#15
「スフェーン、来ていたのか?」
「ええ、食料調達のためにね」
ドライフルーツの露天で砂漠のど真ん中で知り合ったラーマヤと再会をしていた。
「じゃあ、ゆっくり見ていくといいよ」
「ええ、あのレーズン。おいしかったよ」
「それはよかった」
そう話していると、店の裏から一人の男が出てきてスフェーンとラーマヤを見た。
「ラーマヤ、手伝って……お?お客かい?」
「ああ……ほら、この前砂漠で出会った少女だ」
ラーマヤがそう言うと、店の店主は思い出したようでハッとした表情を見せた。
「……ああ、あの子か?」
「そう、偶々ここに買いに来たそうだ」
「どうも、ここで購入したレーズンが美味しかったのでまた買いに来ました」
スフェーンはそう答えると、店主は陽気な笑顔でスフェーンに行った。
「はははっ、有難いね。んじゃ、サービスしてあげるよ」
そう言うと、店主やラーマヤは置いてあるドライフルーツを紹介してくれた。砂漠で見たときよりもより多くの種類が置かれていた。
「ナッツも置いてあるのね」
「ああ、これは別の村から運ばれてきたものだが。しっかり乾燥されているから保存に向いている」
そう言いピスタチオを軽く触るとカラカラと乾いた音が響いていた。
「じゃあこれも一つ」
「毎度」
そこでピスタチオやらを袋に入れて購入する。全てに割引されると言う事で色々と乾物を買う。ちなみに割引してくれた理由は、あの時に二倍の値段で買ってくれたからだそうだ。
「おい、ラーマヤ」
「はい?」
そして買い物をすると、店主がラーマヤに言った。
「そのまま、そのお嬢さんを駅まで運んでやれ」
「え?どうやって?」
「お前のラクダがあるだろう?荷車つけて運んでやれ」
そう言いながら上機嫌な店主、そりゃそうだ。調子に乗って色々と買ってたらすごい荷物になってしまっているし、何なら事前に買っている荷物もあったのでこれを一度に運ぶのは不可能だった。
「わかりました」
「お嬢ちゃん、他に買うものはあるかい?」
「えっと……あとは水ですね」
「よし、水も買ったらこいつに運んでもらえ」
そう言いながらラーマヤを見ると、彼は自分のラクダに荷車を繋げていた。
「大丈夫なんですか?」
「ああ、力仕事は男がやるもんよ。それにお嬢ちゃんは上客だ。VIP待遇で運んでやるさ」
おかげで運輸ギルドでまたいっぱい働かないといけないが、ドライフルーツを試食させてもらって美味いと思ったものはとりあえず買っていたのでかなりの荷物が溜まっていた。私には時間があるので満足だ。
「じゃあ、お願いしますね」
「……ああ」
ラーマヤは準備を終えて頷くと、スフェーンの後を追って水を買いに行った。
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その後、市場で次の街まで飲み水に困らないほどの量を買わせてもらい、ラーマヤに運んで貰った。
「なんとなくこう言う所の水って高いイメージがあったけど……」
「ここは地下水が絶えず汲み出るから、水は比較的安価なのさ」
ラクダの荷車に最後の水を乗せ終えると、その上に購入した乾物や干し肉を置くとその上から盗難対策で金属の薄い箱を乗せる。木は今時貴重なので、こう言う金属の箱が荷車に付いている。
「よし、行こうか」
「ええ」
すると、ラーマヤはスフェーンを脇下から持ち上げるとラクダに乗せていた鞍の上に乗せた。
「わ、わわっ!!」
「大丈夫だ、この子はおとなしいから」
「おぉ……!!」
初めて乗ったラクダの背中、思ったよりも高い視線に驚いているとラーマヤは言った。
「しっかり手綱は掴んで。落ちないように注意して」
「お、おう…」
もう大分慣れてきたが。少女として、女として見られる事には今も若干の抵抗感があった。
故に茶色いこのローブを常に羽織っているのだが、この身長や声色からどうしても少女として周囲の人間は接してきている。
「お、おぉ〜」
そしてゆっくりと歩き始めるラクダを前にスフェーンはその不思議な感覚に面白くなる。
『ラクダに乗るのは初めてですが、まさかここまでおまけしてくれるとは予想外でした』
「ああ、でもこう言う体験は面白いよ」
スフェーンはそう答えると、ラクダを引いていたラーマヤが聞いてきた。
「何か言ったかい?」
「ん?ああ、何でもない」
基本的にルシエルとの会話は周りの人間からは独り言にしか聞こえず、大半は無視されることが多いが。周りが騒がしい今、ラーマヤには話しかけているように聞こえたのかも知れない。
「そうか……」
「駅まで、どのくらいで着く?」
「そうだな…この調子なら二十分ぐらいで着く」
「ありがとう」
そしてスフェーンはラクダのライド記念を楽しんでいるとあっという間に駅に着いてしまった。
時刻は夕方、もうする日の入りが始まる頃だった。
「君の列車は……」
「待避線にいる。ここまでありがとう」
そう言い荷物を運んで別れようとしたが、ラーマヤはやや驚いた様子だった。
「いやいや、列車まで運ぶよ。この量じゃあ大変だろう?」
そう言われ改めて荷物を確認するとまあまあな量で少なくともこれを一人で運ぶのは時間がかかると容易に想像できた。
「じゃあお願いしても?」
「ああ、言われなくとも」
そう言うとラーマヤは両手に購入した乾物や水を抱えて何往復か列車の前まで運び。中にはスフェーンが待機しており、荷物を中に入れていた。
「よし、これで最後だ」
「ありがとう」
最後に砂糖を入れた袋を運ぶとスフェーンの車内には多くの買い漁った乾物や水が並んでいた。
「しかし随分買ったな」
「しばらく食う物に困らないようにね」
そう言うと、スフェーンはラーマヤに感謝をした。
「ありがとね」
「……ああ」
ラーマヤは少し間を置いて答えると、スフェーンは時間を見ながらラーマヤに言った。
「やば、そろそろ行かないと」
そしてラーマヤに言って列車から離れさせると、スフェーンは運転席に座ってエーテル機関を始動させると、鉄道管理局に運行通知を行って発車指令を受ける。
「じゃあね、色々ありがと〜」
すぐに発車許可が出たのでスフェーンは駅舎で立つラーマヤを見ながら軽く手を振ると汽笛を短く鳴らして走り出していく。
そしてラーマヤは走り去っていくスフェーンの列車を見送ると、そのまま見えなくなるまで駅舎に立ち尽くすとマーケットに戻った。
「親父」
「おお、戻ったか」
片付け始めているマーケットでラーマヤは売れ残ったドライフルーツを袋に戻していると、店主の父親から一言。
「その様子じゃあ、ダメだったようだな」
「……」
「まぁ、仕方ないさ。……あの子は今の生活に満足していた。脈無しだったからなぁ」
「……」
静かに片付けを黙々と続けているラーマヤに彼の父は言う。
「ラーマヤ、今日は好きなだけ飲め」
「……はい」
ラーマヤは悲しく答えると、彼の父親は今日の売り上げを確認していた。
幸いにも、彼の初恋の相手が大量に金を落としていったので今晩の酒代も賄えそうだ。
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そんな一人の男を失恋させた罪深き少女はそんな事になって居るとは露も知らずに列車で早速購入した干し肉と水、ブイヨンキューブとローリエを突っ込んでいた。
干し肉は鳥・豚・牛と基本の三種類全部を購入し、全て塩漬けされているので初めは肉斬り包丁でも大変なくらいカッチカチだったが、水でじっくり煮込むことで柔らかくなっていた。
「ズズッ」
そして試しにガスを止めて出来立ての簡易スープを頂くと滲み出た肉の旨みと塩味にブイヨンの味とローリエの風味が漂う。
「おお、美味い。案外やってみる物だな」
『簡単ですが、スフェーンの初めての料理ですね』
「何、初めはこんなもんだろうよ」
人生初レベルで久しい自分の料理、牛肉のスープを鍋から直接食べるとスフェーンは目を輝かせた。
「かぁ〜、美味い。苦労して集めた材料で食う飯は尚更だな!」
『これは、本格的に簡易キッチンを作った方が良さそうですね』
「ああ、こんなに美味いなら武装は後でいいな」
あっさりと自分の列車の武装強化を後回しにしていたが、普通は真っ先に列車の防衛装備を増やす。
これはスフェーンの個人的戦闘力の高さあっての判断である。
『今回の散財でかなりスフェーンの財産は少ないです。効率の良い依頼をウリヤナバートルにて確認いたしましょうか?』
「ああ、頼んだ」
効率的な金儲けの為にルシエルは早速目的地のウリヤナバートルの運輸ギルドにある依頼を探す。
実を言うと、ルシエルはスフェーンにラーマヤが好意を抱いているのを知っていたが。スフェーンにその事を伝えることはなかった。
彼女が知ったところで興味無しになる上に、ラーマヤに嫌悪してしまうだろう。
余計な感情と問題を起こさないためにルシエルはスフェーンにあえてそのことは言わなかった。
今の彼女は傭兵の時の男としての記憶を持ちつつも、見た目が大きく変化した事による周囲の当たり方の変化から彼女でも感じていないくらいゆっくりと今の体に順応しつつある。
ルシエルは我が子を見るような雰囲気でスフェーンを見ていると、彼女は自前のスープに満足していると全てを簡単に食べ終えた後に満足げにこぼした。
「ふぅ、食った食った」
『スフェーン、次の街に到着する前に購入した品物の整理を行いましょう』
「おう、そうだな」
基本的に列車で生まれたゴミはリサイクルセンターに持っていって換金する事で処理をしてもらえる。ゴミを持っていって換金できるのはリサイクルで資源活用されるからだ。ゆえに町中のゴミをかき集めてリサイクルセンターに持っていく、所謂くず拾いが街中で出るゴミを漁っていた。
ゆえに一度全てを失ったスフェーンはこうなってもおかしくは無かったが、今は運輸ギルドの一員として活動をしていた。
「さてと、倉庫に買った物を入れていくとして……」
『すでにある缶詰は非常食として倉庫の最上部にしまう事をお勧めします』
ルシエルと相談をしながら仕入れた食料品を片付けるスフェーン。
元々狭い車内の倉庫、一人であれば十分な大きさのそこに細かく何段にも分けられた状態で購入した乾物や水が置かれる。
「うし、こんなもんだろう」
『お疲れ様です。スフェーン』
そして少し経った頃、購入した荷物で雑多となっていた倉庫は綺麗に積まれた食料で詰まっていた。これにはスフェーンもルシエルも満足していた。




