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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
付属編成 二両目

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419/440

#419

うどん屋で昼を食べ終え、そのまま近場の市内に入ったスフェーンとサラ。


「んん〜、流石に疲れたわね」

「でしょうね」


今日は朝から長い参道を登ってからの軍警察の資料館である。流石に疲れたと言う事で二人は近くの市内のホテルで宿泊をする。


「近くのスーパーで何か買う?」

「そうね。地元スーパーなら何か面白いものでもありそうだし」


サラも頷くと、バイザーでルシエルが調べてくれた最寄りのスーパーに向かう。


「何かここら辺で面白いお菓子とか飲み物は無いのかしらね」

「そうね…」


スフェーンの中で、どこかに行った時の一班の楽しみというのは地元密着型のスーパーに行く事である。大抵、こういう店と言うのは大手チェーンと違い、地元民が食べるようなものばかりを取り揃えているので、『え?これ食べるの?』と言うような驚きの食べ物があったりするのだ。


「…ここら辺はこう言うものばっかりね」

「お惣菜とかも面白いものがあったりするわよ」


棚に並べられた商品には見覚えのあるものもあったりするが、一部見覚えのないものも用意されている。


「明日は海らしいわね」

「ええ、二つか三つくらいよる予定」


スフェーンはそう答えると、レモンサワーの缶や地ビールをかごの中に入れていく。


「ホテルは?」

「近くで泊まる予定」


サラが聞いてくると、彼女はしれっとスフェーンのカゴの中にアーモンドチョコを入れる。


「自分のは自分で買いなさいよ」

「この値段のものでブラックカードなんか出せるとでも?」


完全にたかる気の彼女にスフェーンは呆れてため息を吐く。


「自分のものは自分で買いなさい」

「えぇ〜」


まるで子供のように彼女は不満げな表情を浮かべた。


「セルフレジに使い方は教えたでしょう?」

「…ブゥ」

「ブー垂れるんじゃないの」

「いでっ」


軽く彼女にデコピンを入れると、サラは弾かれた場所をさする。


「全く、この私にデコピンなんて考えられないわ」

「事前に許諾は得ているので」

「昔は乗ってくれてたじゃないの」

「二:六:二の法則ってご存知?」


スフェーンはそう言うと、サラはため息を吐く。


「えぇえぇ、メアリがいなくなって彼女の後釜が貴女って事でしょう?全体の割合は変わらなくなる訳だし」


サラはそう言い、セルフレジの列に並ぶ。明らかにここに並んでいなさそうな色気を振りまいており、もはや『貴族』と言っても差し支えのない雰囲気が漏れていた。


「(引退して何年経ったよ?)」

『今年で二〇年ですね』

「(なのにこの気配ですかい…)」


もはや呆れるしかない彼女から溢れる気品にスフェーンは内心で面倒だけは起こさないでくれよと思いながらレジに向かった。






その後、買い物を済ませて二人は駐輪場に停めたバイクの前に立つ。


「サイドカーでも買えばよかったかなぁ」

「あら、いいんじゃない?前もサイドカーに乗っていた訳だし」


購入したものをサドルバックに入れながらスフェーンの呟きにサラが言う。以前、このバイクを破壊された時の事をふと思い出す。


「そういえばこれ買う前に連続殺人鬼出会したっけ」

「ええ、廃遊園地で出会したのよ。それで懸賞金の一部もらってこれを買ったの」

「だとしたら随分と長生きなことだ。前任車に比べて」


少なくとも数年でお亡くなりになった前のバイク。死因はオートマトンのロケット弾だった気がする。

あの後、収容された刑務所から脱獄を行った二人は司法局から射殺令が降りた稀有な例として歴史に名を残していた。


「煙草いい?」

「良いわよ。私もそろそろ欲しかったし」


彼女はそう言って持ってきたトランクから葉巻を取り出して、先端を切ってから火をつける。


「あら、煙草変えたの?」


そこでサラはいつもスフェーンが吸っていた煙草(ラッキーストライク)ではなく、新しい銘柄(チェ・レッド)を吸っていることに気がついた。


「ええ、知りませんでした?」

「初めてよ」


サラはスフェーンの吸っていた煙草にそう言えばと言った様子で聞いた。


「ねぇ、貴女どうしてラッキーストライクを吸っていたの?」

「ああ…まあ簡単な理由ですよ」


スフェーンはライターで煙草に火を付けてからその訳を話す。


「戦場で配給される煙草はランダムで、当たりを引くと交換したりしてたんだけど…」


そこで彼女はいつから吸い始めたか?と首を傾げて昔の記憶を掘り返す。


「前に吸っていたラッキーストライクって、戦場だと流れ弾が当たるラッキーストライクするかもって言う理由で嫌われて大体みんな吸わないんです。

それで、昔いた傭兵団の事務所に大量に積み上がってて、余ってる上にいくらでも吸って良さげだったからそっからはずっと…」

「ああ、昔からある迷信ね」


 サラはスフェーンが傭兵をしていたことを思い出すと、その銘柄の煙草を吸っていた理由を知って聞いてきた。


「じゃあ貴女そう言うのを信じないタイプだったの?」

「いや?神様とか云々は信じていますよ?ただ死ぬときゃ死ぬんで、どっちかと言うと流れ弾で死ぬより味方に後ろから撃たれる確率の方が高かったんで…」

「な、なるほど…」


しれっと暴露されたスフェーンの傭兵経験談に乾いた笑いしかできないサラ。彼女の前職の全貌はいまだに知り得ないが、今までの断片的な話からなかなかに優秀な傭兵であったことは窺えた。


「酷いとあれですよ。砲撃で隠れていた掩蔽壕が崩れて生き埋めですからね。音とか気にしなくていいけど、なるべく深い場所に行くのは外れ引いて哀れみの目を向けられますよ」


新米はその哀れみの意味を知って傭兵になると言うと、サラはそんなスフェーンの話に顔が引き攣ってしまった。しかしスフェーンはそんなサラのやや引き気味な表情を見ずに煙草を吸っていると、ふと思った。


「…あれ?その前会った時はなんだっけ?」

「お化け屋敷」

「ああそうだ」


スフェーンはまた懐かしい記憶を思い出す。


「あれだ。私を騙してお化け屋敷に行ったアレだ」

「未だに無理?」

「無理に決まってんでしょう。阿呆かいな」


スフェーンのなかなか珍しい苦手なものを知った時間であったが、サラも幽霊系は苦手であったので今思っても何で行こうと思ったのか…まあ、多分。自分が思っていた以上に悪霊への耐久値が高くなかったのが原因だろうが…。


「んで、世暦辺りだとあとはあのパーティーか」

「懐かしいわね。あの買収も上手くいって今はリゾート地よ?」

「流石の資金力なことで…」


スフェーンはアンデルセン家が保有する資金力に苦笑せざるを得ない。


「あの…」


すると駐輪場で煙草と葉巻を吸っていた二人に一人の女性が話しかけてきた。スフェーンはここ禁煙区画だったかのかな?などと思いながら今までの経験で携帯灰皿を取り出した。


「もしかして、サラ・アンデルセンさんですか?」

「?いかにも。私はサラ・アンデルセンよ」

「!やっぱりそうでしたか!」


するとその女性はサラの気品とその顔からすぐに目を見開いた。


「貴女は?」

「あっ、私はただの市民なんですけれど…私の息子がお世話になりましたので」

「?」


彼女の言葉に首を傾げると、その女性は言った。


「アンデルセン財団が支援をしてくれた遺伝子治療で息子は命を救われて…」

「…なるほど。そう言うわけね」


それだけでサラはなぜこのただの一般市民が自分のことを知っているのかを理解した。

彼女が創設を行ったアンデルセン財団は、医療を専門に研究資金を提供する慈善事業団体である。財団が独自に創設した医療大学は、今や最先端の医療を備えた世界一の総合医療福祉大学を誇っていた。そしてこの話しかけてきた女性は、自分の子供がその投資のおかげで救われたと言うわけだ。

事情を知った彼女はすぐに葉巻をスフェーンに預けると、その女性にマダムの口調でスッと背筋を伸ばして女性に答える。


「それは良かったわ。一人でも救われた命があるのなら、良かったわ」


和かに彼女は答えると、女性はサラに挨拶を済ませた後にその場を後にしていった。


「人気者ね」

「所詮は偽善よ」


スフェーンはサラに言うと、彼女は答える。


「人生を通しても使いきれない金は使うに限る。そして金の使い方は金を持った人間が選ぶ権利を持つ」


彼女はそう言いながらスフェーンに預けていた葉巻を回収して再び吸い始める。


「金は天下の回りもの?」

「そうとも言えるけど、さっきの彼女が言っていた遺伝子治療だって。スラム街に住んでた同じ病気の子供に治験を行っているはずよ」

「ああ…」


スフェーンは煙草を吸い終えて吸い殻を携帯灰皿に押し込みながらサラの言う意味を理解する。


「治療費を与えない代わりに治験を行ったってことね」

「そう言うこと」


彼女は頷くと、葉巻を吸い終えて吸い殻をスフェーンに渡して片付けてもらう。


「でも金だけ持ってて死ぬよりかは有意義な使い方じゃない?」

「そりゃあね。世間体からは色々と言われていても金持ちの道楽なの」

「研究にお金かかるもんねえ…」


ヘルメットを被りながら彼女は言うと頷く。


「他の事業で散々儲けさせてもらったからね。庶民がギャンブルを娯楽とするなら、富豪は技術投資が娯楽になるわね」

「最近のブーム?」

「そうね…最近は社交界とかパーティーにも出ていないから分からないけど、そう言う『金があったら技術投資』って言う話はペテン師界隈でよく聞くわね」

「ああ、じゃあそう言う流行だわ」


エンジンをかけてホテルに向かうスフェーンは断言すると、そのままスーパーの駐車場から出て行く。


「でもよく分からない組織に献金を行って人気を上げるよりかは良いんじゃない?ほら、最近有名な俳優とかがよくやってるあれ」


スフェーンは比較で胡散臭いと言い放ったその発言に『ネットで言ったら色々と炎上するわよ』と内心で思いながらサラは返す。


「どうかしらね」

「絶対そうだって」


スフェーンにそう言われ、サラは少しだけ嬉しげに思った。

どうしてもこの年齢ともなってくると自分より年下ばかりが増えてしまい、手放しで評価してくれる人というのは減ってしまっていた。


「貴女がいうなら、そうなのかもね」


サラはそう言い、昔と変わらない背中を見せ続けている老女を見上げた。

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