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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
六両

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49/342

#49

ベガスシティでサラという少女から高額な運送依頼を受けた直後、スフェーンは彼女と共に都市の裏路地を走る。


「あれは知り合い?」


人気のない従業員用の通路を走り。時折水溜りを踏む二人、そして少し離れたその後ろで何もない空間に水溜りを踏みつける音が見えた。


「こんな光学迷彩をしながら跡をつけてくる奴なんて知りませんわ!!」

「なら敵か…」


チラリと建物のカーブミラーを見るも、薄暗いここでは小さな影しか映らなかった。


「鞄を」

「っ!」


そしてスフェーンはサラの持っていた鞄を受け取り、スフェーンは裏路地を走りながら拳銃を取る。


バンバンッ!


そして後ろに向かって適当に撃つと、何かに当たって弾ける音が聞こえた。


「ちっ、重装甲か…」


建物のカーブミラーで後ろを見て何も見えず、拳銃弾では歯が立たない事に軽く愚痴ると、サラに言う。


「この先のカジノで落ち合いましょう」

「りょ、了解ですわ」


そこでスフェーンは拳銃を虚空の裏路地に向けて放つと、当たった弾丸の衝撃で一瞬剥がれた光学迷彩を見る。


「あそこか…」


そして連続で拳銃の引き金を引くと、命中した拳銃弾が装甲の関節にハマって光学迷彩が解けた。


「おぉ…」


そして現れたのは身長が二メートルはある巨大な黒服の大男。


「マジかよ…」


まず間違いなく重装甲サイボーグであり。眼球の形状から完全サイボーグか、あるいは重装甲アンドロイドだろう。


「熊かよ…」


まるで自分は巨大な熊に立ち向かう猟師のような気分だったが、生憎と猟銃は装備していなかった。

するとその大男はスフェーンを視界の真ん中に収めると、聞いてくる。


「誰だ貴様は?」

「あのお嬢様に雇われた人間だよ」

「そうか…」


その瞬間、その大男はその手に似合わない大きさの拳銃を向ける。


「あの女に雇われたと言うのならば貴様が取れる選択肢は二つ。逃げるか、死ぬかだ」

「ああそう、」


その瞬間、彼女は少し目を瞑ると預かった鞄を置いて建物の方に滑らせ、ジャケットの下から銃剣を取り出す。

そして銃剣の電源を入れると刃の部分が赤くなり、周囲の景色を歪める。目の前のサイボーグ相手であれば、全損するが制圧出来る威力の得物だった。


「……そうか」


スフェーンの姿勢に少し残念がると、彼は太腿から内蔵された機関銃を取り出すとスフェーンに向かって発砲した。


「おっと」


その瞬間、大男の足元に滑り込んだスフェーンは股下から射撃をすると、至近距離で金属がめり込んだ音を聞く。


「ちっ、ここもダメかよ…」


そこで金属音がし、尚且つ男の見た目をしていると言うことは。この大男は重装甲の大型アンドロイドと判別できた。あるいは生殖器を取っ払った完全サイボーグか…どちらにしろ、急所が一つ減っているので厄介な事に変わりはなかった。そして、


「ぬおっ?!」


股下に滑り込んで背中に回ったスフェーンは、そこで背中から突き破るように現れた二本の機械の腕に驚くと、彼女は瞬く間に左腕を三本目の腕に掴まれ、うっかり手離した拳銃はそのままもう一方の腕に掴まれて簡単に握りつぶされた。

反射的にスフェーンは銃剣を大男に投げつけると、そのナイフは大男の右の鎖骨に突き刺さった。


「ちっ…」


そして宙吊りにされ、右腕を掴まれたスフェーンに大男は前を向いたまま聞く。


「あの女を何処にやった?」

「さぁ?」


その瞬間、スフェーンを掴んでいた左腕がクシャッと潰された。


「っ!!」

「次は脚だ」

「っ、随分と手荒いな…何を焦っている?」


スフェーンは少し苦悶の表情を見せた後に大男に聞くと、彼は言う。


「貴様には関係のない話だ」

「はっ、よく言うよ。ホテルから私らを追跡してたくせして」


そう言い、スフェーンは大男と話す。


「私が気づいていないとでも思ったか?大方ホテルから追跡した後に、あのお嬢様を攫うか殺すつもりだったんだろう?」

「……」


スフェーンは長年の経験が物を言い、ホテルの入り口から感じていた視線の事を口にする。


「貴様のような機体は昨晩も見ている。…彼女はライバル社と言っていたが、それは恐らく違う」

「…」

「貴様の機体は特注で作られたアーマープレート持ちの強襲型重装甲サイボーグだ。そんな奴が街中で歩く時点であのお嬢様を消すつもりなのは容易に想像できる」


そこで彼女の右足を狙っていた四本目の腕の動きが止まる。


「そんな管理や購入に一個小隊レベルの運用資金が掛かる強襲型重装甲サイボーグを数機も投入できる時点で、この街でそれを扱う権限のある人間は限られてくるよ」

「…どうやら私は貴様を排除する必要があるらしい」

「おっと、図星で何より」


するとそのサイボーグの肩から現れる小型ガトリング砲。この距離であればスフェーンを簡単にミンチに出来るほどの威力だ。


「貴様に遺言は必要あるまい」

「おっと、そりゃ酷い。私まだ乙女なのに」


どこか悟ったようにも、余裕にも見えるその口調にサイボーグは無言でガトリング砲を動かした瞬間。


ドォン!!


ガトリング砲の基部から丸ごと吹き飛ばされ、サイボーグの男の側頭部に一発の銃弾が突き刺さった。


「スフェーン!」


銃声のした方を見ると、そこでは両手にKS-23Mを構えているサラの姿があった。彼女の目は必死めいており、半分涙目であった。なんだよ、カジノに隠れたんじゃなかったのかよ。


「あら、サラお嬢様」


そんな彼女に涼しい表情で答えるスフェーンだったが、彼女を掴んでいたサイボーグが側頭部に銃弾が命中したのにゴゴゴという音共に動き始めたので、サラは慌てて腰から一丁の拳銃をスフェーンに投げつけた。


「これをっ!」


そして空中を回転しながら投げつけられたリボルバー拳銃は綺麗に残っていた左手で掴むと、それを見て軽くスフェーンは苦笑する。


「はっ、リボルバー拳銃とはね」


世にも珍しい中折れ式の回転式拳銃のMP-412 REXを手に取ったスフェーンは上からサイボーグの頭や破損したガトリング砲の破口に向けて引き金を弾く。


ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!


五発を叩き込み、動き始めていたサイボーグは動きを止めた。


『内部のエーテル機関の停止を確認。敵サイボーグの破壊を確認しました』

「ふぅ…危なかった……」


至近距離から発射された拳銃弾ですら装甲にめり込むだけで貫通しないその堅牢さに、スフェーンは軽く冷や汗を掻いてしまった。


「久々に肝を冷やした…」


そこで拳銃を片手に、宙吊り状態のスフェーンにサラが近づいた。


「スフェーン?!」

「ああ大丈夫」


不安げなサラにスフェーンは余裕な表情で答えると、残した最後の一発を自分を掴んでいた腕部の関節部分を撃ち抜き、そのまま体重を掛けて腕をへし折った。


「あでっ」


そして右腕に機械の腕を掴まれ、同時にその部分が潰されたまま地面に落ちると、サラが駆け寄ってきた。


「大丈夫?!」

「ええ、」


サラは慌ててスフェーンを掴んでいた金属の手を両手で取ると、そこで潰れた腕を見て絶句していた。


「っ…」


見ただけで分かる使い物にならなくなったそれに、サラは色々と考えてしまった。

自分の問題に無関係の人間を巻き込んでしまった罪悪感、するとスフェーンは軽く笑ってサラに答える。


「大丈夫ですよ。サラお嬢様」

「大丈夫って…あなたその腕……!!」

「あぁ、サイボーグみたいなものなんで」


そう言うと、スフェーンは擱座するサイボーグを見た。


「よ…っと」


初めに脱臼した左肩をグッと押して直すと、次にブランと垂れ下がりながら立ち上がって。先ほど倒したサイボーグの背中に手を当てた。


「ちょっと後ろ向いておいて下さい。グロいんで」

「え?あっ、えぇ…」


困惑するサラだったが、スフェーンの言う通りに後ろを見ておくと。

彼女は倒したサイボーグから燃料のエーテルを残った右手で直接触るとそこで彼女の大きく細くなった腕は徐々に膨らみ、代わりにエーテルタンクの残量がなくなった。

そして戻った手で鎖骨に突き刺したナイフを抜き取ると、案の定壊れて刃がボロボロになっていた。


「もうよろしくて?」

「ええ、いいですよ」


そして腕を引き抜き、視線を元に戻したサラに元通りになった腕を見せる。


「ほら元通り…」


するとその瞬間、スフェーンをサラは強く抱きしめていた。


「ごめんなさい…無関係のあなたを巻き込んでしまって」

「……」


そう言って更に強く抱きしめるサラに、スフェーンは言う。


「それは、あなたのお家騒動でですか?」

「っ!…知っていたのね」

「まぁ、流石に調べますよ」


散々軍警の世話になり、やたらと自分に関わって来ようとする目の前のお嬢様に関してスフェーンはルシエルに色々と調べさせていた。


「まぁ、初めから違和感はありましたよ」

「?」


そこでスフェーンは初めに出会った時の事を話す。


「初めて会った時、腕動かなかったでしょう?」

「え、えぇ…」

「実はあれ、サイボーグの動きを封じるための特殊な電波流していたんです」

「っ!」


そう言いながら次にスフェーンは彼女の手の中にある散弾銃を見る。


「おまけに貴方はその大口径散弾銃を片手で扱える。その時点で貴方の腕はサイボーグで出来てると分かりますよ」


そして地面に置いたリボルバー拳銃を手に取りながら続ける。


「今の一般的な上流階級の人間の文化では、生身の人間こそ最も美しいとされるヌヴォ・ルネサンスが流行っており。己に一切のサイボーグ化をしない事が美しいとされている」


そしてロックを外し、銃身と弾倉を前に折って中の空となった薬莢を弾き出す。

古い薬莢式の弾丸だが、一般的なサイボーグ相手には優秀なストッピングパワーと程良い貫通力から未だに需要のあるマグナム弾。コイツだけはケースレス弾が主流の今の時代でも、古き良き真鍮製の金属薬莢を残していた。


「でも、いつの時代にも流行に乗らない跳ねっ返りは居るわよ?」


そう聞くサラに、スフェーンは遠くにやった鞄を回収しながら答える。


「その線も考えましたが。このサイボーグに積まれた多彩な武装とその目的、昨晩の襲撃の時に貴方が有無を言わさず銃を抜いていたことがその答えでは?」

「…負けたわ。よく見ているわね」

「昔からの癖なので」


そこでスフェーンから鞄を受け取ったサラは散弾銃を腰に仕舞うと、序でにスフェーンは拳銃も返そうとしたが。


「それはあげるわ。貴方の拳銃、壊されちゃったでしょう?」

「…あぁ、そうですね」


そこでスフェーンは今まで使ってきた拳銃が粉々になったのを思い出すと、サラからその拳銃をありがたく受け取る。


「どうも」


そこでジャケットの内ポケットにそれを入れると、次にサラの手を取りながら聞いた。




「そして貴方、本当はスラム街生まれなんじゃないんですか?」




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