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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
五両

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34/335

#34

ラストタウンの郊外、丘の裾野に並ぶ小柄な戦車六両。都市迷彩の施された六両の前には二名の搭乗員がそれぞれ並び、総勢十一人の自警団員達は一列に並ぶ。


今の街の人口は鉄鉱石を乗せるための職員とその家族、駅舎の駅員のみ。

かつて街を支えた採掘業者はその営業を停止し、住んでいた住人は蜘蛛の子を散らしたが如く二年で一気に消えた。


「諸君!」


そこで自警団団長のプラウドが発破を掛ける。


「これよりラストタウン自警団の訓練を行う」


戦車を前に彼は残った自警団を相手に言う。彼らは廃都市の一角で時に襲ってくる弱い野盗相手に迎撃をしてきた者達であった。


「訓練には訓練弾を使用する」


既に街の住人は駅の周辺に住居を変えており、その他の地区の建物は廃墟となっており。そこにたまに屯する野盗を迎撃していた。


「総員準備にかかれ!」

「「「「「はいっ!」」」」」


威勢の良い、まだまだ我らは戦えると言う事をしめすが如く返事をした彼らが戦車に乗り始めた。




「ほへー」


そんな様子を街の廃墟となった建物の屋上から眺めるスフェーン。


「街の若い連中は自警団とはね……」


郷土愛溢れた連中か、はたまた町長に無理を言われて入っているのか。

どちらにしろ六両の戦車をこの規模で持っている事に軽く驚く。


『既に廃墟となった地区に野盗が住み着く事は治安維持の面でも危険ですから』

「まぁ、本当に野盗に脅されちまうだろうからね」


双眼鏡で見ながら戦車が動くのを眺めるスフェーン。

丘の上には使い古された的が置かれ、動き出した戦車隊は半分に分かれてそれぞれ小隊ごとに発砲する。


「おぉ、砲声が聞こえらぁ」


90mmリボルバーカノン砲の砲声はスフェーンもよく聞いており、軽く衝撃波を感じる。見た目はとても派手だった。


「流石だなぁ」

『スフェーン、ちょっかいを掛けるとかやめて下さいよ?』

「でも面白くしたいと思わない?」

『やめておく事を推奨します。第一、万全の体制を整えたでしょう?』


ルシエルの強めの言い方に負けたスフェーンは軽く息を吐いて双眼鏡を仕舞う。


「町長にはあらかじめ言っておいた方が良さそうだ」


戦車の砲声が聞こえる中、落ち着いた様子でスフェーンは廃墟を後にしていた。






====






僕はあの運び屋の女が嫌いだ。理由?嫌いな事に理由なんているの?

あのそっけない目や雑な対応、僕たちの街から鉄鉱石を大きい街に運んでは空の貨車を繋いで戻ってくる。

僕たちの挨拶にも適当に返すだけでやる気がない。


それなのにお父さん達はあの運び屋にやけに親切にしている。ナウル達もあの運び屋には同情的な部分があっておかしいと思ってしまう。

なんであんな奴なんかに敬意を払う必要があるのかと思いたくなる。


そして今日もあの運び屋は街にやってきてお父さん達の乗せた鉄鉱石を大きな街に運んでいた。


「……」

「何だ?坊主」

「坊主言うな、僕にはユウキって名前があるんだ」


駅のホーム、散弾銃を背負うスフェーンの横でユウキ達街の子供三人は集められていた。

自警団による自主訓練が行われている中、街の住人を一度一カ所に集める訓練をしていた。駅に集められた大人達は黙々と列に並び、街が保有している気動車を見ていた。その顔は少し暗く、その意味をいまいち子供達は理解していなかった。


「…なるほど」

「?」


その光景を見ながらスフェーンは訓練の意味するところを理解した。そんな彼女の呟きに子供達は首をさらに傾げていた。


「どうかしましたか?」


そしてカオリがそんな様子のスフェーンに問いかけると、彼女は軽く首を横に振った。


「いや、何でもない」


しかしその様子を見てユウキはスフェーンが嘘をついていると直感的に感じていた。


「嘘つき」

「?」


ユウキの呟きにスフェーンやカオリ達は軽く首を傾げた。


「何か隠しているでしょ」

「隠す?何を?」

「惚けないでよ」


ユウキはそこでスフェーンに食ってかかる。


「この駅舎に集められた理由も知っているんでしょう?子供だからって知らなくて良い理由がないとでも?!」

「おい、ユウキ!」

「やめなさいよ」


だんだんと興奮している彼にスフェーンは落ち着いた表情のまま逆に問いかけた。


「ならば聞こう、私の何処が君の癪に触る?」

「全部だっ!」


ガッとなって睨みつけるユウキにまるで慣れているような雰囲気で彼女は彼の目をしっかりと見た。


「はははっ、其の気概は認める。だがな……」


そこで彼女はフードの奥から燻んだ灰色の眼でユウキの黒い眼を見つけると、重めの口調で一言。




「理由無き闘争心は己の破滅を招くぞ」




「っ…!!」


その時の彼女はしっかりと睨んでで見ていたが故にユウキは思わず目線が泳いでたじろいてしまう。



怖い、心の底から恐ろしい何かを見た。



僕達と、目の前の女は圧倒的に違う何かで線引きされているような気がした。

夜中にナルク達と抜け出して廃墟のビルに肝試しに行った時と違う恐怖がそこにはあった。


「世界を知らない青臭い子供は、そのまま殻に閉じこもると良い。其の方が幸せに感じられるからな」


何処か哀愁を漂わせているスフェーンにユウキ達は自分達がどれだけ矮小な存在なのかと言うのを教えられているような気がした。


「知らない事とは罪であり救いでもある」

「へ?」


いきなり何を言ったかユウキは理解できなかった。しかしスフェーンはアドバイスをするように僕達に言っていた。


「これからこの星で生きていくと言うのなら、知らない事もまた長生きをするコツでもあるのさ」


そう言うとスフェーンは自分の列車を止めたホームまで歩き始めていた。


「どう言うこと?」

「さぁ?」

「……」


何を言っているのかさっぱりだったが、やけに記憶に残る言葉な気がしてそれを聞いていたお母さんがそんなスフェーンを見ながら呟いていた。


「あの子は大人なのね……」


其の時の表情は悲しげなものだった。






====






その日の晩、線路近くの区域で灯りが灯る。

大きな灯りだ。時折点滅して強い光を放つそれは、戦闘だった。


『ギャアッ!!』


一台のオートマトンに弾丸が命中し、一撃で爆散する。


『くそっ!一台やられた!!』

『なんて奴だ!!』


視線の先に映る一台の黒いオートマトン、量産された高水準オートマトン。第三世代型のはずなのは確かだ。それなのに……


『なんで当たらねぇ……っ!!』


持っているガトリング砲を撃っているにも関わらず、接近してくるオートマトンは持っていたナイフを投擲し、同時に127mm散弾銃の引き金を弾くと発射された小粒のオートマトン用の散弾は複合装甲を無造作に破損させ、関節を破壊する。


『がぁっ!!』

『くそっ!動かねーー』


投げられたナイフは超音波振動をしたまま腹部に突き刺さり、フレームが折れて頽れる。

散弾が噛んで腕が動かなくなったもう一台はそのまま接近され、至近距離で25mmの弾丸を無数に撃ち込まれる。

足元にいたサイボーグは12.7mmの機関銃でミンチにされていた。


『畜生!畜生!』

『うぉぉぉぉおおおおああっ!!』


そして野盗達は戦車も持ち出して攻撃をするも、其の直後。


『うあっーー』


胴体を包むほどの光線が貫通し、ごっそりと其の部分だけが消え。溶けた金属の赤い光が貫通痕に残っていた。

光線の飛んできた方を見ると、そこでは一本の列車が停車状態で待機しており。其の屋根から一門のカノン砲が顔を覗かせていた。


そして列車に搭載されたガトリング砲は反対側の荒野に向けて放たれると、そこで一度に二台のオートマトンが落伍した。


『うわぁっ!』

『くそっ!』


30mmはオートマトンの通常装甲に負担がかかり、コックピット部でなければ貫通すると容易に破壊されるほどの威力を持っている。するとそこで、奪った30mm狙撃銃を持って飛び上がると光学スコープを除いて其の引き金を引いた。


ドォン!


そして放たれた高初速の弾頭は地面に倒れたオートマトンを破壊すると、荒野の一角にオートマトンやサイボーグ、戦車やターレットの残骸の山を作り出した。


『状況終了、周囲に残敵無し』

「おけ。……ふぅ」


この戦場で唯一生き残っているオートマトン。そのコックピットでスフェーンは軽く息を吐いた。

今日だけで十二台のオートマトン、六両の戦車、十二名のサイボーグ、四機のターレットを破壊した彼女は懐からドロップを取り出して舐めていた。


「増援の気配は?」

『今のところ有りません。物色をする時間はありそうです』

「ん、分かった」


そこで散弾銃を手に取り、オートマトンのコックピットを開けて地面に降り立つと、燃え盛るオートマトンの残骸に近づく。


「うーん、何か目ぼしい物は残ってないかなぁ……」


やっている事は追い剥ぎに似ているが、それと違うのは相手がすでに死んでいる事だろう。


「うーん…」


そしてオートマトンの残骸を手当たり次第に眺め、同時に生き残っている武器やらにマークをしていき、回収もする。


「おっ?」


そして燃えるオートマトンの内の一つ。割れたコックピットから弾き出されたように転がる物資の一つを手に取った。


「ガスマスクか……」


手に取ったのは化学兵器用のフィルターが二つ付いたガスマスクで、顔全体を覆うタイプの物だった。そして側には軍用のヘルメットも転がっており、スフェーンは二つとも手に取っていた。


「うぅ…」


すると残骸の奥からゆっくりと這い出る一つの影、大火傷をおって助かる見込みの無い野盗だった。


「……」


運の良い奴だと思いながら生き残っていた野盗にスフェーンは散弾銃を向ける。


カチャ バンッ


そして生き残った野盗の頭にそのまま引き金を引くと、バックショット弾の大粒なスチール弾が降り注いで野盗は絶命する。

そして絶命した野盗なんぞ元々居なかったように残骸を漁るスフェーン。良い戦利品がいっぱいだとホクホク顔でガスマスクとヘルメットを頭に被る。


しかしヘルメットはサイズが合わなかったのでそのまま残骸に放り捨ててしまった。

ガスマスクは使える範囲だったので吸収缶を確認すると幸いにも新品だった。


「さて、こいつら回収すっか」


一通り探索を終え、戦利品を確認したスフェーンは空の長物車に集めた武器やオートマトンの残骸を載せると荒野を走り出していった。

武器解説

30mm狙撃銃

30mmの砲弾を使用した長銃身を持つオートマトン用マークスマン・ライフル。

半自動小銃の一種であり、長い銃身から繰り出される高い初速は電磁加速砲に匹敵する。

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