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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
六両

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46/335

#46

何という偶然か、昼間に車上狙いの現行犯で逮捕された少女は今目の前でハイローラー専用の台でサラッと高額の角チップを賭ける。

なるほど、治安官がお嬢様と言うだけある。あんなハイローラー、中々お目にかかれない。


「ボンボンか…」


確か、サラ嬢とか言われていたか。アレでクラッキングツールを持ってるんだから、何考えているのかよく分からん。


「まぁ、儲かったし今日は良いだろう」


丸チップが角チップにかわり、満足していたスフェーンはそのまま去ろうとした時。


「失礼」

「?」


目の前に黒いタキシード姿のアンドロイドがスフェーンの前に立って、こちらを見下していた。


「何か?」


そんな女性型アンドロイドに返すスフェーン、毅然とした態度を見せているとそのアンドロイドは聞いてきた。


「あちらの女性を見ていらしたので。何か御用で?」

「……」


ああ、いつの間にか睨んでしまって居たのか。

だから彼女のボディーガードは怪しんで声をかけて来たわけだ。いかんな、感情の押さえつけがうまく行ってないとは……。


「いえ、昼間に通報したあの少女が何で此処に居るのか疑問に思ったまでです」


こう言う時は下手に言い訳をすることなく、本当のことを言った方が早く解放される。面倒ごとは軍警に丸投げでよろし。

そう思ってスフェーンはぶっちゃけると、そのボディーガードは一瞬動きが止まった後にあぁ…、と納得した様子になる。


「その事は、どうか御内密に願います。後ほど、御当主様より軍警を通じてご連絡があるかと……」

「ええ、わかって居ます。ただ…」


そこでスフェーンはそこでバカラで勝利をして配当を貰う少女の姿を見る。


「勝手に人の好物を持っていった恨みは消えませんよ」

「……」


そう答えると、スフェーンはカジノを後にして行った。

そんな彼女の後ろ姿を見て、アンドロイドは軽くため息を漏らしていた。


「お嬢様」

「あら、どうしたのメアリー?」


そしてスフェーンが去った後、アンドロイドはバカラを終えた少女に話しかける。


「先ほどお嬢様の気になされた人物に声をかけてまいりました」

「あら、どうだった?ルシフェルお兄様のご友人だった?」


その時は少し哀れんだような目だったが、メアリーは首を軽く横に振った。


「いえ、お昼の一件の被害者との事でした」

「あらそう…」

「お嬢様、食料品とは言え。人様の物を盗むのは如何なものかと」


少々予想外だった回答に少女は一瞬驚いた後に軽めの笑みを浮かべた。そしてそんな彼女を見てアンドロイドは呆れた様子で答える。


「お嬢様、昼間の行動もそうですが。もう少しお淑やかにお過ごし下さい」

「あら、私は外の景色を見たいだけですのよ?」

「その方法がいけないと申すのです。ましてや人様の列車に潜り込むなど…」


すると少女はそんなアンドロイドに笑って答える。


「でも私を止める事は出来ない…たとえお父様であってもね」


そう答えると、彼女はウェイターの持って来たグラスを傾ける。

するとそこで思いついなような表情を浮かべると、アンドロイドに聞く。


「メアリー、あの列車の所有者は誰か分かる?」

「お嬢様…それは鉄道管理局の個人情報管理規則に違反する事になるかと」


目の前のご令嬢の思っている事に対し、軽く苦言を呈すも。彼女は気にしない様子で聞く。


「問題ないわ。軍警の方で連絡先はどうせ交換しているのだし」

「お嬢様、また御主人様に小言を言われますよ」

「大丈夫よ、お父様は許してくれる」


少女は楽しげに、アンドロイドは疲れた表情で他の護衛と共にVIPルームの休憩部屋に向かって居た。






====






カジノを後にしたスフェーンは、街のちょいとお高めの中華料理店でフルコースを注文していた。

ルーレットの一目掛けで四連続大当たりを引いたので、少し奮発して居たのだ。


「こちら、蝦餃(ハーガオ)でございます」


セイロの中から濛々と溢れる湯気の中から現れる二つの蒸し餃子。小海老丸々と豚肉を混ぜ、透明な皮で包まれた滑らかな外見は食欲をそそる。


「あむっ」


辣油を乗せて一口、海老のパリッとした食感に辣油のピリッとした味蕾を刺激する味。鼻から抜けていく辣油特有の香辛料の香りを楽しみながら海老の食感を楽しむ。

そして噛むたびに纏め役の豚肉や、その他細かく刻まれた食材から肉汁や柔らかめの食感を作り出していた。


「うむ、美味い」


そしれ外の分厚い透明な皮の独特な食感も楽しく、キャッサバ粉でも混ぜている様子だった。

そして次に醤油を付けて二口目を頂くと、今度は醤油の強めな塩味が舌を刺激し。海老の海産物と醤油がうまく噛み合わさり、豚肉とも上手く合わさっていた。


そしてあっという間に二つの蝦餃を食べ終えると、次にセイロが持っていかれ。フィンガーボウルと薄皮に包まれた北京ダックが出てくる。

中の上くらいの店なので、北京ダックは自分で作れと言う体系だったが。スフェーンはむしろこっちの方が自由に盛り付けができるので気に入っていた。


「北京ダックの北京って何なんだろうな」


そんな疑問にルシエルが即座に回答をした。


『北京とは人類の宗祖国に存在した都市名だそうです』

「へぇ〜…」


まぁ、あまり興味のない話だったので話半分程度に返し。スフェーンは本命のアヒルの皮を真ん中に、ネギや千切りされた胡瓜を挟み、最後に味噌を乗せて巻く。

たまに北京ダックの偽物でアヒルの肉だけ切り落として出す店があるが、此処ではそう言った事はなかった。


「はむっ」


そして細長く三つ折りにして折ってそれを口に入れると、炭火で余計な水分が飛んだパリッとした香ばしい皮と、薄ら残った肉のコク。甘めの味噌が合わさり、絶妙なバランスを生み出す。そしてくどいかと思った味噌は胡瓜とネギの辛味でギュッと引き締められる。


「流石だなぁ…」


ぜひ家で作って毎日食いたいとも思うが、北京ダックを作る時の苦労を考えると追加で金を払った方が早いとも思ってしまった。




その後、デザートのタピオカ入りココナッツミルクまでしっかり完食したスフェーンは代金を支払うと。ベガスシティのカジノ街を歩く。

俗に言う、統合型リゾートとも言われるこの場所は上流階級の人間の遊び場として君臨しており。道路の両脇には明るい電光掲示が並び、空には巨大な画面を掲げる飛行船が旋回する。


娯楽の為の眠らない街に、スフェーンは少し圧倒される部分もあるが。元々こう言う生活とは無縁だったが故に、自分には関係ないと分け隔てを作ることができた。

そもそも上流階級とは住んでる世界が違う上に、そう言う人間は上を見上げると際限無い。上はあまりにも高すぎるから、人は見やすい下を見てしまう。


「醜いものだな…」


永遠に人の欲望を掻き立て、そして人を最大に堕落させる合法ドラッグにも近い存在。遠くでは劇場から溢れるジャズの音楽。

優雅なひと時を過ごす為に命を張って金を稼ぎ、それを投じて一時の快感を味わう。


「娯楽とは、最大の麻薬かな?」

『何事も用法用量を守る必要があると言うことです』

「それができりゃ苦労しないよ」


ポケットに手を入れ、貨物取扱センターに戻ったスフェーンは皮肉るように口に出すと、


「素顔は可愛いことですのね。あなた」

「……」


積み上がるコンテナの陰で壁に背を預けて立っていたその少女にスフェーンは足が止まる。


「どうしてここに?車上荒らしのお嬢様」


そこで横を振り向くと、そこではワインレッドのミモレドレスの上から厚手の白いカーディガンを羽織り、特徴的な真珠のブローチを胸に付ける一人の少女。その手にはパーティーバッグを持っていた。

先ほどカジノでハイローラーをしていたあの少女だ。先ほどはカクテルドレスを纏っていたはずで、よくもまぁこんな短期間で着替えるものだ。


「個人的な謝罪ですわ」

「そうですか、謝罪なら軍警を通してください。直接は要りません」


スフェーンはそう断りを入れると、その少女は少し不満げな様子。


「私の直接の謝罪ですのよ?」

「別にあなたがどんな立場であれ、興味ありません。優越感を味わって興奮するほど、私も野獣ではありませんので」


スフェーンの態度を見てその少女は言う。


「あら、中々子供らしく無いですわね」

「面白く無い奴ですみませんね」


そんな不毛な話をする二人。今はスーツに身を包むスフェーン、ルシエルからも様になっていると言わしめたその格好は少女から見てもやや驚くものだった。


「あなた、本当にその歳で運び屋やっていますの?」

「……」


こいつ軍警に袖の下通したな。でなければ軍警が個人情報を被疑者側に流すはずがない。


「ええ、こう見えても指名依頼をこなして来て居るものでしてね」

「あらまぁ…」


スフェーンの実績に驚いて居る様子の少女。これ以上は話す必要は無いと思って去ろうとした時、


「サラ・アンデルセン」


彼女の周りを三人の大男達が取り囲んだ。黒服に身を包み、筋骨隆々な体型をした彼等は少女を囲む。そしてついでに一人はスフェーンの前に立ちはだかって見下す。


「御同行を」

「あら、誰の命令でそんな事を?」


そんな大男を前に毅然とした態度を取る少女は逆に問いかけた。


「あなたならばご存知でしょう?」

「そう…なら、」


すると彼女はパーティーバッグから手に唐草の装飾の施されたS&W M3を持つと至近距離でその引き金を引いた。


「貴様らは私の敵だ」


最初の銃声が貨物ターミナルに響き、その直後に大男達の腕からガトリング砲が出てくると少女に向けられた。


「おっと…」

「動くな」


ガトリング砲を前に持っていた銃を上に掲げると、両手をあげた。するとその時、


「ぐあっ!?」


一人の首元に銃剣が突き刺さり、その上からスフェーンが赤熱したナイフを握ったまま体重をかけて男を袈裟斬りにしていた。

その男は、スフェーンの前に立って彼女の腕を掴もうとした奴だった。


「このっ!ぐはっ!?」


咄嗟に後ろを向いてしまうと、その瞬間に少女が銃の引き金を引いて最後の一人を倒していた。


「助けてくださって感謝いたしますわ」

「私に手を出そうとしたから対処しただけ」


そう言いスフェーンは軽くため息を吐くと、


ッッッッッ!!


「「っ!?」」


連射の銃声と共に反射的に二人して物陰に隠れると、奥から小型ガトリング砲を構える他のサイボーグを確認した。


「ウッソだろ?!」


するとそのサイボーグたちから銃弾の雨が発射された。

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