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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
四両

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19/336

#19

自分の列車にオーバーホールを施してもらっている最中のスフェーン。なぜかエーテル機関の修理の筈がオーバーホールする事になってしまったが、そもそも格納庫から引っ張り出してきた車両なのでオーバーホールものだと言うことを失念していた。


「(まぁ、でもこれ以外に車両なかったしなぁ……)」


格納庫に残っていた車両やコンテナを思い返しながらそう溢すと、スフェーンは並んでいる貨車の数々を見ていた。


ロケット発射場を利用した列車の修理工場や市場は街から離れており。遠くに町の灯りと、ウリヤナ・ビルディングの姿が見えていた。


「相変わらずデカいなぁ…あのビルは」


傭兵時代ではここら辺は平穏だったので来たことが無かったが、あのビルの事は噂ではよく聞いていた。


「かつてこの施設は、一日に何本もシャトルを打ち上げていたそうだ」


そんな街を眺めるスフェーンにマルシュが後ろから話しかける。


「それが今や運び屋の拠点だ。鉄道の他に車両搭載型の車もあるんだ」

「あぁ、見かけましたね。そんなのも」


もはや何でも市場じゃねぇかよと突っ込んでしまったあの光景、簡単に装甲列車化させる為のテクニカルとピギーバック輸送用との貨車セットや無限軌道のトラックなど……正直ちょっと欲しいと思ってしまうような車両も売っていた。


『今の資金力での購入はお勧め致しません。まずは車両の強化、並びに武装の強化をお勧めします』

「そうだよ、分かっている…分かっているが……」


欲しいものは欲しい。傭兵時代もよく変な物を買ってはジェロ達に小言を言われた事があったが、アイツ等は逆に子供を拾って来るのだからお互い様だと言っていた。


「欲しいなぁ……」

「何が?」

「ん?車両の事」


そこで聞かれた彼女は売られていた車両が欲しいと軽く口にするとマルシュは驚いた様子だった。


「マジで?車買うなんてよっぽど集団じゃないと無いぞ」

「まぁ、分かってはいますとも」


スフェーンは納得しつつも、諦めきれない様子を見せるとマルシュは言う。


「気持ちは分からんでもないが……ウチらの儲けでどのくらいかかるかねぇ」


個人の運び屋の儲けで…それもソロで個人車を持つのは非常に大変だ。


個人の運び屋と言っても数人で組んで仕事をするチームでの運び屋もいる。そう言ったチームの運び屋は人数が多い分、金も溜まりやすい。ただしうまい帳簿係が居ればと言う前提が付くが……。


「今のオーバーホールと改造でどれだけ資金が溶けるかも分からないのが何とも……」

「払えなかったらローンだな」

「あぁ〜、最悪だぁ〜」


ローンを組む事になれば、返済の為に東奔西走する事が確実になる。基本的にローンは即座に支払いを終わらせないと利子がとんでも無い事になる。


「安心しな、ノルはしっかり払ってくれれば利子を取らない」

「そうですか?」

「ああ、逃げる奴は運び屋のコミュニティに実名晒されるか、その前にあいつが一括で払わせる」


鼻が利くのさと言い、マルシュはスフェーンを見ると言った。


「それにアンタ、金は結構払えるタイプだ。あとから値下げ交渉するかもしれないが、中々太っ腹じゃないか」

「ほら、アンカリング効果って奴です」

「あぁ、最初にべらぼうな値段にしてだんだん値下げしていくやつね」


交渉術でよくやる奴だと言いながらマルシュは続けてこう言った。


「でもあいつ等はいつでも適正価格。機械バカが集まったような集団だから、値下げ交渉は苦労するぜ」

「私としては、公正な価格で取引している方が驚きなんですが」


少なくとも傭兵相手のオートマトンではそんな事は無かったぞと思っていると、マルシュは苦笑する。


「いつも思うが、お前さんは列車の修理工場をオートマトンのそれと勘違いしていないか?」


一瞬ギクッとなるが、彼女はそれに気づいていない様子で横に座るとスフェーンに缶コーラを出しながら話す。


「確かに傭兵相手のオートマトンの修理工場は儲けしか考えないボンクラ共しかいないかもだがな。運び屋の修理は基本、修理の額が大きくなる上に、ネットワークそのものが傭兵と比べるとどうしても小さい」


需要はあるが、多くは企業に就職してしまう運送業者。一度企業に就職すれば、待っているのは中々抜け出せない企業に縛られた日々だが、安定した生活を得られる。

そして荒野の大地に野盗が闊歩しているこの時代で、人々が求めるのは安定した生活だ。大半の人間は企業や軍警が作り出す規則の枠組みの中で生きる。


そんな枠組みを外れて生きるのは傭兵や運び屋などと言った危険が横で寝ているような奴らだ。

傭兵で働いた奴の中でも、死と隣り合わせの生活に疲れて足を洗う者や、薬漬けになったり、自ら命を絶って楽になった奴もいた。


「そんな小規模なネットワークで逃げようものなら浮浪者に落魄れるしかないさ」


そしてこのネットワークには当然企業の目と耳もあるのでそんな奴は企業でも匿わない。


「中々シビアな業界ですね」


思わずそんな言葉が漏れると、マルシュは軽く笑う。


「はっ、私としてはそんなコミュニティーに入って居ないのに名を挙げたお前さんに驚きだよ」

「私は……偶々ですよ」


そう、自分が今ここでこうしているのは奇跡の連続が重なったからだ。

奇跡が上手い事に噛み合って運び屋のコミュニティーがあった事なんかも知る事ができた。


ぶっちゃけ、傭兵なんかやるよりもずっとこっちの方が性に合ってた。


「偶々オートマトンに触れる機会があって、操縦が上手くて列車を守れる力があって。ギルド証明書が通っただけですよ」

「はははっ、十分お前さんは素質の塊さ」


そう言うと、彼女は瓶ビールを飲みながら街を見る。


「その年ですでに指名依頼を受けた逸材だ。……今まで、野盗の襲撃がなかった訳じゃ無いだろう?」

「……ええ、」


今まで襲われた野盗は数知れず、撃破して追加報酬を貰った事もよくあった。


「何人くらい?」

「さぁ?数えても居ません」


もはや数を数えておらず、ひたすらに荷物を狙う野盗を処分してきたのを不意に思い返す。


「それほど人殺しを嫌悪して居ないようだな」

「そう見えますか?」

「あぁ……だがまぁ、私だって荷物を狙われるなら自前の武器で敵を殺す位する」


基本的に企業の手足となって働く運び屋、あまり同業者とつるむ事は無かったスフェーンだが。彼女はオートマトンを駆使して一人でこの地まで訪れていた。


「野盗から荷物を守るためなら何だってする。それが運び屋だ」

「儲けは?」

「ぶっちゃけ二の次な事が多い。よほど報酬が高くなけりゃあ、安全な線路を通る…だろ?」

「ええ、襲われないルートは時間制限でギリギリで無い限りは」


軍警が警備しているような幹線は基本的に十本の線路がある五複線が最低だ。そんなパトロールされた鉄路を毎日多くの列車が走る。

そして支線や単線区間と言った古かったり、余り使われない鉄路では軍警察の監視がほぼ無いので、そこを通る列車は多くが野盗の襲撃に出くわす。


そして出会した野盗への対策は速度を上げて逃げるか投降して金品を差し出すかのどちらかだ。口の立つ奴はそんな野盗に話を通して安全の通過しているが、損害はどうしたって出るので儲けは減ってしまう。


「んで、暫くは動けないんだろう?どうするんだ?」

「近くにモーテルがあるので、そこで寝泊まりしますよ」


オーバーホールはどれだけ頑張っても数日は掛かる。先ほど工場に戻った時、ノルから『大体七日掛かる』と言われてしまい。それまではこの修理工場で泊まる必要があった。


「はははっ、それまでは運び屋もお休みだな」


コンテナの改造も依頼した今、スフェーンは街までの移動手段も無いのでここで待機する事になる。


「荷物も列車から持ってきて居ないだろう?」

「ええ、全部運転室に放り込んでいますよ」


基本的に列車のロックシステムは所有者以外が無闇に車内に立ち入る事はできない。そして列車の機関部は元々所有者以外でも点検できるようにブロック構造となっており、列車がロックされていても簡単に外す事ができる。

そして今のスフェーンの列車は全般検査の為に仮の台車を履いて自走不可、中に乗せたままの乾物は時々確認して腐って居ないかどうかを見ているが。ぶっちゃけこんな湿度の乾き切った砂漠の大地でカビなどの心配はご無用とでも言えるような状態だった。


「まぁ、今から美味しい夕食でも探しに行きますよ」

「だったら美味い店、紹介してやるよ」


空になった缶コーラをゴミ箱に放り投げながら立ち上がると、マルシュはモーテルの近くにあるダイナーを紹介した。






そして言われたダイナーでスフェーンが注文したのは簡単にステーキ。量は1ポンド、約454gの肉だ。少女の体格でこの量を注文した事に他の人間や店主はペーパーバックの準備をしていた。


都市郊外とは言えここはウリヤナバートル、都市部の肉と言えば培養肉。焼いても煮ても、何なら生でも同じ味がする培養肉。本物を知ったら口に入れたく無い代物だ。

そして培養肉と本物の牛肉の違いは焼き目でよく分かる。


「おぉ……」


そしてスフェーンは目の前の料理が本物の牛肉を使用したステーキであると認識し、目を軽く輝かせるとフォークとナイフを使って小さく切り分けてまずは何も付けずに一口。


「美味い……!!」


そして下味でつけられた薄い塩と胡椒に、噛んで溢れる肉汁の純粋な味を堪能。そしてほのかに香る、炭火特有の香ばしい風味も感じる。

しっかし噛んで飲み込んだ後に一旦ぬるま湯で丁寧に口の中を整え、二口目は置かれたステーキソースを少し皿に出してそこに付けて一口。


「ん〜!!」


ソースの甘味がステーキの肉質と合わさり、程よく口の中を刺激する。

そしてこれもまたぬるま湯で口の中を一旦流して、次の味の邪魔にならないようにする。


三口目は付け合わせの塩漬けされた生胡椒を乗せて一口。

口の中で黒い粒が潰れる食感と共に軽く香る胡椒の香り。普段の乾燥した胡椒からは想像もつかない程に刺激的な感覚は無く、むしろ胡椒と塩味が肉の味をよく引き立てていた。


「御馳走様でした」


そしてスフェーンは一番気に入った生胡椒を添えて食べる食べ方を堪能して1ポンドの牛肉をペロリといってしまうと代金を支払ってダイナーを後にした。


そんな少女の食いっぷりに周りにいた人間は驚くと同時に、その姿から一時的にその店のステーキの売り上げが爆増したと言う。

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― 新着の感想 ―
これ無償で読んで良いのかなぁ、、、昔ロケット打ち上げてたらしいの下りとか、凄い裏設定を感じるんですが。 めちゃくちゃ面白いです。
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