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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
五両

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23/335

#23

この星にかつてあった戦争、大災害。


その争いの元となったエーテル。


皮肉な事に、その争いを終わらせたのもエーテルだ。


エーテルに始まり、エーテルで終結した争い。

活性化エーテルの津波に呑まれて残されたのはエーテル機関やそれに関連した技術。残された技術と資材を使って人は生き抜いていた。




海抜100キロ地点のカーマン・ラインまで噴出した活性化したエーテルは惑星全体を薄く卵の殻の様に覆った後、重力に引かれて雨の如く地上に降り注ぐ。今でこそ落ち着いているが、この星の至る所に噴出したエーテルによって出来た痕跡が今でも残っている。


そして降り注いだエーテルは地表の植物を枯らし、永遠の荒野を作った。

エーテルがどう作用して植物を枯らしたのかは、大災害によってほとんどのエーテルを研究していた人物が生き残っていない今。その詳細を知ることはできなかった。


ただ、星の大半から緑が消えたことで人々の生活を徐々に蝕んでいる事は事実だった。






====






タタンタタンと、線路の継ぎ目を車輪が通過した時に聞こえるジョイント音を鳴らしながら一本の列車が単線を走り抜ける。


赤と灰色の塗装されたカーゴスプリンター、五両編成の列車は背中にコンテナを積んで剥き出しの岩の立ち並ぶ岩石砂漠の中を進む。


「うおっ!」


時折、風が舞って線路に積もった砂を砂漠用のスノープラウであるサンドプラウで掃く時に振動が列車に伝わり、奇妙な感覚を感じる。


「ったく、ここじゃあ砂掃きもしていないのかよ」

『ここでは頻繁に砂嵐があると言う事です』

「ああそうかい。だから線路に砂が積もるって訳ね」


依頼を受けて水槽コンテナを運送中のスフェーン。

植物は消えたが、水は消えたわけではないので都市部の水道は問題なく、なんなら雨も降る。


エーテルは水に浸食する事はなく、なんなら人が飲んでも問題ない。

そもそもエーテルが植物に影響する事も本格的な証明があるわけじゃない。関連性があるかどうかと聞かれると大きく頷けないのが現状だ。


『ここは慎重に移動するべきでしょう』

「そうだな……うっと」


時折風が吹き込み、砂埃が舞うこの地は前のウリヤナバートルにも似ていたが。あそこと違ってまじで何も景色が変わらん。


「あっつぅ〜……」


外と密閉されて、外気との温度変化はしないはずなのに暑く感じてしまうのは空に浮かぶ燦々と照りつく日光のせいだろう。


「外出たら死ぬかな?」

『あまりお勧めは致しませんが、現在の健康的なスフェーンの体調であれば少し顔を覗かせても問題ないでしょう』


熱中症の問題がありそうだが、常にローブを付けているスフェーンは少し興味が湧いて自動運転に切り替えると運転室の天井のハッチを開けて外に出た。


「うわっ」


そしてハッチを開けた瞬間から分かった乾いた熱気、差し込む強い日差し。


「あっち〜」


過去類を見ない暑さな気がすると感じるスフェーンは当たりの岩山や、そこに僅かに自生する草を見ている。

枯れた木々が所々に残り、渓谷の底を列車は走る。

ここは周りが砂まみれな砂砂漠に近いこともあって線路に砂が積もること積もること。

雪よりは硬くならないが、溶けて消える事はないので定期的にラッセル車が出て来て線路の安全を取るはずだが、今回はそんな事はなかった。


「ったくよぉ、この先の目的地にほんとに森なんてあるのか?」


そんな愚痴をこぼしながら渓谷のカーブを曲がった時、


「っ!?」


元々視界が広く取れない上にここは渓谷の底。カーブの先で砂の吹き溜まりがあるなんて予想だにしておらず、そのまま突っ込んでしまった列車は派手に溜まった砂を撒き散らした。


「ぶぇぇっ?!」


慌てて運転室に降りたは良いものの、時すでに遅く。スフェーンは至る所が砂まみれになった。


「ペッペッ!!」


口に入った砂を吐き出し、次にローブを取るとザラザラという音と共に運転室の床に砂が落ちた。


「うわぁ…やっちまった……」


駅に着いたら掃除だなと内心ゲンナリしながら灰色の髪に付いた砂を手櫛で落としていた。






そして砂漠の渓谷を抜けた先で見た景色にスフェーンは一瞬圧倒される。


「うわぁ……!!」


そこに広がるは深緑一色の光景。今では珍しい、()()()()だった。


「すんげぇ……」


戦いに身を投じて来た身だから、こういうのに興味なかったが。初めて見たその景色にスフェーンは驚く。


「これが森か?」

『この大きさであれば、森と判断してもよろしいでしょう』


なにせ、これから向かう先の街はこの星でも数少ない。緑で覆われた都市だ、名をグリーンボウルと言う。

森の中央にはここからでもよく見てるほど膨らみを持ったドーム状の巨大な建築物が聳え立ち、そこを囲うように緑のドーナツが出来ていた。


「街の外にも植物が広がっているんだな」

『グリーンボウルは植物栽培によって発展して来た都市です。大災害の後、残った科学者の努力により……』

「はいはい、要は昔にお偉いさんが植物残す研究をしていたって事でしょ。知ってるよ」


知識はアホほどあるスフェーンはルシエルの長々となりそうな解説をぶった斬り、森の中にある複線になった線路を走る。


『現在はグリーンボウル三号線を運行中、間も無く速度制限区間に走ります』


今通って来た路線は裏道に近いルートであり、獣道程ではないにしろそれほど除砂車も走らない区間だ。故にさっきのような事故が起こった訳だが……。


「なーんでこっちのルートじゃないと行けねぇのか……」

『先方の指定されたルートです。仕方ありません』

「あぁ、全く面倒だ」


運んでいるのは水槽タンク、金属製の円柱を支えるように出来たコンテナは確かに水を運んでいるはずだ。依頼では少なくともそうなっている。


「君子、危には近寄らず。ってね」


さっさと終わらせてまた観光にでも赴きたいと思っていると、ルシエルが注意するようにスフェーンに言った。


『でもその前に砂を出してくださいね』

「あっ、そうだった」






植物都市グリーンボウル

主な取引商品は生鮮食品や植物の苗木。

都市全体が緑で覆われたこの都市は、大災害後にエーテルによって枯れ始めていた木々を守る為に、巨大なドームの中に存在する。


ドームの中では植物とエーテルの関係性の研究や、エーテルの降り注ぐ環境に適応した植物の開発を勤しんでいた。


『ここら一体は空間エーテル濃度が極端に低いですね』

「ほぇ〜、だから郊外に森があるんだな」


グリーンボウル貨物取扱センターに到着したスフェーンは運輸ギルドに到着の旨を伝えると待避線で待つように言われ、担当の人間が来るまで先ほど酷使していたサンドプラウの点検を行っていた。


「うーん、問題は無さそうね」


ライト片手に先頭のパンバーなんかに金属の歪みがないかを確認していると、そんな彼女に声をかける人が二人。


「そこの人」

「ん?」


振り返ると、そこには紺色のサイボーグ化された雰囲気の女性軍警が二人。小銃を持って立っていた。


「スフェーン・シュエットを知っているか?」

「知っているも何も、私がその人ですよ」

「「え?」」


そんな二人の反応を見て。あぁ、いつものテンプレだと思ったスフェーンは慣れた様子で運輸ギルドの証明書をみせた。


「これで良いですか?」

「……」


唖然となる軍警の職員、正直なんで軍警が出てきたのかが予測できないが。スフェーンは軍警の人の反応を見ていると、二人は困惑しつつも当初の目的を果たしにきた。


「君の運んできた荷物が禁制品を運んでいた疑いがある」

「……へ?」

「軍警の規則に基づき。君の積荷を臨検させてもらう」

「はぁ……まぁ、どうぞ」


軍警に言われ、スフェーンは軽く困惑した様子を見せながら対応する。

軍警が出て来るのかよと内心愚痴りつつも、運輸ギルドから受けた仕事のログは残っているので何があっても問題ないと目算を立てていた。






その後、軍警の職員二人が臨検をした結果。案の定バッチリ運んでいたものが禁制品の生体培養液であることが分かり、運輸ギルドのログや証言のために軍警の分署に連れて行かれてそれはもう散々な一日を過ごす羽目になってしまい、スフェーンは怒り狂いそうだった。


「ふざけやがってこのクソボケ依頼主がぁーーっ!!」


分署を出てやっと解放されたスフェーンはキレた様子で叫び散らす。


『幸い、今のスフェーンの容姿が相まって無実で通りやすかったのが救いです』

「アタリマエダ!!むしろこれでしょっ引かれたら冤罪で裁判起こすわ!!」


証拠はたっぷりあるわけだし。絶対に勝てると思っていた。


基本的に運輸ギルドより発行された依頼で何か問題が生じた場合、規則上はギルドがその責任を負う事になっている。そして、その規則を破る事は軍警が許さないので、運び屋達は安心して仕事をこなせるのだ。


『今回の依頼主は既に捕縛済みと言うことですが……』

「賠償させてやる……」


そう意気込むスフェーンにルシエルは今回かかった旅費を換算した上での報告をする。


『今回の諸経費や支払われた報酬。それから今後弁護士を雇う費用や裁判を起こす日程を考えると、何もしないのが妥当と思われますが……』

「えぇ……」


出鼻を挫かれた様な感覚だが、既に運輸ギルドから報酬は支払われており。確かに弁護士を雇って裁判を起こしたとしてもまずそこから赤字になってしまうし、日程の浪費となる。おまけに相手からどれだけふんだくれるかも分からないのでそのままにしておくのが一番だった。


『そして裁判を起こすと自然とスフェーンは顔を広く知られる事となります』

「……わかったよ」


ルシエルに言われ、苛立ちを抑えたスフェーンはそのままグリーンボウルの繁華街に向かう。


「ここのオススメは?」

『自然野菜を使った野菜バイキングです』

「うわぁ、健康的〜」


想像するだけで緑緑な景色が脳裏をよぎるスフェーンだったが、そもそもここは緑の都市。名産品が生鮮食品な以上、当たり前な景色なのだなと飲み込んでいた。


「他に何かないの」

『こちら以外ですと、フルーツバイキングとなりますが…』

「そんなに変わってねぇじゃんかよ……」


あっれぇ〜?もしかして来る街間違えたかな?


『しかし、生野菜を食べる事は非常に健康的です』

「私はヤギになったつもりはないぞ」


あの口煩いビーガンにもなったつもりもないと言うとスフェーンは色々と新しい街に不満を漏らしていた。

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