#68
ゾロゾロと出てきた男達にスフェーンはやや呆れる。
「金持ちの馬鹿野郎が…」
そんな彼らを見ながらスフェーンはヴェイプを一回大きく吸う。
「では、料金のお話をいたしましょうか」
スフェーンににこやかに聞く少年、その目は少々自分を下に見る目をしていた。
「はぁ…」
そんな少年を見ながらスフェーンはヴェイプを片付ける。
「んじゃ、」
そしてしまった時、下げていた手榴弾のピンを引き抜いた。
「っ!?」
その動きに一人が反応して引き金を放つと、その弾は手榴弾に命中すると中から白いガスが吹き出した。
「馬鹿っ!何して、」
その瞬間、少年に首元に銃剣が当てられ。その耳元で銃声が四発聞こえる。
「ぎゃあっ?!」
「ひっ!」
耳元で銃声を聞いたので、少年の鼓膜が破れて血が流れるがそんなことはお構いなしに少年の首を絞めるスフェーンは持っていた拳銃の引き金を二発弾く。
「うわ…!!」
そしてそのまま少年を連れたまま留置線を走り、それを後ろから男達も慌てて追いかけ始める。
「追え!」
「くそっ!」
そして首を絞められながら留置線を引きずられる少年は一瞬で起こった出来事に困惑しており、同時に耳鳴りが激しく脳を揺さぶっていた。
「おっ、お前!」
「悪いね坊ちゃん」
その直後、少年を引きずるスフェーンは貨物ターミナルを出るとそのまま近くの露天マーケットに駆け込む。
「誰k…むごっ」
叫ぼうとした瞬間にスフェーンは少年の口を塞いでマーケットを抜けていく。
「止まれ!」
「止まらんと撃つぞ!」
後ろでは拳銃を構えるさっきの男達、
「さて、ご主人様に撃てるかい?」
そこで傍に抱え得て引き摺る少年を盾に走ると、銃弾が飛んでくることは無かった。
その間に持っていた拳銃のロックを外して使い切った薬莢を弾き出す。
「っーー!!」
そんな彼らに口を塞がれた少年は怒る様子を見せ、そのまま薄汚いマーケットの裏通りに逃げ込んだ。
「よいしょ…」
「っ!お前!こんな事をして許されるとでmムゴッ」
建物の壁に放り投げ、スフェーンを睨む少年の口に銃口を入れる。
「話す相手には気をつけるんだな。坊主」
口の中に中を突っ込む。
「ぼ、僕を殺したら…パパが…」
「パパだぁ?良いか、よく覚えておけ」
呆れた顔でサングラスを取る彼女は銃口を少年の口に入れたまま睨みつけて話す。
「お前さんみたいなドラ息子ほど、世間じゃあ食いもんにされるんだよ」
そこで拳銃の引き金に力を掛ける。
「まっ、待って!」
「パパに教わらなかったのか?良く生きろって」
そしてスフェーンは灰色の生気の無い瞳を向けると、そのまま少年に言う。
「生半可に悪い奴はな、ほんとに悪事を働く奴らの食いもんになるんだ」
「っ!!」
そしてそのままスフェーンは銃の引き金を弾いた。
「あっ…がっ…」
しかしカチッと言う音が聞こえただけで銃弾は発射されず、勘違いを起こした少年はそのまま口から泡を吹いて気絶していた。
「搾取するのは良いが、相手をよく見極めなさいよ」
そう言い呆れるスフェーンはハンカチを取り出して少年の唾液で汚れた銃口を丁寧に拭く。
せっかく貰った拳銃を汚い子豚の口で汚してすまないと内心謝罪をしながらその場を去ろうとした時、
「居たぞ!」
「やっべ」
路地裏に現れたさっきのこの少年の護衛の男達が現れ、スフェーンはそのまま路地裏を後に走り出すと後ろから追いかけてくる男たち。
「めんどくさいなぁ、もう…」
『スフェーン、その道を右に』
「ういっ」
ルシエルの案内に従って逃げていると、そこで少々想定外の事態が発生した。
「うげっ」
飛び出た目の前に現れた大量のゴミの山、それで通路が塞がれていたのだ。これには流石にスフェーンやルシエルも驚いてしまう。
「どうしよう…」
『至急別ルートを策定します』
後ろからは例の男達が走ってくる音がし、どうしたものかと考えた時。
「おーい」
「?」
突如声が聞こえる。周りに人はいないので自分に話しかけているのだろうが、どこからだと思っていると、
「こっちこっち」
ゴミ山の下からヌッと手招きする影が一つ、その奥から話しかけてくる。
「…」
それに怪しむも、後ろから面倒な奴らが追いかけて来ているのでスフェーンは拳銃を持ったままその手招きをした方に入ると、中は陽の光も入らないほど暗く、少し屈むほどの高さの地下水路だった。
「こっちだ」
そして通路の奥で声が聞こえると、一つの影が通路の角から聞こえ。スフェーンは拳銃に弾薬を装填しながら声のした方に向かう。
「…」
そして上では足音がしてスフェーンを追いかけていた男達が探している中、角を曲がると。そこは大きくひらけた地下水道だった。
水が少し臭いので、おそらく下水道だろう。まぁ、屎尿の下水道は病魔の温床だから人が入れないので雨水用の奴だろうが…。
「っ!」
「うわっ!」
そして気配がしたので、その方に拳銃を向けるとそこでは一人の少年が両手をあげていた。
「君は?」
「そっ、その前に銃下ろしてくれ。敵じゃない」
茶色のベストに帽子、ダボダボの当て布のされたジーンズに使い古した革靴を履く少年を見たスフェーンは悪意はないと感じると銃を下ろしていた。
「ふぅ、ありがとう」
そんなスフェーンに安堵の息を漏らし、そして感謝する少年。一応、銃は手に持ったままなのだが…。
「助けてくれてありがとう」
「ど、どういたしまして」
取り敢えずスフェーンは窮地を脱させてくれた目の前の少年に感謝すると、その少年は少し嬉しそうに笑いながら少し顔を赤くしていた。
「取り敢えず街まで案内するよ」
「ありがとう」
少年はそう言ってスフェーンをエスコートしようとする手前、思い出したように自己紹介をした。
「僕はペグ。よろしく」
「スフェーンよ」
そこで拳銃を仕舞って軽く握手を済ませると、ペグはスフェーンを案内する。
「ここは?」
「コンベアの地下水路。この先で谷に雨水や地下水を流しているんだ」
地下水路の点検用通路を歩きながらスフェーンは目の前のペグという少年の後を歩く。
「何で助けてくれたの?」
「まぁ、簡単な理由さ」
どこか晴れやかな様子で答える彼はそこで少しスフェーンに振り返った。
「街で追いかけられてる女の子がいたら、助けない訳には行かないだろ?」
「…そう」
そんな少年の純粋な好意を感じ取ったスフェーンは少し目を伏せて短く頷くと、地下水路に差し込んだ明るい太陽の光を見る。
「大きいわね…」
下では水を谷に流す人工の滝が瀑布と化して谷の奥底に流れていた。
「こっちだ」
ペグの案内で地下水路を出たスフェーンは彼の案内を受けながら大峡谷に沿うように建てられた建物や、坂道を登って行くとその途中でペグが谷に沿うように建設された鉄鋼製の細い幅の線路が伸びているのが見えた、俗にいう軽便鉄道だ。
「おーい!」
するとペグが線路脇に立って大きく手を振りながら声をあげると、遠くでエーテル機関が動き。少々古めかしい小型のロッド式機関車が少し速度を落とした。
「あれに乗って」
「飛び乗るの?」
「そう」
そして速度を落とした機関車に合わせるように二人は軽く走る。
「よっと」
「ほっ」
そして後ろに連結されていた無蓋貨車の取手を握ってそのまま梯子を登って貨車の中に入った。
「よぉペグ、休暇に女の子誘ってデートか?」
すると先頭の機関車の窓から運転士が顔を覗かせてスフェーンを見ながら一言。
「おう、そんなとk痛っ!」
余計な事を言いかけたペグの頭を一回叩くと、運転士はケタケタと笑う。
「はっはっはっ!よかったぁ、お前に彼女ができたかと思ってヒヤヒヤしたぜ」
「うっせぇ!」
そんな運転士にペグは少し反論するも、交流があるようで軽い様子で伝える。
「上の街までこの子を送る。斜行エレベーターまで」
「おう、これからちょうど行く予定だ。お前ら運良いぜ」
そう答え、機関士は速度を少し上げる。貨車は空だが所々汚れているので、恐らくここの鉱山で産出した鉱物を運ぶのだろう。
ここの鉱山の主な産出品は錫とシリコン、峡谷に伸びた数多の軽便鉄道の路線は産出、精錬、加工までを一括して行う為に必要な物であり、上の貨物取扱ターミナルまで運ぶようになっている。
そのため峡谷には多くの路線が網目のように繋がっており、あの橋以外にも峡谷をあちらこちらで繋いでいた。
「こいつはクロード、軽便鉄道の機関士だ」
「どうも、クロードだ。よろしくな」
「スフェーンです。よろしく」
そんな機関士に挨拶をするスフェーン。
「んで、どうしたのこの子?」
クロードが聞くと、ペグは言う。
「街で猫に追いかけられてたの」
「あぁ、そう」
それを聞き、スフェーンを改めて見ると軽く頷いた後にそりゃ大変だと言った。
「んじゃ、乗り心地は悪いかもしれんが。それまで乗せてってやるよ」
「ええ、よろしくお願いします」
スフェーンも会釈をして貨車の中で小銃を前に持って背を預けながら峡谷を見ていると、ペグに聞いた。
「貴方はここで働いているの?」
「ああ、コイツは鉱床で機械工の仕事だ」
「お前が答えるんかい」
スフェーンの問いに運転台のクロードが答えた事に突っ込むペグ。
「良いだろ、彼女じゃねえならよ」
「まぁ…そうだがな…」
「色目使うなら殴るよ」
そう言ってペグの前に銃床を突き出すと、クロードは再び笑う。
「あはははっ、こりゃダメだな」
「ひでぇなぁ」
そんな事を話しながら峡谷を登っていると、
「ん?」
その時、ふと列車の後ろから何かが近づいて来ているのが見えた。
「何あれ?」
スフェーンが後ろを指差しながら溢すと、ペグは叫んだ。
「おい!ドラ息子のお出ましだ!」
「ペグ、手伝え!」
目も合わせる事なく機関車に飛び乗ったペグは愚痴る。
「畜生、誰かチクったな」
「どうせ余所者だろうさ」
その後、スフェーンを一瞥すると彼女は後ろから追ってくるそれが何かをわかった時に一瞬驚く。
「っ!マジかよ…」
それは一台の車のような車両、明らかに装甲化の施された砲塔付きの一両の車両。
「軌陸車じゃんか…」
荷台に武器を持った数人の兵士が乗るトラック改造の軌陸装甲車だった。




