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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
四両

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20/339

#20

ウリヤナバートルにある運び屋のための整備工場。

元々発射場なだけあって、敷地はとても広く。一つの車両基地レベルには発展していた。

コンビニ感覚で貨車や客車、機関車が売買され、時たま客車を繋いだ機関車が一本の列車として出発していくのを見る。


ーーーッ!!


汽笛を鳴らしながら先頭の機関車に繋がれた二十両ほどの食堂車を含めた二階建て客車、基本的に運輸ギルドで人を運ぶ任務は無いので。こう言った中古の客車を買うのは大半が新興の旅客専門の鉄道会社だ。鉄道管理局から運行許可を受けて走らせるのだろう。

大企業?彼等は自前の超特別仕様の豪華列車で優雅な旅路さ。勿論、特別ダイヤでだ。専用路線を使わない感じ、企業同士の牽制があったのだろう。


鉄道が都市間の物資輸送の事実上唯一の手段なこの世界、物資の他にも旅客も移動は鉄道が主流だ。

企業などは一部ヘリコプターによる輸送を行なっているらしいが、明らかに速度は速いが輸送力が負けている。おまけに鉄道の方が時間はかかるが安い。

一部は真空チューブを走るリニアモーターカーという手もあるが、其方は全ての路線がこの大地の地下に埋まっており、尚且ついきなりエーテルがトンネルに噴出してきて崩落なんて言う事故の可能性から路線自体がほぼ残っていない。


「ヘリコプターなんか金持ちのだけで十分よ」


故に自前でヘリコプターを持っている人間は指を数える程度しか居ないんじゃないか?


出ていく列車を一人見送りながらスフェーンはそんな事を考えていると、ルシエルが言う。


『ヘリコプターで無くとも、ドローンであれば今でも購入が可能です』

「要る?雲の上まで飛べねぇのにか?」


思わずエーテルの漂う空を見上げてしまうと、ルシエルは続けてどこぞの訪問販売のようにドローンの有用性を説く。


『擬似的な空の旅をお楽しみできる他、敵機の偵察・攻撃にも使えます』

「それは自爆ドローンじゃねぇかよ……」


サイボーグ兵御用達の自爆ドローン、対処方法がEMP攻撃や対空射撃しかなく。戦場にばら撒かれると、たまにIFFをミスって味方に間違えて爆撃することはあっても小規模な爆弾が的確に降り注ぐので厄介な代物だ。

ただレーザー・ライフル以上にEMP攻撃に弱いので一回撃たれたらそれでお終い、あとは地雷と化して地面に残る。


「ミサイルより安いけどさ……」


需要が無いと彼女は答える。そもそもドローンを使っての偵察よりも前にルシエルが報告した方が早いと言うのがある。


そして5フィート、1524mmの統一規格の軌間を走る列車が目の前を走って行く。流石に長距離を走る寝台列車に乗った事は無いが、機会があれば乗ってみたいものだ。そう言う列車の飯は美味いと良く耳にしている。

そして目の前を食堂車兼ドーム展望車のビッグ・ドームが通過し、二階建てのC3型客車が通過する。


オーバーホール中の我が車両、マルシュも今日は仕事で居ないのでスフェーンは暇を持て余していた。

大方の費用の試算がこの前届いたが、値段を見て別の意味で驚いてしまった。


「安すぎやしないか?」


工場の値段表に書かれたオーバーホール代よりも安いのだ。しかも複数のエーテル機関を搭載している車両でだ。するとノル達は嬉しげに言った。


「いいんだ、寧ろ次回以降も安くするし。何ならオマケも付けよう」

「新手の詐欺ですか?」


思わずマジレスしてしまうスフェーンだったが、彼らは至って真面目だった。その後ろで何やら自分の列車の機関部を覗き込んでいる様子の整備員達だが、マルシュ曰く彼らは機械バカという事なので気にしない事にした。


「いやいや、貨車一両分くらいオマケする。いや、させて欲しい位だ」


そんな風に、やや興奮気味に言った彼にスフェーンはやや引きながら少し考えさせてくれと言って保留にした。


「余りにも虫が良すぎる話だ」


もはや車両基地とかした旧ロケット発射場を歩きながらスフェーンはぼやく。初めての顧客相手に軽く安めにして次も来てもらおうとする手段は良くある手だが、今回提示された金額とオマケについてははっきり言って向こうが大赤字になるレベルの額だった。


『しかし彼等は本気でした』

「ああ、それが分かるからこそ疑問なんだよ」


元より野生の勘がよく働く人間だった、そこにエーテルと言う要素が加わったスフェーンはより一層人の感情に敏感になっていた。

相手が敵意があるかどうかなど、視覚に入ると何と無く感付けるのだ。便利だが、ロリコンが多くて参っているのも事実。今まで何人締め上げた事か……。


「どうしてあそこまで興奮するかねぇ」

『私も少し分かりかねる所はありますが、先方の話に乗っても構わないのでは無いでしょうか?』


ルシエルはスフェーンにそう提案すると、彼女は少し考えながら歩く。


「取り敢えず飯食いたいから街にでも行こうかな……」


ここから街に戻るにはしばし時間がかかるが、ここからバルーンとあだ名されている二階建てで二両編成の路面電車が出入りしていた。あくまでもこの車両基地と街を結ぶだけの個人営業の短い私鉄であり、中は乗合バスの様相だった。


クリームと緑色で塗装された所々丸っこいバスのような見た目をしたこの列車に乗り込んだスフェーンは抱えている問題を一旦置いて街に向かって美味い飯を食べようと考えていた。


チリンチリンと短く二回鈴の音が鳴るとゆっくりとバルーンは走り出し、修繕の施されたえんじ色の革製クロスシートに座り込んで他の街に繰り出す運び屋らしき人物も乗せて走り出す。






元が広大な敷地を使うロケット発射場と言うこともあって、あの車両基地の近くにはモーテルや飲食店街なんかもあった。

あの大災害を生き残り、残った施設を改修や修復をして営業していた。ただ店は種類が少なく、何日も過ごしていると飽きてしまう。


そこでスフェーンは纏まった金が出来ているので、前行けなかったウリヤナ・モールの店にでも行こうと思ったのだ。

ウリヤナバートルはルマリテと違って本格的に金持ちが集まる都市、故に街に出ても出店は無く。少し前のシフォーフェンとか、そっち系の雰囲気を醸し出していた。


元々砂漠のど真ん中に建造された都市ということもあり、防塵対策のためにスフェーンはガスマスクの購入も考えていた。


「そういやぁ、今のまま毒ガスの中に突っ込んだらどうなるんだろ?」

『現在の状態ですと、未改造の人よりは健康上の被害は低いですが、解毒するために体力を消耗するでしょう。それから体内から毒物の排出をする為に多量の水分が抜けます』

「無事じゃ済まないって事ね、あい分かった」


基本的に企業間の戦争時に化学兵器は色々と健康被害やその後の環境問題も引き起こすので基本的に使われないが、たまにトチ狂った馬鹿が化学兵器入りの発煙弾を使ったりするのでNBCのBとCを守る為にガスマスクやそう言った防護を施された兵器に乗らないといけない。

Nの奴?それよりも安全で強力なE兵器があるんで廃れました。

威力あっても、綺麗な核兵器の純粋水爆使ったって爆発後は放射線被害で爆心地から半径100メートルは近づけんしな。


「さぁ〜て、何食おっかなぁ〜♪」


そしてI'll be backして来たウリヤナ・モール。中流層の憩いの場として有名なその場所は、スフェーンに取ってみれば当たり前に美味い飯が食える最高の空間だ。


金?運び屋は微々たる量しか儲からない?だったらフル稼働で働けばいい。幸いこの体は寝なくても疲れないし、体調も崩さない。

傭兵時代はよく高いが質の良いコカインを少々使ってギンギンに目を覚ましていたが、それすら必要ない。最高の体だ。

ウリヤナを中心に二四時間無休労働をガンガンこなして懐の暖かくなったスフェーンはホクホク顔で店に向かおうとしたが、釘を刺すようにルシエルが言った。


『スフェーン、もし高い飲食店に入るのなら。ここではドレスコードと言う物がございます』

「何……だと?」


今時は中流層すらドレスコードなる小洒落た服を着なきゃならんのか?


「馬鹿げている」

『ここは金融都市ウリヤナ、ここら一帯の中流層は他地域の上の下から中の上ほどの財力があります』

「けっ、外は貧乏人ばかりの癖によぉ」

『それはどこも同じ事です』


極端なまでのピラミッド構造の階級社会、金がなければゴミ同然の社会に文句は無い。

道端で横になって倒れている貧乏人の大人は、大抵はできる努力をしなかった奴らだ。

ガキに関しては例外もあるが、大人は大半がそうだ。

そしてそう言う奴らは苦痛を忘れられる、ひと時の薬物のために上から出たゴミを貪る。うまくできた社会システムだ。




まともに働こうとしない奴らに生きる価値など無い。




基本的にそう言わんばかりの光景だ。


「ちなドレスコードの無い店は?」

『一覧はこちらになります』


丁寧に色分けされたモールの飲食店街、それを見ながらスフェーンは美味そうな店を探す。


「ふむ…今日の気分は中華だな」


そして真面目にセカセカと働く者には恩赦を、運輸ギルドに入れば仕事があり。控除率を含めた金額が提示され、そこから依頼主とのチャットによる値段の引き上げ交渉を行い、利益を得る。


『中華料理店でドレスコードの無い店舗はこちらに絞られます』


基本的に何か荷物を運ぶ手段さえあれば運輸ギルドの証明は通る。まぁ、初めの頃は誰もやらないような仕事……例えばコンテナにありったけスクラップの回収をする手伝いの仕事をする事になる。


「オッケー、行ってみるか」


かく言う自分も運輸ギルドに登録した頃はそう言う仕事もやったが、速攻でその街に転がっていたスクラップをオートマトンを使って回収仕切ってしまったので半分追い出される形で街を後にしていた。まぁ金は貯まったし良いのだが……。


『この店舗は四川料理を主に取り扱っている店舗との事です』

「なるほど、それは辛くて美味いって事だな」


軽口で返すスフェーンは自身の辛さに対する耐性をいくらか上げながら店のある方を歩く。

何せ一つの街がそのままショッピングモールになったような場所だ、飲食店のある店に行くだけでも一苦労する。

その為、モールの中に専用のシャトルが走っている。料金は無料、ありがたや。


『メニューはこちらとなります』

「おっ、美味そうだ」


さて、今日の夕食は汗をかくとしよう。

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