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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
六両

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55/339

#55

トラオムには多くの都市が存在する。

大災害を終えた後でも生き残った人々は、そこで残った都市や工場を稼働させて生きる。


そして企業同士の争いは、時に都市をも巻き込む騒乱へと変わって行くこともあった。






現在、絶賛仕事を求めてとある都市に訪れているスフェーン。

先の仕事で懐が潤っている彼女は本当は休息をとっても良いのだが、現物資産に変換して保存する事を選んでいた。


「金ですね。少しお待ちを」


貴金属店でスフェーンは金の延棒を注文する。初めは首を傾げられたが、事情伝えると納得してくれた様子だった。完全サイボーグと間違われてなきゃ良いけど。


この世界において金やプラチナと言った貴金属は滅多に値崩れをしない安定した資産として重宝されており、一定の収入のある会社員などに銀行は純金積立と言った商売を展開していた。


運び屋や傭兵と言った安定しない収入の人間でも自分の資産として貴金属のインゴットを購入するほどで、纏まった収入や貯金がある程度貯まった所で交換している。

こう言う貴金属の他にも銃弾なんかも資産としての価値はあり、しっかりと保管をすれば永遠使えるのでそちらもまた貴金属と同様に安定した資産の一つとして扱われていた。


そして先にダイヤル式金庫を購入した後、スフェーンは残った資産を投じてインゴットを購入していた。


「こちらですね」


そう言い、店員は数本の金の延棒を現物で出してくる。

主に資産として取引される貴金属には金・銀・白金・パラジウムがあり、この中で最も安定しているのがパラジウムなので、長期的な保有を考えるのならこれを選ぶことが多い。まぁ、元々取引量が圧倒的に少ないので滅多にお目にしないのだが…。


「ん…」


そして購入した店の信用や手に取った時の感触から本物と確認すると、スフェーンはそれを鞄の中にしまう。

単純に資産として保有し、いざ仕事がなくなった時の保険として保有していた。まぁ、運び屋の仕事が無くなるなんて事は無いのだが…。


『昨日、マーリンⅣに於いて都市規則をグリーンボウル規則書に置き換えるための法案が可決され…』


ここ最近、急激に影響力を伸ばしているグリーンボウル。傭兵時代はそれほど興味なかったが、今の体では死活問題であった。


『グリーンボウル規定書は急速に広まりつつあるようですね』

「児童労働の禁止はキツイよなぁ」


グリーンボウル規則書の中にある児童労働の禁止、見た目が幼女のスフェーンにとっては仕事ができなくなる可能性のある厄介なやつであり、実際グリーンボウルに行った時は門前払いされてしまった。


「今どき児童労働なんか当たり前だろうに…」

『治安向上の為の措置なのでしょう。そしてグリーンボウル規則書は書かれている事自体は、一般大衆にも広がり易い内容ですので』

「まぁ、参考にはされるか」


児童労働禁止の原則は他の都市でも思う部分はあったのだろう。故にあくまでも参考にしただけで、児童労働に関する記述はない規則の都市が多いのもまた事実だった。


このグリーンボウル規則書ができた時代はまだ、完全サイボーグの技術はそこまで浸透しておらず。まだ値段も張る代物だったので、子供との判別は簡単だった。


しかし時代は進んで、今は完全サイボーグと言うのは高いが、市井にもその名が知れ渡るほどの技術力に落ちていた。

故に、自らの体と内臓を担保に完全サイボーグ化し子供の体になってスラムに逃げ込む輩がいた。

そんな奴との判別方法は喉の機械化を確認するのだが、この検査も触っただけではわからないように改造を施された物があり。子供だけに投資をしたい企業とのイタチごっこと化していた。


「スラムで生きるような奴はそんなヤワじゃ無いがね」

『えぇ、ブルーナイトや彼等の拾ってきた孤児は揃って才能がありましたが…』

「ジェロは違うね。あいつは見境なく拾ってきていた」


そう言い少し懐かしんでいると、スフェーンは右手で背負っていた散弾銃のレバーを左手で動かすと、そのまま銃床を真後ろに近づいていた一人のサイボーグの男に傾け、そのまま至近距離で空砲を発射した。


「ギィヤァアッ!!」


爆圧で目を破壊され、そのまま破壊された目を手で覆いながら悲鳴をあげて仰け反った。馬鹿め、散弾銃が見えていないのか?サボット弾を使われないだけマシだと思え。あぁ、耳横で撃ったから肩痛ぇし耳鳴りもする。

そしてそのまま全速力で逃走、今は金インゴットと言う狙われ易いものを持っており。事実、こうやって襲いかかりにくる奴がいるのだ。




その後、無事に金インゴットを金庫に運び終え。貯金を済ませると、部屋で少しスフェーンはカバンを置いて休憩する。


「ふぅ…今時は金を買うだけでも一苦労か」

『現物を買えば狙われるのは当然です。ましてやその容姿では…』

「不便なこったねぇ」


一応、金の延べ棒は番号で管理されているが、こんな簡単に人が死ぬ世界だ。死亡届が出た人物のインゴットは誰の所有物にもならなくなり、拾った人物の物になる。


「取り敢えず、仕事を探しますか」


換金をした事で財布は空っぽになったスフェーン。紺色のナッパ服を着ている彼女はそこで視界に運輸ギルドの仕事を探す。


「ふむふむ…」


ギルドの依頼は実に多種多様だ。一般的には運ぶ荷物があるだけなのだが、企業から個人のものまで実に多彩であり。そこに運送業者も関係なかった。


「おっ」


そんな中、スフェーンはある依頼を見つける。


「廃墟都市への運送か…」


それはとある個人事業の会社からの依頼で、今は廃墟となった都市に荷物を運ぶと言うものだった。依頼料も悪くない。


『内容はいつも通りですが、少々危険な線路を渡る必要があります』

「何、そんなのはいつもの事よ」


こんな荒廃したした世界で『絶対安全』という言葉は『軍警特殊部隊も採用』と言う謳い文句と同じくらい信用ならない。

どんなに危険度が低い鉄路でも野盗が出る時は出るものだ。


『いざとなれば援護致します』

「えぇ、いつも頼りにしているわよ」


スフェーンはそう答えると、依頼を受け。早速行先が指定されると、貨物ターミナルを移動して荷物の受け取りに向かった。






今回向かう都市はシディム。その地域を示すかつては二つの都市があったが後に統合。ただし大災害とその後の戦災、並びに空間エーテル濃度の上昇によって捨てられた街の一つであり、一般的には死の都市として近づかないと言う。


「そんな場所に依頼とはね…」


早速荷物を積載し、中身は食料品だと言うそのコンテナ。数は大型が五つ。


『検索をした所、良い噂も悪い噂もない企業です』

「…そうか」


早速その依頼をした会社を検索をしたルシエルにスフェーンも納得した後に被っていたキャップ帽子を一回被り直すと、ベッドの上で少し考え事をしていたが。


『スフェーン』

「あぁ、来たね」


その瞬間、列車の防御兵装が顔を覗かせて射撃を開始し、同時に迫撃砲の砲弾が空に上がる。


「全く、イキが良い獲物は狩られ易いってね」


そう呟きながらオートマトンに乗り込むと、そのまま格納庫を開けた。


「よっと、」


そして走行中の列車から飛び降りる荒技を見せると、そこでホバー移動をしているオートマトンに持っている25mm自動小銃を向けて引き金を弾く。


『うあっ』

『何っ!?』


そして飛び出してきたオートマトンのコックピットに連続で命中すると、一台が撃破される。


「ひゅ〜、馬鹿どもでいっぱいだ」


しかし一台を破壊したところでその後に十台が出て来れば意味なかった。


『降伏しろ』


銃口を向けながら聞いてくる野盗にスフェーンは小馬鹿にした表情で答える。


「馬鹿じゃないの?」

『…ならば死ね』


安い挑発を買ったスフェーンはその直後に上に飛ぶと、


『『『『うわぁぁぁああっ!?』』』』


列車から放たれた迫撃砲の砲弾が一斉に着弾し、スフェーンを囲んでいたオートマトンの集団は一斉に破壊されていた。


「ほーら、言わんこっちゃねぇ」


オートマトンを密集して配置するのは戦場では愚の骨頂。事実、引火したオートマトンの銃火器が暴発して手榴弾の如く連鎖爆発を引き起こして悲惨な状況になった。


「ミンチよりひでぇや」


一気に残骸となったオートマトンを見ながらスフェーンは溢すと、列車のいる方角から光線が反対側にすっ飛んでいき。その直後に盗聴する無線から悲鳴が聞こえる。


「おぉ、まだ居たの」

『処理は済ませました』


すると第二射が発射され、荒野の土をすこし赤く蒸発させると同時に野盗なども燃やしていく。


「何台?」

『エーテル反応は十四、大型が九と小型が五です』

「オートマトンとサイボーグの集団ね」


中々にゴツい集団だと感じながらスフェーンは燃えるオートマトンの残骸を確認すると、そこで残っていたエーテルを確認する。


「さて、帰りにスクラップに出しますか」


そして残ったオートマトンも順次確認して行き、追加報酬を楽しみにしながら荒野を後にした。






廃墟都市シディムは、この前のラストタウンと異なり。戦乱と空間エーテル濃度の上昇により、住む事ができなくなった都市だ。だが周辺には高純度の塩分を採取できる塩湖が残されており、上質な塩を採取可能だった。


キキッーーー!!


駅に進入し、そこで完全に停車させるとスフェーンは背中の散弾銃を取る。他の拳銃や予備弾は持っていかない。

そしてこの前鍵を増設した列車の扉を開けてホームに降りると、そこはかなり荒廃していた。


「…」


所々崩れ、ボルトの外れた駅名標が地面に落ちているような状況。スフェーンは瓦礫を避けながら駅を歩いて街を見回す。


「酷いな…」


こんな所に本当に依頼主の会社があるのかと思うとその直後、


ドォンッ!


発射された銃声を聞いてスフェーンは体を翻すと、さっきまで立っていた場所に銃弾が穿った。50口径はありそうだ。


「おっと」


そして直後に赤い光線が地面に命中すると、床のタイルが真っ赤になって溶けていた。


「レーザー持ちか…」


直線でしか通用しないが貫通力は無類の高額な光線銃、そんな物を使うとはここは軍警の施設か何かか?


「逃げよ」


明らかにヤバイ場所と思ってホームに向かって走り始めた時。


「うごっ…」


突如後頭部を思い切り殴られ、そのままスフェーンは地面に倒れると、駅のコンコースから光学迷彩を纏っていた一人の影が現れた。

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