と戻ってくる事はなかったに違いない。なにせ大災害から手付かずのまま忘れ去られた存在だったのだから。

大災害の後、ここら辺一帯はタルタロス鉱山が見つかるまでは不毛な大地として企業による投資も行われてこなかった土地だ。


「忘れられた、開拓時代の財産か…」


資料を元あった場所に戻しながら制御室を出ると、ルシエルが言う。


『当該施設の全システムを掌握しました。外に繋がる擁壁に向かいますか?』

「あぁ、試しに出てみようか」


そして建設地点のコンクリートの床を歩くと、目の前の鋼鉄の壁が警告音と赤色灯を点灯させながら開いた。

壁の隙間から眩い陽の光が一筋通ると、一瞬スフェーンの視界が真っ白になるがすぐに視界が回復した。


「…」


扉が開き、中に風が入り込んでその先の線路が繋がっているのを見た。

線路は坂になっており、建設工事現場の先はよく見えなかった。


『現在位置とスフェーンの記憶を参考に構築した最新の地図データを作成しました。ご覧になられますか?』

「…本当に優秀だな。お前さんは」

『それは…お褒めの言葉と受け取ってよろしいでしょうか?』

「そうだよ」


スフェーンの返答にルシエルは少し学んだ様子で軽く頷いていた。


「取り敢えず外には出れたが…」


線路を歩きながら外の景色を見るスフェーン。ここが元建設現場であると言うのなら、近くに何か遺構があってもおかしくは無い。


「どこかの街すら見つからないのか?」


禿げた岩山に沿うように敷かれた線路を歩きながらスフェーンはぼやいた。

現在、あの建設現場より出て外の様子を見に来たは良いものの、特にこれと言ったものも見つからず。放棄された宇宙港すら見えなかった。


「移動手段と…あと金が欲しいな…」


何も見えない土地で、周囲を探索する為の機材。それから再活動をする為の資産が欲しいと口にし。そこでスフェーンは安易に自分のレッドサンの口座の事が数多に浮かぶと、そこでルシエルが言う。


『レッドサンの口座を使用するのは危険と判断します』

「は…?」


自分は今口に出していないはずだぞと異変を瞬時に感じて首を傾げると、ルシエルは少し誇らしげな様子で訳を教えた。


『私はスフェーンの思っている事も全て理解しております』

「心読めるのかよ…」


つくづく、自分に憑依?したルシエルという存在にさらなる疑念が深まる訳だが、正直この自分の状態も良く分かっていないので何もかもが暗中模索と言う…。


『それはまあ今気にする問題ではありません』

「サラッと置くのな…」


そんなルシエルの対応にやや肩をカクッと落としつつも目の前に続く線路を見る。


「とは言ってもな〜…」


金がなければ何も始まらないのも事実、かと言ってここには何も無いのも事実。

外に抜け出したとはいえ、今の自分を見て誰もレッドサンと思うはずもないし、何より…


「裏切られたからな…」

『そうです。あなたは裏切られた側の人間であり、死んだ人間の口座が動けばまた狙われる危険があります』

「…はぁ」


そこで大きくため息をついたスフェーンは外の探索を一旦諦めた。


「仕方ない、近くを探索する移動手段でも探さねぇとな…」

『幸いにもここは放棄された建設現場です。建設機材の他、移動手段となるものも残されているでしょう』


そして元来た道を戻るように建設現場に戻って残された資材や機械を見繕う。


「ん?」


そこで資材を見ていたスフェーンは線路の上に並んだあるものに目が入ってそれに近づいた。

そしてそれを見たスフェーンは口笛を軽く吹いて上機嫌になった。


「ヒュ〜、大当たりだ」


その建設現場の線路の上には一本の埃塗れの列車が静かに眠っていた。

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― 新着の感想 ―
やはりコピーでなくオリジンなのね
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